連帯団体戦【蔘】
「おれとかがりんが前衛とかどうよ」
「黙れ、俺一人で全員やる引っ込んでろ」
もう何度も目にした光景
岩吉が提案し、それを羽真が一蹴する。
この繰り返し。
「じゃあおれ達は何しとけばいーんだよー」
「知らん自分で考えろ」
「まあまあ二人とも」
そう岩吉と羽真を宥めているのが豊城紅音という奴で、大変そうだ。
俺はというと……席に座ってその光景を眺めている。
「まぁいいんじゃないか? そいつが単独で行動したいというのならさせておけば、私も単独で動く」
そこで教室の入り口の方からそんな声が聞こえる。
そちらに視線を飛ばすとそこには、美少年がいた。いや美少女とも見てとれる。身長は167くらいで髪は肩につく程の長さと綺麗な銀髪。可愛い男の子にも見えるし女にも見える。だが制服は女ものであるから女性であることがわかる。
「だ、誰だ?」
「まぁ状況的にもこのチームの惡朽吊乃亜だろ」
「そいつが全員やるっていうんだ。任せておけばいいじゃないか。楽できる」
それだけ言って教室から出ていった。先に向かったんだろうか
「ま、そん時になったら対処すればいいしな、俺も行くか」
未だ言い合っているあそこの二人は置いといて俺が豊城と一緒に教室をでることにする。
教室の中から「だーかーらー!」と言う声が響いているが、遅刻しないことを願っていよう。
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「ではこれより団体戦を開始する。各自好きな位置につくといい5分後に鐘が鳴る、それが始まりの合図だ」
その一言で広大な運動場に各々が散らばる。
豊城と岩吉、そして俺は固まって動く方針をとり、羽真と乃亜に関しては単独での行動となった。
これは乱闘であるからこそどこでどのチームに出くわすかわからない。油断は禁物だ。
『カーン』
始まりの合図
俺たちは当初の作戦通り草むらに身を落とし隠れることにする。この運動場は自然が豊だ。だからこそ草むらなどで隠れることもできる。見つかるまではここにいよう。
そう考えていると真横でいきなりドーン! という爆発音が響く。
「なんだなんだ!?」
「えぇぇもう見つかっちゃったの!?」
「そうみたいだな。この感じ他のチームに捜索ができるやつがいるか」
「なんでそんな落ちついてるのぉ!?」
そんな慌てた声音で豊城が騒いでいる。
「場所を移すか、それとも反撃に出るか。どうする?」
「でもここで反撃したら他のチームが寄って来るんじゃない?」
「逃げるか」
そこで俺たちは方針を固め、移動を始めた。
その間もずっと爆撃音がしているが俺たちを狙ったものではなかったので助かった。
「ふぅ〜助かったぁ」
そんな安堵の声を岩吉が漏らす。
俺たちは無事に人気がない場所に移動することができた。
俺たちがいる場所は小さい洞窟のようなところで、運動場って感じじゃないな。
「少しここで休憩しよう」
「さ〜んせ〜」
「それにしても運動場なのにこんな洞窟あるんだな〜」
「あそれ思ったー」
二人ともそれを疑問に思っているようだ。
「確かに隠れられるような場所が多いのは事実、だが事前に配布された地図にこんな場所があったか……?」
「あったんじゃねー?」
そんな話で5分ほどが経った頃、外から何かが入ってくるのがわかった。
岩吉と豊城はそれに気づいている様子はない…….そこで俺は立ち上がり
「ちょっと外の様子を見てくる。問題なさそうなら俺たちも戦いに行こう」
「わかった。なんかあったら大声で叫べよ! すぐいくからな」
「気をつけてね」
二人の声を背に外へ向かって歩き出す。
さて、これは誰の仕業か。
そんなことを考えていると、目の前に蝙蝠がいることに気づいた。
「…………」