学生寮と友達
試合が終わったことを知らせるアナウンスが響く。
目の前の男は気絶していて……第一回戦の勝者は俺となった。
ふーっと息を吐き、控え室に戻る。
その足どりは重たく見えたかもしれない。
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私は、目を覚ましたら控え室で横になっていた。
確か黒髪の男と戦っていたはずなのだが……途中からの記憶がない。
対戦表を確認してみると私は一試合目で敗退していて、何がなんだかさっぱりだ。
敗退してしまったから優勝者が出るまでは試合はない、だからなのか少し気持ちが落ち着いている。
観戦席まで来てみると既に試合は始まっていて、場内には一試合目で私と当たった男が戦っていた。でも、数分もしないうちに試合が終わってしまう。早かった……目で追うのがやっとで、私も同じやられ方をしたのだと悟った。
強い……そう思わざるを得なかった。
私は、彼のような実力の持ち主が多くいるこの学園に通うのだと改めて実感する。
「まずは入寮試験で勝たないとね」
パンパンと頬を叩いて気合を入れ直し、試合を観戦をすることにした。
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ふぅ、そんな息が漏れる。俺は今、控え室で少しだけ身体を休めていた。これで優勝はしたからあとは楽に過ごせるのだが……今は自身の身体を気にしてやるべきか。
俺はここまで能力を乱用してしまっていた反動がきている状態だ、それならと俺は仮眠を取ることにする。仮眠といっても数十分ほどだが……だいぶ楽になったな。
それから試合を見ていたが、一回戦で当たったあの女生徒が優勝を勝ち取っていたりした。一回戦で俺に合わなかったら決勝戦にまで登って来ていたかもしれない。
それから入寮試験は二日間をかけて行われた。
優勝者の中には怜や決勝戦であった男がいた。
無事入寮試験も終わりを迎え、俺は荷物などを早々に寮に運び込み、今はうちの部屋で怜と雑談をしている。
「いやー良いところだな」
「そうだね〜。ところで、未来は学園は楽しみ?」
「まぁそうだな。イベントとかもあるだろうし楽しみだな」
「未来はやっぱりSランクを目指しているの?」
ランク……それはこの学園の特徴でもある制度。
その者の総合力を示すものであり、下から順にE.D.C.B.A.S.SSとなっている。
このランクは冒険者になる際にも用いられるが、SSランクというのはあまりいない。
今の俺のランクはD、Eじゃないのは入寮試験で勝っているからだろう。怜も同じDランクだ。
「ランクか……ランクが高いとそれに見合った仕事を押し付けられるらしいからなー。まぁぼちぼちだな」
「そっかー」
そんな話に花を咲かせていると、いつしか時間がかなり経っていて夕暮れ時となっていた。
それじゃあと怜は自分の部屋に戻っていく。でもまぁ隣同士なんだけどな。
そんなこんなで俺は夕飯の支度を済ませ、風呂に浸かっていた。
「はぁ〜」
そんなため息を吐き、今日のことを思い返す。
少しやりすぎたかなとは思うが、まぁ大丈夫だろう。こんなことで目をつけられることもないだろうしな。
そうして風呂から上がり、眠りにつくことにする。明日からのことを考えながら……。
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翌日、学園の準備をしているとインターホンが鳴る。
ドアを開けるとそこには怜がいた。
「おはよう未来」
そう優しい笑顔を向けてくる。
良い朝だな。
そこでおはようと挨拶を返し一緒に学園へと歩み始める。