入寮試験.2
俺は今飛び交う喧騒の中、観客席で試合を見ている。
見ているのだが……謎に人が集まっているせいで、何かある毎にものすごい大歓声が上がっている。
そのおかげか熱気もすごい。
ちなみに今は入寮試験の5試合目が始まっているところだ。
「すごい歓声だ。……それに見られながら戦うってのはちょっと恥ずかしいもんなんだね」
ちなみにこいつは神室怜。既に一回戦を突破している。
試合を見ていたのだが能力を使った感じはなかった。未知数だな。
「対戦相手は強かったか?」
興味本位でそんなことを尋ねてみる。
「うん、強かったよ。負けてもおかしくない相手だった。君も頑張ってね!って、あれ……?君の……」
そんな話をしているとまたもや大歓声が上がる。
それと同時に俺は立ち上がり、控え室に足を運ぶことにした。
怜が何か考え込むような仕草をしていたが気にしない。
1試合が終わるごとに毎度10分の休憩時間が設けられている。
今のうちに装備の見直しなどを行うのだろうが……俺は特に持ち込むものはないから5分間の仮眠をとることにした。
そんなことをしてる間に時間は過ぎていき、俺の出番が回ってくる。
どんな相手が来るのか。慢心はしない。心構えができたことを自覚し、歩き出す。
そして両者が姿を現した瞬間、歓声が上がる。
相手を見た瞬間少しだけ驚く。目の前にいたその女はあの時商店街にいた奴だった。
定位置につき、意識を相手に向け始まりの合図を待つ。
『ーー』
始まりの合図がを鳴る。それと同時に俺は走り出す。
相手が何をするのかわからない以上下手に手を出すことはしない。
相手の女を視界に捕らえ、ものすごいスピードで走り撹乱を狙う。
__刹那……相手の女が消えた。正確に言えば俺の背後に移動していた。
瞬間移動か……?
そんな思考を回しているうちに相手の女は腰に携えていた木刀を抜き、俺を目掛けて振るう。
俺はその攻撃を避け、後退する。女は再び構えを始める……が。
その次の瞬間……女は倒れていた。
誰もが今、何が起こったのかを認識できていないだろう。
一瞬だけ静寂が訪れるが、すぐに歓声へと変わる。
そうして俺は一試合目を終えた。
_________
俺は初戦を終えて、再び観客席に戻ると怜が手を振っているのが見えたので手を振り返し近づく。
「おめでとう。すごかったね!」
そんな言葉を受け取る。
「そうだ、忘れてた。君の名前をまだ聞いてなかったんだ」
そう言いながら俺を見つめてくる。確かに入場の時も番号で呼ばれてたからな、知らなくて当然か。
「そうだったな。俺の名前は篝未来だ。よろしくな」
そんな簡単な挨拶をする。
「篝くんか、うん。よろしくね!」
そんな会話をし、試合を見物する。
それから、俺は淡々と勝ち上がり、いつしか決勝戦まで来ていた。
怜は途中で敗退していて、そこでもやはり能力は使っていない様子だった。
決勝戦でも俺は相手の攻撃を避け認識される前に倒す作戦で行くことにする。
ここまでずっと速攻で勝ち上がってきたからな、そろそろ対策もされそうだが……。
『ーー』
もう何度も耳にしてきた始まりの合図が鳴り響く。
その音と同時に俺は走り出す。相手は体格の良い男。
俺は近づき軽い一撃を放つ。が、男はそれを腕で止め、俺の身体を投げ飛ばす。
軽い攻撃は反撃されてしまう。ならば……
再び俺は走り出し、腕に意識を集中させ男に連撃を繰り出す。目で追える速さではないのだが、男はそれに反応し対応してくる。俺は一度後退し、
「身体強化でもしてんのか」
そう言葉を吐く。
仮に身体強化なら、その弱点をつけばいい。
そしてまた、走り出す。さっきよりも速く……誰の目にも止まらぬ速さで。
その速さに男は「マジかよ……」と、そんな驚いたような声を漏らし、腕を交差させ防御の構えをとる。
そして……そして……速く、重たい一撃が目の前にいる男を襲う。
ご清覧ありがとうございます。
やはり牛丼は美味しい! いきなりすいません……ですが言わせてください。
疲れた時に食べる牛丼はめっちゃ美味しい!!
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