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月夜譚 【No.201~No.300】

戦争の先に 【月夜譚No.219】

作者: 夏月七葉

 一斉に舞う蝶に溺れるようだった。それはまるで夢の中のようで、けれど脚の痛みが否応なくこれが現実だと教えている。

 黄色に白、仄かなピンクに鮮やかな青。色とりどりの蝶達が一心不乱に空を目指す。

 やがて全ての蝶が飛び立つと、後には彼自身と、ただただ遠くまで広がる平原が残された。所々に咲く赤い花が、緑の中にぽつりぽつりと見える。

 蝶の残像を目の端に覚えながら、彼は痛みに耐え切れずにその場に座り込んだ。思ったほど出血はしていないようだが、傷は深そうだ。

 どうして自分がこんなところに佇んでいるのか、正直よく解っていない。先ほどまでは確かに戦場にいて、必死に仲間を守りながら戦っていた。けれどこちらの分が悪くなって、仲間の内の一人が彼だけでもと、術を使ったようなのだ。

 術に関して、彼はよく知らない。それは一部の人間が持つ力で、人によっては忌み嫌う者もいた。

 彼自身は羨ましいと思いこそすれ、疎むことはなかった。けれど、実際に術を目の当たりにすると不思議な感覚がするものだ。

 仲間達は無事だろうか。自分はここでこんなことをしていて良いのだろうか。

 色々な思考が脳を過るが、今はここにいる以外にできることがない。

 彼は願うしかなかった。仲間の無事と戦の先にある平和を――。

 やがて元いた場所に戻った彼は、少しばかり欠けてしまった仲間達と泣き笑いを浮かべた。

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