75話 告白の返事
それは返事かと問われた。なんのことか考えを巡らせ、彼が私を愛していると告白した返事だと気づく。
「あ、ああ!」
好きだなんて言うんじゃなかった! 返事のことを絡めたつもりはないのに!
再び頬に熱が灯り、握る手を離そうとしたら逆に絡め取られてぐぐいと距離を詰めてきた。ここで詰める?!
「メーラ」
「は、離れ、」
「愛している」
「わああああ」
特別好きだ、とも言われてしまった。明らかに返事を今求められていると分かる。
「ううううう」
「聞かせてくれないだろうか」
「うう……」
「……」
その目は反則だ。
というかこの人の瞳にうつる感情の色合いに気づけるようになった時点でもうアウトな気がする。
せめて一日あれば心の準備とか場所や時間やら雰囲気やらを整えた上で伝えたのに、どうにも私の気持ちとは真逆に成し得ようとする流れに彼の中でなってしまったらしい。
覚悟を決めろということかあ。何度も逃げられないところを逃げてきたし、レイオンはずっと待っててくれた。私の気持ちもとっくに決まっている。ならやるしかない。
「私も」
「……」
「私、も、」
「……」
「あ、愛、してる」
よし、言った、言ったぞ! もういいよね、さあ終わろう。一人にしてもらおう。まずは離れてもらって、って、まったく動く気配がなかった。
「レイオン」
「……ああ」
「離れて」
「抱き締めても?」
「ちょ、話聞いてた?」
さらにぐぐいと寄ってくる。離れて一人にしてもらうのが目標なんですが!
レイオンたら全く逆をやってくる。
「メーラ」
「ち、近いってば」
話逸らさないと。なにか、こう、時間とれて誤魔化せるもの。
「あ」
「どうした」
「アパゴギさんが教えてくれたんだけど」
話題振りが功を奏したのか、手がするりと離れる。
けど次の瞬間、眉間に皺を寄せて心底嫌悪感を出してきた。
父のようだと思っていた相手じゃなかったの? もっと複雑な表情をすると思っていたのに。
「二人きりの時に私以外の男の名を出さないでほしい」
「あ、そっち」
別にアパゴギだからじゃなかった。
再度見ると今度こそ予想通りの複雑な表情になる。レイオンの両親と私に危害を加えたけど、父のように慕っていた人物なのだから仕方ないことだ。
「レイオンだって教えてくれたの」
「?」
「最初に王城で攫われそうになった時に守ってくれた人がレイオンだって」
「それ、は」
最後まで言うつもりはなかったのだろう。視線を逸らされた。瞳に迷いが見られる。
「話す気なかったの?」
「……ああ」
君を怖がらせると思って。
化け物の私が助けたとなってはより怖がらせると思ったからだとレイオンが自信なさそうに囁いた。
「レイオンは化け物じゃないって何度も言ってる」
「分かっている。メーラがそういう目で見ない事も、そう考えない事も」
それでも踏み出せないのは仕方のないことだとは思う。彼が多くの人からそう見られ言われてきた年月が私の言葉一つで一気に変わるわけでもない。食事と一緒で毎日少しずつやっていかないとね。
実際領地の外はレイオンに冷たい。王城での事件の時、周囲はレイオンに罪を着せて化け物だと罵っていた。
ええい、今だってレイオンのことを悪く言ってた貴族たちのことは許してないんだから。
私が城の貴族たち許すまじと内心燃え上がっているところに、レイオンが遠慮がちに話し始めた。
「アパゴギは……言葉遣いも素行も悪かったし、騎士らしくない人物だった」
「うん」
「だが周囲を良く見て気を配れるし、面倒見の良い人間だった」
そう言うのだから、レイオンの言う父のように慕っていた下りは真実なのだろう。
一度離れた手を再び私から握り直した。
「……アパゴギは、見つからなかった」
「そっか」
あの激しい流れでは探すこと自体が困難だろう。
途中どこかで水から逃れても、追いかけることは難しい。
「アパゴギは分かっていて、あの経路を選んだ」
「え?」
まさか私が考えていた敢えて断罪されるルート作りをしていたってこと? 捕まる為にあの道を選んだってこと?
今日のわんこ「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア!!!」
浮かれるから話題逸らしに引っかかるのさと思いつつ(ちなみに週末までまだ続きます)。やりきった。




