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66話 レイオン、追い付く

「陽動に使ったってことですか」

「ああ。王都の騎士に追い回されるのは骨が折れるし、国境を越えるのも厳しくなるからな」


 挙句レイオンが満月明けだったのも狙い目だったと言う。

 私を容易に手に入れる確率が上がり、王城にしろ国境線にしろ彼が一人欠けるだけで戦力が極端に落ちるからだ。


「坊っちゃんの実力は相当だからな。抱えてる分隊全部を吹っ掛けても坊っちゃんが勝つだろうよ」


 レイオンの騎士としての実力は相当なもののよう。確かに魔法も使えて剣の腕もたつ。聖女様の本で言うならチートに近い。


「王城で騒ぎを起こして兵力を留まらせ、坊っちゃんがいない隙を狙って国境線を襲撃すれば、俺たちの国境越えが容易になる。それだけだよ」


 領地内の不穏な動きは国境武力の騎士たちが担っている。要塞を襲撃し、王城と同じく兵力をそこに留まらせることによって、監視が緩んだところから国境を越える。そして当初の目的である人身売買に至れば万事解決ということか。


「屋敷を襲撃しようとは思わなかったんですね」

「あんたは知らねえだろうが、あの屋敷は国境武力と同等の精鋭が揃ってるぜ? 挑むだけ無駄だろうな」


 ヴォイソスもヴォイフィアも戦い慣れていた。予想通り、あの屋敷の家令たちは騎士に相当する実力を持った人たちなのだろう。


「そもそもなんですけど」

「あ?」

「なんで聖女候補を売ろうなんて考えたんです?」

「金になるから」


 それ以外なにがあるんだと言わんばかりの顔をされた。


「二十年分のお給金と比べても?」

「そういうことじゃねえなあ」


 要塞で同じような会話をした。貴族の私には分からないだろうと。


「あー俺達みたいなのはあんたみたいに綺麗に生きてねえんだよ」

「どういうことですか?」

「ずっと平和に騎士やってんのは息が詰まるってことだ」


 戦争が起きて殺伐としている中、人身売買に手を出して楽に金にすることが性に合っていると主張する。

 本当にそうなのだろうか。どことなくその顔が苦し気に歪んでいるように見える。


「息が詰まるから、レイオンの御両親も手にかけたんですか?」

「ああそうだな。あんたを手に入れられなかった原因の調子こいたガキへの報復もあったし、バレそうになったのもあったがな」


 誘拐犯であることがバレそうだったから事故を装って殺した。そこから今度は失敗しないように仲間を分隊に引き入れ力を蓄え、入念な計画を立てていたと。


「まあここ数年はもうどうでもいいなとは思っていたが」

「私と再会して変わったと」

「そうそう、よく覚えているじゃねえか」


 聖女という存在を売り捌くことはまだできる。そこにビジネスの可能性を確信したアパゴギは温めていた計画を実行に移す時だと思ったようだ。


「あんたを奪われた時の坊っちゃんの顔は中々よかったな。いい気味だ」

「そうですか」

「なんだ? 怒らないのか?」


 恐怖に震えるわけでもなく、夫を貶めた相手に憤るでもない。

 ただこの会話の中、アパゴギの話し方と表情に違和感しか抱けなかった。


「あの、もしかしてなんですが」

「なん、だっ?!」


 急に馬がいななき、がくんと馬車が揺れた。軽い荷物が転がる。動きが止まった。


「なに?」

「あーそうかよ」


 御者の叫びが聞こえた。

 外から多くの気配を感じる。


「……まさか」

「察しがいいな」


 短剣を私の喉元に突き付ける。


「アパゴギ」


 外から聞き慣れた声がした。アパゴギから盛大な舌打ちが漏れる。

 間違いない、レイオンだ。レイオンが追い付いた。助けに来てくれた。

 その次にパーフォスが馬車に向かって叫ぶ。


「大人しく出てこい。投降するなら受け入れる」


 小さく笑うアパゴギの瞳には光がなく、どこか自棄を感じさせるものが見えた。


「出るぞ」

「え?」


 人質のあんたをうまく使わせてもらうと、見せつけるように短剣を掲げる。

 待って。

 外にはレイオンがいる。さっき思い出して悶絶した恥ずかしい思い出が再び湧いて出てきた。折角シリアスな話でクールダウンできてたのに。来るのが早すぎなんじゃないの?!

 見かねたアパゴギがぐいっと私の腕を引いた。


「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「黙れ」

「今、レイオンと顔合わせづらいと言いますか!」

「はあ?」


 だってフォーがレイオンで、レイオンがフォーなんだってば。

 約一年、私が今までフォーにしたことを思い出すと、今顔を見る事なんて恥ずかしすぎてできるわけないのに!

非常に迅速だった為、メーラってばすぐに恥ずかしいを思い出すという(笑)。ここまでくるとアパゴギさん可哀想。(っ'-')╮=͟͟͞͞ (シリアス) ブォン

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