カンバラさん
一夜明けて僕とカノン、それからエリーはギルドに向かった。目的は仕事探しと二人の正式なギルド登録だ。
というのもギルドで仕事を受けるには正式にギルドに登録しなくてはならないのだ。なのでギルド登録をして仕事を探すのが目的と言ったほうが適切かもしれない。
ギルドに着くと、僕は馴染みの受付嬢に昨日あったことを話した。彼女はポニーテールがよく似合う、きりっとした目の女性だ。昔は有名な冒険者だったらしい。
「へー。そんなことがあったんですか。酷い話ですね」
「まあ、仲間に出会えたのが唯一の救いですね。てわけで二人のギルド登録をしてほしいんです。あと一つ聞きたいことがあって……」
僕はカノンを一瞥して、このギルドに所属しているS級冒険者の話を聞いた。エルフの国のことはあまり知られたくもないだろうから、そのことは伏せて、あくまでも僕がS級冒険者に興味がある体で話を聞いた。
「あの人はめったに顔を出しませんよ。まあ、もし会うなら彼を絶対に怒らせないでください。彼の通り名は【怒拳】。怒らせると他のS級でも手が付けられなくなるらしいです」
怒拳。そんなやばい人がS級なのか!
その後、二人のギルド登録が完了した。
カノンはB級、エリーはC級だ。階級は武力と能力値を足したステータス値で決まる。
0~2000がD級。
2001~4000がC級。
4001~6000がB級。
それ以上がA級だ。
そして、A級の中でも次元が違う存在にS級という称号を与えられる。
カノンのステータス値は4357でB級。
エリーのステータス値は3987でC級。
ちなみに僕は2005でギリギリC級。
エリーはほぼB級みたいなものだし、かなり差があるな。
僕が落ち込んでいるとカノンが「あんたの仕事は私たちを強くすることでしょ?」と、エリーが「サポート力ならウロナさんはS級です」と、励ましてくれた。
「お姉さん、B級冒険者なの?」
僕たちの会話を聞いていたのか、十二、三歳ぐらいの子供が声をかけてきた。ここで子供と表現したのは僕が十八才だからだ。ま、十八才もまだ子供なんだけど。
「そうよ」
カノンが自慢げに答える。
「お願い、私たちの依頼を手伝って」
「私たち? そもそも君は連れていきませんよ」
と、その子の後ろから現れたのはオールバックの男だった。服装は宮殿執事のようなタキシード。眼鏡をかけていて知的な印象を受ける。
「あ! カンバラさん!」
受付嬢が言う。その名前には聞き覚えがあった。
「カンビラ・バランガ。言いずらいからカンバラさん。十六人しかいないA級冒険者の一人ですよ」