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進展

 僕とカノンはギルドを抜け、最初に会ったときに利用したカフェに入る。カノンの行きつけの店らしいが、結構おしゃれな感じの外装だ。

「身体は大丈夫?」

 席に着いたと同時に僕が聞くと、カノンは「うん。ありがと」と笑顔で返す。

「ねぇ、そのごめん」

 カノンは突然頭を下げる。

「何が?」

「仇を見て我を忘れたことよ。みんなに謝ってまわってるの」

 カノン、あのときのこと後悔してるんだ。

「あれはしかたないよ。でも今度からは一緒に戦おうね」

「……うん」

 注文したメニューがやってきた。僕らはご飯を食べながら会話を続ける。

「ねえ、ミラさんのこと好きなの?」

「え? 何で?」

 ふいにカノンがミラのことを尋ねてくる。

「さっきいかがわしいことしようとしてたじゃん。あんたがミラさんのこと好きなら悪いことしたなーって」

 ミラさんのことか。うーん。僕は腕を組みながら……

「好きか嫌いかで言ったら好きかな。綺麗だし、色気あるし。でもさっきは困ってたからありがと」

「ああいうのがタイプ?」

「そういうわけじゃないけど」

「ふーん」

 しばらく無言の時間が流れる。

「ねえ、エリーのことどう思う?」

 今度はエリーのことか。カノン、今日はどうしたんだ?

「大事な仲間だと思ってるよ」

「それだけ?」

『さっきまでは身体だけだったけど心もあなたのものになりましたよ』

 僕の脳内にエリーのあの言葉が蘇る。

「……うん」

「へー」

 また無言の時間が訪れる。でもなぜか全然気まずくない。なんなら心地よい時間だ。他の人なら気まずいのに何でだろう?

「じゃあ、私は?」

 今度はカノンか。

「大事な仲間だよ。あーでも、いや、恥ずいな」

「何? キモイ。早く言って」

 僕が恥ずかしがっていると、カノンが辛辣になる。やめて。傷ついちゃう。

「その、カノンはなんかうまく言えないんだけど、無言になっても気まずくないし、話して楽しいし、なんか親友みたいな?」

「親友ねー。ふーん」

 また会話のない時間に入る。

「親友って私のこと女として見てないってこと?」

「いや、そういうことじゃないけど」

 むしろめちゃくちゃ女として見ています、とは気持ち悪いから言えない。

「じゃあさ、ちょっと進展させてみない?」

「え?」

「あー、いたいた。カノン。私に内緒でウロナさん独り占めにしないでください」

 僕らの前に現れたのはエリーとサリー、それとカンバラだった。

「エリー。何でウロナとのデートにあんたの許可がいるわけ?」

「別にいりませんけど、デートって認めるんですね? ウロナさんはどう思ってるか知りませんけど」

「僕はご飯を食べに来ただけだと思ってたんだけど、デートちゃデートだね」

 僕が笑顔で答えると、カノンは泣きそうな顔で「ウロナー」と嘆く。え? 僕なんかした?

「ていうか何でカンバラさんまでいるの?」

「それは……」

「私が説明しましょう」

 エリーの声をカンバラが遮る。

「単刀直入に言います。ウロナくん。今から私と王都にきてください」

 その後「詳しい話は馬車の中でします。早く食べてここの勘定を済ませてください」と言い、カンバラとサリーは出ていった。エリーは残っていたが「店が迷惑です」とカンバラに追い出された。

 僕たちはなにがなんだかわからないまま、注文したものを急いでたいらげる。

「ねえ、ウロナ」

「何?」

「さっき話どうなの?」

「さっき話って?」

「……あーもう」

 カノンは腰を上げると、僕の後ろに回って、それから……僕を抱きしめた。

「食べるのに集中して。顔見られたくない。恥ずかしいから」

 後ろを向こうとするとカノンが、そう言って止めてくる。

「どう? ちょっと進展してみたいって思った?」


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