決着
ゴクギ。本当に僕がその力に覚醒したのか?
実感はないけど、とにかくこれで戦える。
「一人でも戦える!」
僕は男に進撃する。対して男はスキルの炎を使ってくるが、今の僕の障害じゃない。打撃の風圧で炎をかき消す。
「なるほど。戦闘経験はゼロか。ただフィジカルが強すぎる。殴り合いでも勝てねェかな。ゴクギ」
男の手のひらから青い炎が噴射される。僕は打撃の風圧で炎を消そうとするも青い炎は燃え続け、僕を吞み込もうとする。
僕はなんとか避けたが、青い炎を攻略しないと勝てないことを思い知らされる。
「でも僕一人でなんとかしないと」
「一人ではないでしょう?」
男が突然血を吐きながら吹き飛ぶ。木の棒で殴られたからだ。そう、カンバラが立ち上がって男を攻撃したのだ。
「A級! おいおいまだ立てんのよ!」
少し楽しそうに男は叫んだ。
「そうですよ。ウロナさんには私たちがいる」
声のほうを見ると、そこにはエリーがいた。良かった無事だったみたいだ。後ろにはカノンとサリーもいる。
「ごめん。私冷静じゃなくなってた。みんなで戦おう」
カノンはバツが悪そうに顔を背ける。
「うん!」
「ていうかウロナのバフ消えてるんだけど。長持ちするのが長所なんじゃなかったっけ?」
サリーがそんなことを言ってくる。
バフが消えた? おかしいなぁ。と、確認してみるとサリーどころか三人のバフが消えていた。そして、代わりに三人のバフがまとめて僕にかかっていた。
なるほど。これが僕のゴクギか。
他人にかけたバフをまとめて自分にかけるゴクギ。まだバフがかかっているはずのバビロンたちに影響がないため、ゴクギの対象になったのはカノンたちだけらしい。
「後で説明するよ。それより今はあいつを倒そう」
僕らは作戦会議をする。その間はカンバラが男を押さえててくれた。だが数分経つと「そろそろ限界ですよ」と言われた。
よし、やるしかない。
「じゃあいくよ。みんな作戦通りに!」
まずエリーが地面に氷を張り、男の動きを封じる。
「カンバラさん!」
僕が叫ぶと、カンバラは頷いて離脱。今度はサリーがスキルの観察で男の弱点を見抜く。
「あいつの弱点はお腹よ。カンバラさんとの戦いで弱ってるみたい」
「オッケー。カノン」
最後はカノンだ。
「……風の聖霊よ」
カノンは風を操り、僕の背中を押す。勢い良く僕は男に突っこんでいく。
「くらええええええええ!!!」
僕らの最大限の一撃を男の腹にくらわせる。
「ぐぼっ」
男は間抜けな声をあげながら地面に背をつく。