身代わり2
登校するときも友達と一緒にいるようにしたけれど、五人組の男に囲まれたらあっけない。
危うく馬車に押し込まれ攫われかけた。
通りがかった同級生が金切り声を上げ、聞きつけた近所の人達が駆付けたおかげで難を逃れただけなのだ。
以来、坊ちゃんは通学していないし、寮でも侵入された部屋ではなく建物内の友達の部屋を転々としている。
友達はノートを見せて一緒に復習することで遅れないようにサポートしてくれているし、
学校はレポートの提出などで不利にならないよう気を配ってくれるという。
それでもほとぼりが冷めるまで距離を取ることにしたのだ。
「人さらいを雇うってやり過ぎじゃ?」
「その女が指示した証拠がない」
伝手を辿って他家での見習いをするていで王都を離れる。
休学して他国に留学することも考えたけれど、不安定な気持ちで見知らぬ国で一人で過ごすのも心細かろう。って配慮もある。
というわけで彼は現在馬車で移動中。
海辺の交易都市で半年か一年かほとぼりを冷ましに行くのだ。
「もう僕は16歳でそんな心配するほど幼くないのに」
「16歳だろうと36歳だろうと犯罪に巻き込まれたら穏やかじゃいられないでしょう」
「でもねぇ、王都以外で暮らしたことがないから少し楽しみなんだよ。海も見たことないし」
「海、いいですよ。魚が安くて美味しいし、月のきれいな夜に砂浜にゆくと景色が素晴らしいです」
坊ちゃんは私の服を着てアルと寮を出た後、ギルドのそばの宿に潜伏。
わたしは坊ちゃんの部屋でカーテン越しのアリバイ作りに励んだ。
そして未明に問題のバスルームの窓から抜けだした。
ムチムチになったとはいえ、まだ通れた。
街灯などない未明の暗い空に紛れてブケパロスで王都から出た。
フレッドが護衛についた馬車と王都のはずれで合流して
坊ちゃんはわたしがこのシーズン買ったばかりの新しい冬物たちで冒険者のなりをして
わたしは坊ちゃんの高級おさがりを着て下座で慣れない姿勢をとっている。
「もうすこしあごを引いて背筋を伸ばしたほうが恰好がつくよ」
「なんか独特の動きしていると思っていたんですよねぇ」
「お客様のお屋敷に伺うとき、行儀悪いと商談以前だから特に気をつけているよ」
坊ちゃんはおっとりと話す。育ちがいいのでガツガツしない。
いい家の子というのを初めて見た気持ちだ。
アスタはれっきとしたご令嬢だけど、まあ、あれは見なかったことにしている。
お付き合いありがとうございます
続きは明日の朝6時です




