人質籠城
「たてこもり犯なんだって?」
背後からフレッドの声がする。
「まさか。かわいい青少年のわたしが?
ギルド職員が、勝手に顧客を調べてこちらの意向も確認しないで依頼を無断キャンセルした件について
上長に責任の所在と後始末をどうつけるおつもりなのか伺いたい。ってお願いしているだけです」
「とりあえず、テオはコレを口に入れなさい」
振り返りざまに大きな饅頭を押し込まれる。ソースを塗って香ばしく炙っただけの餡の入ってないフカフカ。
口の中いっぱいに詰め込まれて 文句を塞がれる。
うごうご唸っているわたしの手を引いてカウンター脇の扉を開き職員用通路へ入って行く。
資料室でお世話になったマリアさんが手招きして階段をあがり二階の一室に案内される。
執務机についているギルドマスターとおぼしき40男と目が合う。
応接セットに案内される前にフレッドが立ったまま話し出す。
「マスター。うちのテオがお騒がせして申し訳ない」
でも!絡んできたのはアスタじゃん!
口の中のまんじゅうはほぼ呑みこんだので言い立てようとした瞬間
干し肉の長いのを口に差し込まれる。
一瞬、ナイフで刺されたと思った。
「大人の話をするから、もうすこし聞いていなさい」
ソファに案内されて座ると尻が沈んで仰向けになる。足の長さがあわないから浅く座っているせいで背もたれが使えない。
フレッドに与えられた肉は厚みのせいで食いちぎれず、咥えたままだとよだれが垂れそうになるので噛むのに専念する。
「どのくらい彼女の行いをご存じですか?」
「テオが不服を申し立てに来るだろうと思うくらいには。
こないだは窓口を放りだして飛び出していったのは同僚から報告が上がっている。本人が商店街の会長とここで打ち合わせていた。
テオはさっき下で洗いざらい叫んでいた」
「私達を含めここの窓口を忌避しているもの達についてご存じですよね。そんなに彼女を庇いますか?」
フレッドが俺って言わない。めずらしい。
「怪物をあしらえてこその冒険者ギルドっていわれると。
変わり者の婦人の就業くらい可能じゃないかと、俺の器を試されているようで断れなかったんだよ」
ため息で愚痴をこぼす。初対面ですが。
干し肉を飲み込み、食いちぎった分を握ったままだが、わたしも言いたい。
「とりあえずわたし達の信用被害について、書面で依頼主にマスターの名前で謝罪を求めます。金銭被害についてアスタさんから賠償は受けられますか?」
「謝罪については早急に。金銭は一旦立替えて帰りに一括で支払おう。彼女からは天引きで返してもらう」
「…彼女はこちらでの勤務を続けるんですね」
「さすがに窓口の業務はもう限界だから、他の作業で適性を探ることになる」
「資料室の惨事をご存じですか?」
「なんだ。テオはそれも知っているのか。他にも業務はあるんだよ
そちらの要求は飲む。アスタに謝罪もさせる。
だから、今回の中央商店街には出席してくれないか」
そんなに大事なイベントか?大食いするだけだぞ?
「警護とか素材発注とか、高額なものほど大店の発注だから。大店が連なる中央商店街の意向は損ねたくないんだよ」
フレッドが耳打ちをする。
「このあいだのチャンピオンだけで十分では?
まだ身体のできあがっていないひょろい背の高いばかりの青少年が
ムキムキの上腕、分厚い胸板のマッチョのアニキ達を下す、っていう見応えのあるジャイアントキリングだったよ?」
「今回はお城からも参加するから。騎士見習いとか貧乏衛士とかハラペコが多くてチャンピオンの劣勢が予想される。しかも年齢も体格も似てしまう。見た目に変化が欲しいんだよ」
「サクラか!わかりました。仕込みでも。でも日当は要求します。イロつけてくれればいっぱい頑張ります」
「おお。テオ、ふてぶてしくてすごく良いぞ。その調子ならヒールにもなれそうだよ」
ありがとうございます
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