戦い
若干割高な参加費を払ってもパフォーマンスを披露したいお調子者は十七人もいた。
特設ステージに並べられたテーブルにつき、雁首揃えて馬鹿面を町内の皆様に披露中。
商店街の偉い人の話を聞いているふりしている。
食いしん坊ばんざい。
最初に3枚、大きなパンに長々とソーセージのはさまった皿が供される。
食べたら手を挙げておかわりを請求。わんこそばスタイルで次々にサーブされる。
傍らの大きなジョッキに水が注がれている。
見物人も見ているうちに欲しくなるのかソーセージパンを咥えて応援しはじめる。
彼らはエールも反対の手に持っていてちょっと大変そうだ。
フレッドのように大柄な青年やお相撲さん(あんこ型)のような旦那さん、それにわたしのような食べ盛り10代少年、でもサッカー部とか野球部にいそうなシュッとした子。いかにもたくさん食べそうなたくましい男性達。
そうだね。男性のみだ。
こちらでは女性がこんなに食べると はしたないってカルチャーらしい。
実家のばあちゃんもそんな感じだったから、わたしはいい時代に生まれたと思う。
小鳥のように少食なのがカワイイってナニソレ。
女の人の方がよく食べているよね?飲みながら箸が進むのは女性っていうのがわたしの認識。
おしゃべりしながらちょっとだけ、いろいろと、ずぅぅぅっとちまちま食べ続けてるだろ?
物珍しいものにも箸がのびるのは女性。
変わった食事に警戒する男の人は多かった。
それ食べて大丈夫なの?って怯んでカレーハンバーグラーメン。
生で手に入ったマグロの目玉煮たのに。
コッテリで美味かった。
っていうかわたしの友達だから食い意地が張っている類友だったのも。
むっちゃむっちゃと無心で咀嚼しては嚥下。
だいたい最初の10分で脱落してゆく。出オチの連中のラッシュは気にしない。
わたしはケーキバイキングが好きだったから自分のペースは知っている。
止まらなければ、負けない。
満腹感が来てからが自分と勝負だ。
隣のお兄さんはパンにむせて水を飲んでいる。
わたしは馬の背でつまみ食いするのに慣れててあまり困らない。飲むと腹が苦しくなるし。
「ぜったい9個は食べるし」
6つ目のソーセージパンを食べて、手を挙げる。
どうしよう。満腹感が分からない。
壊れてるのかな。
「うめぇ」
ソーセージのプチっと弾力のある歯応え。しかもソーセージはまだ温かい。ジューシーだ。
おかわりの手を挙げながら
「マスタード、多めで!」
隣のお兄さんの口は大きい。ワシワシと口に収めている。
おかわりの手を挙げて
「水もピッチャーでおかわり」
背も高く肩幅も広い立派な体格なので収容量も大きそうで羨ましい。
「いくらでも食べられそう。美味すぎ」
おかわりの手を挙げる。
「ピクルス大盛りできますか?」
はさみきれない分を上に盛って供される。こぼれピクルスのビジュアルに観客がどよめく。
いや、ピクルスだし。
隣のお兄さんもチラ見しておかわりの手を挙げ
「オレも」
をきっかけにこぼれピクルスのオーダーが次々と続く。
「ピクルスで食欲が増進されて捗るー!」
わたしもこぼれピクルスのおかわりの手を挙げる。
12皿を食べたところで急に胃が重くなる。
おかわりを受け取ったところで
席から立ち上がる。
掛けていると胃が押されて苦しいのだ。
立食パーティーのように皿を持って立ったまま13皿目を食べる。
ソーセージの脂っ気がだんだん効いてくる。
行儀悪いの先鞭をつけるとたちまち追随するものがでて、ギャラリーのヤジが飛ぶ。
キリのいい20皿目までは食べるのだ。と粘ったけれど18皿を食べている最中に時間切れになった。
見回すとまだ食べていたのは3名。
隣のお兄さんと10代少年だった。
優勝は10代少年24皿で2位はお兄さん22皿。
賞品はスイカ4玉。
なんだろう、ちょっとよくわかんない。
なのに少年は嬉しそうに両肩に前後振り分けにしたスイカを担いでいる。
満腹からのスイカ。
ほんとうに嬉しいか?
お兄さんもスイカ2玉を前後の振り分け、肩にかけてドヤっている。
観客と参加者に切り分けたスイカが振る舞われて、和やかにお開きとなった。
もちろん食べた。1切れだけ。甘くて滴る果汁が胃の中のパンに染みいる。
突然腹一杯ってサインがくるのが分かったので、満腹を覚えてよかったとおもう。
そこから「デザート別腹」が起動できるのがわたしの女らしいところだ。
お付き合いありがとうございます。
続きは明日の朝6時です
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