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こんな作業をしている

書きためた量が思いのほかあったので、週末とお盆期間は2話投稿します

厨房には家電がない。コンロは薪を使う。着火は熾火から起こす。

薪は一冬で4t使うと聞いたことがある。そんなに手元に置けないから随時買いに行く手間がいる。


「そうした費用と手間がかかるから、一人暮らしだと外食って合理的ですよね」

「材料使い切れなくて、家の中で腐ると臭いも酷いし片付けもやりたくないし」

「でもね。ウチの地方では妻帯してない男と所帯持ちの男だと10年以上寿命が違うんです。それは所帯持ちの食卓も関係しているとわたしは思っています」

「寿命が延びたのは何年くらい嫁がいた場合?その嫁が食事に関心があるとは限らないだろう?」

「フレッドさんが健康で過ごせるように、わたしがいる間は全力でご飯を用意しますよ」



小麦粉と糖蜜と塩に水を加えて捏ねると、空気中の酵母で発酵するって井戸端会議で聞いたので試した。

配合は「イイ感じで」とのこと。

塩などは指先でとれる限りとる。小麦粉はボウルに入る範囲で入れる。糖蜜は入れたいだけ入れる。

水は混ぜ合わせたときベトベトではなく、小麦粉がまとまるくらいが目安。


それはレシピなのか?秘伝が過ぎる。


捏ねた後、布巾を被せ膨らむまで埃がかからない棚にしまう。気温によって数十分から数時間と発酵時間が変わるので、様子を見て膨らんだんじゃないかと思ったら揉む。

びろんと広げたとき膜が透けるくらいよく延びるようになったら、鋳物の蓋付き鍋のなかに入れて再び膨らむのを待つ。

熾火の中に鋳物鍋をいれ蓋にも熾をのせて8分焼く。

この雑な説明で作るわたしも問題だが、それでもできるキャンプっぽいパン。


朝食にお茶とゆで卵と、豆とトマトのスープとパンを出す。

残ったパンにバターとジャムを塗って油紙に包んでお弁当に持たせる。果実付き。干しいちじくとナッツは小分けにして補助食。


全力でと彼にいったわりにベテランの手抜き感満載だ。

スープには玉葱と人参と葉物が正体不明になるまで煮溶かしてあって野菜嫌いも騙される仕様になっているところまでベテランのオカン風味だ。


火打ち石、揉み錐式、弓錐式、ファイアスターター、マッチなどの着火アイテムとBBQがホビーな父の教育の賜物がここで実を結ぶとは思わないだろう。

だが、このシチュエーションだ、本当は魔法で着火したい。


箒とモップでキッチン、ダイニング、浴室、トイレ、フレッドさんの部屋を掃除してベッドメイクまで済ませる。


洗濯機がないうえに、子供の小さい手と非力な腕なので洗濯はとても難しい。成人男性の衣料品は大きくて濡れると重いのだ。

しかも草の汁とか泥とか煤とか脂が付いている。

泥はあらかじめこすり落とす。染みもつまみ洗いしておく。

石けんは溶けにくくて、お湯で溶かしてから衣類と大きなタライにいれて踏む。

そしてここからが魔法だ。

結界を二重に張って衣類を入れた内側の結界には隙間を空け回転させる。外側の結界は脱気して内側の水分を引っ張る。脱水槽だ。

タライに水を張り直してすすぎをしてまた脱水。

裏庭に干す。大きくて重いので竿に落とさないようにかけるのは小柄なわたしに難しい。


汚れ落ちを考えるとほんとうは結界に水入れて超音波あてたい。水がだしたい。

魔法がつかえたら、と思うのだ。


濡れた布は重いし小さい身体をフルに使っての作業なので一番疲れる。

これで息が上がるのだから冒険者になりたいなんてオーバンさんが呆れたのも妥当だろうな。

小さく切ったパンにジャムをこんもり載せてお茶で流し込む。土間の棚の毛布の隙間に潜り込んだ。



お付き合いありがとうございます

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