商隊警護 見習い8
「こんにちわ。救助に参りました」
毎回声かけのセンスのなさにガッカリだ。
ウサギの落とし穴掘った要領で、坑道を塞ぐこの大きな塊に通路をつけられないか。
土塊と結界を置換える。
大きくトンネルにすることはできないが何度かに分けて横倒しのU字溝状に向こうまで通す。
ハイハイでたどり着く。
取り残された人の状態を確認する。
「お加減はいかがですか?水は飲めますか?怪我は?」
坑道用照明を渡す。
とりあえず配った蜂蜜水と飴を口にした。
丸1日以上高温多湿の状態に閉じ込められていたので、健やかな訳はないが
出口を用意したと伝えれば歩けると答えたのは3名。
「ロープを伝ってゆくと300mほど先に立坑とカゴが有ります。外では皆が待っているのでカゴに乗ったらすぐ上げます」
ケガを負った二人とも幸いなことに意識がある。
一人は岩に挟まれて脚の骨に異常がありそうで発熱している。
もう一人は腰の痛みで動けない。
ここに居て何かできることはないので、とにかく連れ出すように言われている。
「この通路もう少しなんとかならなかったのか?」
匍匐前進で土塊をくぐる事になった坑夫のおじさんが言う。
「ほんとうに。身の丈にあったサイズで申し訳ないです。いずれ上手に」
「いや。もう一回とか厭だから」
先に通過したおじさんたちが毛布に包んだ怪我人にかけたロープを引いて通してくれる。
最初わたしの腰にロープをつけてハイハイで抜けるつもりだったが、おじさんの申し出で速やかに通過する。
通り抜けた途端、雪崩れている土砂に皆ゲンナリしていた。
「崩れて通れない」
ブケパロスを出し
「わたしにしっかり掴まってください」
タンデムを要求するとさらにがっくりされる。ふざけているとしか見られない。
まあ、そうだろうとも。
「おじさん真面目に聞いてください」
手を引いて、棒馬に跨らせる。そしてジタバタと宙を蹴って天井スレスレまで上がってみせた。
「足を引きつけて頭はすくめてください。落ちると痛いし、天井にぶつけると崩落です」
がっしりしたおじさんは重い。懸命に蹴って漕ぎ進む。
小児用自転車二人乗りのようなマヌケな景色だろう。しかも漕ぎ手がちびっこ。
なかなか進まないが距離が短い。
ピストン輸送で5人運びきればいいだろう。と坑道に着地する。
「おぉぅ。小僧、いい仕事してるじゃん。この人はこっちに任せろ。俺を向こうに運んでくれ」
すでに討伐メンバーは立坑を降りてここまで来ていた。
「この土砂を退けてくれるように今頼んでいるところだったんだ」
往復で二人乗りしているので息があがる。
彼と自転車二人乗りとかする青春はなかったのに、おっちゃんと再び密着二人乗りか。
「ハア。じゃ、その足元の穴を潜った先が現場です」
「なんでこんなに小さい」
「まだ上手く使えないんです。自分のサイズでできてしまいました」
歩けるおじさんから連れ出す。最悪自分で立坑まで行けるから。そして外で心配している人に中の様子を伝えてもらう。
引き返すときにまた討伐メンバーを乗せる。デカくて重い。
5往復して毛布に包んだ怪我人も強引に土砂の山を越えさせた。その先は力持ちな討伐隊の兄さんが抱えて出口へ送っていった。その送迎の二人を含めて残り8人も二人乗りでこなしたわたしはそれだけで疲れ果てていた。
体力に劣る子どもだからな。
ブライアンさんが皆に最後の確認と指示を出しているとき
わたしはフレッドさんに寄りかかって白眼をむいていた。
「テオはおれについてくることになってる」
ワームの囮にわたしを投げたりしないだろうな?ブライアンさんはそんな説明はしていないようだが。
緊張が高まるとフレッドさんへの不信が募るわ。
お付き合いありがとうございます
続きは明日の朝6時です




