閑話 魚を上手に食べたかった 2
「テオ これ何?」
洗ってからカビないように乾かしていた箸を指している。
使うのはフレッドさんの居ない時だけにしていたのに。
ぬかった。
「…スタッフ?」
「2本同じ物を?キッチンに?」
と言って手に取る。
「あぁぁ!それ高価なんです。そっと扱って下さい」
先を持って振れば、パキリと砕けて全損だ。
「珍しい。テオの宝物なんだ。何、これ?」
「豆とか胡麻とかビーズを選る時、指より上手につまむ道具です」
「なんで乾物のための道具が濡れているの?」
「…黙秘します」
「テオは秘密ばかりだね。おれは信用できない?」
「そうですね。難しいです。今月何回殺され損ねましたか?」
「…冒険者なことしかしてないし、生きてるし」
「それにトカゲ獲ったらとっておきの魔法見せるって仰ったのに、まだ見せてくださらない」
「それやったら、この棒が何か教えてくれるか?」
???
戸棚からゴブレットを出し、ワインをダクダクと注いで飲み干した。
その場で跳んだり身体を捻ったり準備体操をしている。
どんな大規模魔法なんだろう。
5分ほどして身体が暖まったフレッドさんはカウンターの椅子に掛けた。
「テオはおれの向かいに座って」
「はい握手?」
「まず、この親指。指相撲しようか」
たちまち仕留められる。
「で。この親指をこうやって」
右手の親指を握りこむように左手の掌で隠す。
「エイ!って掛け声で…」
「大変!消えた!!」
内側に親指を隠して、フレッドさんは真っ赤な顔で小芝居をしている。
ワイン1杯でココまで赤くならない。
なるほど。
素面ではやりづらいのか。
わたしもビール500mlくらい飲んでおけば良かった。「親指消失マジック」ならきっと爆笑していただろう。
もしウケなかったらもう500ml飲む必要があるってことだ。
「フレッドさん、親指は復元してください。親指使う道具なんです」
「おぉぉ!戻れっ!」
「わあ。もどりましたね(棒)」
箸を取って『親指が生えた』フレッドさんの右手に持たせる。
「この形で持ちます。動かすのはこちら側の棒だけです。」
手を包んで指の動きを案内する。
箸でハンカチを持ち上げる。
今度はわたしの手の中に箸を納めて動かす。
「こんな感じで、豆もつまめます」
「キッチンにあったのは、食事をつまんで口に運ぶ道具だからです。
こちらの食事の作法と違うのを知られるのが恥ずかしかったので、決して誰にも言わないでください」
「使うところが見たい。夕飯はコレで食べて」
「お断りします」
「じゃ、おれがコレで食べてみ「ぜったいお断りします」
「ナイショ、ですからねっ!!」
お付き合いありがとうございます




