初めての遠出14
フレッドさんは王都で散財した。100万円の宝くじが当たった手取り30万円の人が150万円(税別)消費した感じ。
それで巻き返すべくお魚釣りを狙った。
たいへん冒険者らしい観点です。
内需を拡大する立派な有り様だと存じます。
わたしを生き餌にしなければ、な!
フレッドさんの兄弟は当然生き餌ごっこをしていたので、何の疑問もなく放り込んだらしい。
夏の定番の水遊びで兄弟全員ノリノリ。大盛り上がりの夏のイベント。
エサ役は別に子どもでなくてもいいんだけど
「飼い犬で何回かやると、犬のメンタル病んじゃうんだよ。顔を合わせてくれなくなった」
「でしょうね」
「テオも?」
「不信感でいっぱい」
感性が違いすぎるので、冒険者は引退しようかと本気で検討中。
「テオ、家出するのか?」
お暇申しでたいかも。
とはいえ、子どもの身の上で住むところを確保するのは難しい。
誰も土地の売買や家の賃貸の契約なんてしてくれない。
森に隠れてもいずれバレるだろう。
雇われるにしても、オーバンさんやフレッドさんのように善良な人間とは限らない。
搾取されても売り飛ばされても公にならないだろう。
「家から離れているので、家出は出来ないでしょう?黙って出奔しません」
「…しゅっぽん」
冒険者ノリとかシャレがわからない。
コレが底辺職と言われる由縁か。
翌日は虫捕りをしようとフレッドさんはご機嫌取りのように言う。
「それはどんな凶悪な生き物なんですか?」
「普通のありふれたトンボや蝶とかカナブンだよ」
「普通に毒が有る?」
「ない」
「普通に人を噛みちぎる?」
「トンボの顎は強いけど、血が出るほどではないぞ。いや出るかな?」
「普通に巨大?」
「大きい蝶でこれくらい。大きいトンボもこれくらい」
手のひらほどの蝶とか、親指と小指を目いっぱい伸ばしたくらいのたぶんオニヤンマ?
「生息地が普通に危険?」
「山の中だからそれなり?こないだの崖みたいなところには行かなくてもいい」
「有毒ガスが噴出してるとか毒虫が一緒にいるとか?」
「途中、虻が出るかな。蜂は一緒にいるかもね」
そうか。それなら大丈夫か。
蚤とダニと蛭と蛇と虻と蜂と蚊に注意して長袖長ズボン手袋で行く普通の山歩きなんだ。
「今日はキャンプらしくテントで過ごそう。テオも手の内を隠したいならテントを張ること、火を起こすことを覚えたほうがいい」
焚き火で簡単な焼物を調理したり、残った火でマシュマロを炙って沸かしたお茶をランタンの灯りの下で飲んだり、火の傍らで警戒するのはどんな物音に対してなのか。
気配の探りかた、獣、賊について聞く。
「ここだとクマとイノシシ、オオカミ。荷物の持ち去りをするサルも注意している」
「出たらどうしますか?」
「逃げるか、飛び道具かなぁ」
そう言って手元の小さい弓を指した。
「フレッドさんは弓も弾くんですか」
「クマと取っ組み合いした伝説の男とか川で洗濯していた婆さんとトラの格闘とか聞くけどおれは絶対イヤだと思ったんだよ」
丈夫な人がいるよね。
「テオもスリングか弓を覚えるといい」
魔法を見せたくないならば。
プロ奏者が宴席でせがまれるように、看護師が法事で健康相談会を強いられるように、
ハンドメイド好きなんでしょ?手持ちでチャチャっと作って。
クレクレに仕事を害されない為に隠したい。
交代で休みながら警戒する夜が明けて、かかっていた湯で熱いお茶を淹れる。
夜の間に茹でていた、ひよこ豆のホムスとカボチャのマッシュ、干し芋を出す。
「テオ?」
絶賛報復中
「召し上がらないんですか?」
「おれはいつでも食事はとる男だ。でも、喉に引っかかるんだよう」
モソモソと食べきったところでメロンを半分こして出す。
「ブランデーを少しかけて食べるの好き!」
「出しますか?」
「これから山に行くからダメ」
フレッドさんは意外と真面目っていうか真摯に仕事に取り組んでエラいとその時は誤解していた。
読めましたか?
蚤
蛭
蛇
虻
蜂
蚊
虫偏の漢字クイズでした。
お付き合いありがとうございます
続きは明日の朝6時です




