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【本編完結】小学生で迷子になっている   作者: へますぽん
番外編

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229/230

君が6こ

たたたたたたっ!たたっ!!


今日も忙しないノックと共に扉を開けてノルが現れる。

「ユーリカァ。菓子買ってきたっ」


節約中なので、買ってくる菓子は煙草銭ほどのごく安価なものだ。

今日は木の実入りの堅い焼き菓子。南部煎餅よりもうっすら甘くて倍くらい歯ごたえがある。

顎の鍛錬をしているか愛犬のガムなのか、口寂しさをまぎらわすのに良い感じだ。


ハーブを煎じた茶を二つのマグになみなみと注いでテーブルに運ぶ。

ノルは紙包みをひらいて木皿のうえに分けている。

「ユーリカに6こね」

ノルの皿に5個。

「一こおまけしてもらったから、ユーリカに」


木片をしゃぶっているような、決して噛んではいけない系の食品だ。

削り倒して小さくなった鰹節を登山の際にもってゆけって婆ちゃんが言っていた。

濡れてもこれなら傷みにくいから遭難対策によいのだ。とか、不穏な差し入れだった。

あれよりは食べやすいし、

そもそもノルは恋人に菓子を差入れてお茶を楽しもうとしているのであって登山とか遭難とかしていない。

お茶は温かい地域で生産され輸入していた。

舶来品はいまはまだ政情不安で高騰しているため、いろいろな代替品が出回っている。

実家の母がクマザサとか柿の葉とか玉蜀黍の髭とか、健康に良いから!ってガンガン送ってきたのを思い出すよ。

ドクダミ以外は許す。

…ぁぁぁぁ。。でも。

やっぱり針葉樹の葉っぱはイヤかも。ちょっと松ヤニっぽい樹液のぴりぴりした感じが好き嫌いの分かれるところだ。

松ヤニをわざわざワインに混ぜる人もいるから、ほんとうに好みの分かれるフレーバーだよな。


いまは地域で沢山採取される『なんかのハーブmix』が安価なわりに飲みやすいので採用している。

なんかのハーブって詳細を確かめていない雑で胡散臭いものよりいっそお湯でもいいのかもしれない。ポットを洗う手間も省けるしね。


この間の満月がオレンジがかったピンクで

ストロベリームーンというよりハムっぽいと

フレッドが言ったけれど、むしろサラミとか太ソーセージに似ている。

というわたしにノルは

サラミやボロニアソーセージの脂身が好きなんだとニコニコと告げる。

月は金色に輝く夜もまた蒸かしたての芋の断面に似てうっとりする。

熱いお芋をパカリと割ったとき、冷たい夜の空に輝く月を思うんだ。


一口大のカチカチと歯に当たる菓子を含んだまま

ノルとたあいもない戯れ言を言い合うのがほんとうに楽しい。

お付き合いをしている感じがする。



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