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【本編完結】小学生で迷子になっている   作者: へますぽん
番外編

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222/230

その涙は切なくてこぼれているわけじゃなく

片田舎では一旗あげられないから。

そう言って出稼ぎに出るハリーを見送り妻は子どもと家を守っている。

年に何度かハリーは王都から帰ってくる。そこそこ名前は売れてきたらしけど、帰ってくるときはだいたい不機嫌。

それはバクチで負債を抱え込んでいるから。

帰ってくるとハリーはまとわりつく子供達を蹴散らして、妻が世話をしている山羊やら鶏をまとめて売り飛ばす。

そして妻を身重にして金をもって出て行く。


っていうのが冒険者と結婚したいといいだした娘に告げられる定番のお話で

実話。

というよりごく身近なアルアル。


それでも『彼が好きなの』ってのぼせる娘は止められなくて

婦人部の愚痴で娘さんが

「いいの。私は手に職があるし、彼の顔立ちに似た子どもが欲しいから!!」

って言い切って子どもを設けた(年子でじゃんじゃん増えた)。

帰宅すると子どもの声が五月蠅くてやってられん。とハンサムは家に寄りつかなくなったし金も入れない。

「俺にその気はないが、女が勝手に寄ってきて家に引き込む。既婚者に無体を働くあの女達が悪い。俺はあいつに貢いでいるわけじゃない」

だそうだ。

追っても仕事がらか逃げ足が素晴らしく速い。そうでなくてはあの世に逝っているんだろう。

さいてぇ。


ノルはまだヒョロいといわれる痩身でいかにも青年になりたてな風情だ。

それはもうたまらんだろう。きっと、悪いっていわれる女が群がる。

メイドさんからも注目集めていたってゴードン言っていたし。


という状況では、いくらお花畑満開でもなかなか承諾の返事が出せない、


ほんとうにフレッドの結婚がわたしにとって重大な問題だったのだ。

結婚についてずっと耳をそばだてていた。おかげをもってこれこそ耳年増っていう仕上がりだ。

そして善良な彼は風評被害でいまだに結婚していないわけだが。


わたしもまたノルに対して風評だけで判断して良いのか。


ほんとうにわからない。


何年か後にノルが小柄で笑顔の可愛い奥さんに、あの人好きのする大きな笑みを向けているのを見たら、わたしはぜったいに抉られて立ち上がれない。そう思うくせに手をのばせない。

離れることも近づくことも選べない。

そうだ。

わたしはいくじなしだ。

夢の中でですら、推しにキスすることも躊躇ったバカだ。

目が覚めてから、夢って分かっているならキスくらいしておけば!って歯がみするようなバカだ。

くやしくて涙が出てくるよ。



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