ゴードンの名案
交際を始めたばかりって
ほんとうに相手のことばかり考えちゃうし、割り込まれたくない。
仕事だろうと親、親戚だろうと友達だろうと一切を排除して
自分に関心を集中させて欲しい。
っていうのはよく聞く話だ。
もう絶海の孤島か最後の秘境に籠って愛を育んでいればいいじゃないか(棒)
というわけで、お互い告白しあって初々しい交際を開始したオリバーとテオちゃんに素晴らしい提案をするのだよ。と胸を張るゴードンとそれをすかさず張り倒すロブ。
コンビ芸なのか。
めり込むくらいどつかれても、しれっとズボンの埃を払って微笑んでいるゴードン。
「あのね。彼と暮らせる住居と安定した収入を紹介したいんだ」
わあ。胡散臭い。
なにその雑なペテン。
あからさまに警戒した顔になっていたらしい。
「筋力だけじゃなくて口車の操作も巧みってゴードンすげぇ」
カイが尊敬のまなざしを向けている。
「いや、テオがドン引きしている時点でダメだろ」
「えぇ?だってオリバーはその気になっていたんでしょう?半分上手くいっているじゃん」
フレッドとなにか言い争っているが何の話だ?
「テオに『月見の臺』の補修が終わるまで、臨時であそこの番をしてほしいんだよ。
もちろん一人じゃ不用心だから、オリバーと組んでもらう。
二人で楽しく過ごしつつ、ときどき通る商隊をみてくれればいいんだ。
報酬もちゃんと用意するし、住まいは無償で提供する。これからみんなで建てる。食べ物や必需品は商隊が届けてもいいし、麓まで買出しに来てくれてもいい。テオならすぐ降りてこられるじゃないか」
「え。やだ」
すごくいや。
なにそれ。
そんな暇あったら道路を直せ。
「そうだっ!どうせ、馬小屋未満な仮設だろ?」
「だよねぇ。土砂崩れに巻き込まれて儚くなる未来しか見えない。あそこ道が崩落したような地盤の悪い場所だもん」
カイと二人で眉間に縦皺を寄せて頸を振る。
「あと、わたしは絶海の孤島に二人きりとかイヤ。距離が近すぎてお互いのアラが目障りになって殺し合いに発展しそうだよ?」
「テオは乙女感がたりねぇ」
「ふつう、君しか見えないとか花畑のなかを漂うような多幸感に包まれているもんだろ」
殺風景なおっさんに言われるのはなんか腹立つ。フレッドとロブを睨む。
提示された条件がまた絶妙で
都から技師を呼ぶには足りないけど、砦の町で働いている人に比べればわりと良い。
っていうギリギリをついていて、現地で文句を言うと角が立つ。
そんな工夫をする商工会はもうすこし御領主様に嘆願したほうが建設的だと思う。
無理に不具合をカバーするから、「なんとかなってんだろ?いいじゃん、それで」って判断されて技師を呼んで貰えない。
いつかこの無理をするランニングコストが技師招聘代を越えるから、はやめに見切ったほうがいい。
御領主様、道の整備はいつなさるんだろう。




