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【本編完結】小学生で迷子になっている   作者: へますぽん
地方都市イルワにて 八歳〜

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出発に備えて

携行食糧をどのくらい持っていくのか知りたくて

「どこに何日くらい行きますか?」

「まだ行き先と日程は決まらない。来週の中頃から依頼票がでてくるだろ。

月末締めの契約なのに通常の便で送ると間に合わないものを急送する依頼を狙っている」


「急ぎの仕事に足手まといを同伴するって正気ですか?」

「二人で行けば持てる量も増えるし。大丈夫。依頼を受けたら直ちに出発するから荷物まとめてね」

「携行食はどのくらい持って行きますか?」

「4日分あれば途中買い足せる」

「買い物の時間が惜しくないですか?」

「そこまでギリギリの依頼は今回はやらない」

足かせになる子連れだもんね。


心配になったので、翌日洗濯物を干してからオーバンさんの店を訪れ

ランドセルに10日分堅いパンとかドライフルーツ、干し肉、干し芋、ジャム、飴、乾物をごっそりしまう。


洗濯は6回、回せるようになったので3日かかったけど塚を完全攻略できた。

「無記名でお預かりしたので、誰の衣類なのか分かりません。みんなで一番良いパンツを奪い合うことになるんですか?」

夕刻、全員を呼び集めた理由はこれだ。

状態のよいモノを自分のものだと言って持ち去られると喧嘩になりそう。

脱ぐときに名前書いておけよ。

「間違えてお友達の服を持って帰ったら、自分の責任でちゃんと返してください」

順番にこれは誰のか尋ねながら1点ずつ返却。時間がかかる。

「これはオレのシャツだろう?」

「は?このタグがついてるのは俺のだし」

案の定自分の服がどれか分かっていない。揉めた服は保留して、判るものだけ先に返却。

残った衣類と持ち主で相談してくれ。


「テオちゃん。おっちゃんのとこにおいで。ご褒美の飴をやろう」

パンツを挟んで所有権を語り合うディックさんとロブさんをおいて、カイさんがわたしを呼ぶ。


要る物、あった方が良い物、買出しのコツ、野営の注意、初めての旅について話をしてくれた。



フレッドさんは洗い上がった衣類をきっちりパッキングして荷物にしまった。

「明日から依頼が出始めると思う。明日出るものは遠くだから、条件がごく良くない限り受けるつもりはないけど見るだけは」


わたしは食器とかベッド以外の私物は一切合切収納済みだ!いつでも家出可能!

もし出先で不測の事態でなにか露見したら、即座に行方を眩ますくらいの決意だ。


ギルドカードをうれしそうに首から下げてランドセル背負って、フレッドさんと手をつないでギルドを訪れる。

「仲良し親子の散歩コースじゃねえぞ」

戸をくぐるなり、ヤジが飛んでケラケラ笑う声がする。

「こんな大きい子がいる年じゃねえから!」

「え?」

「テオ?おまえ、おれを幾つだと思っているんだ?」

「30歳」

すこし若く言っておく

カウンターの中の人が顔を伏せて肩をふるわせている。

「はっ?」

「子供相手にキレるなよぉ!」

笑い声が向こうから突っ込みを入れる。

どうやら、だいぶ若いらしい。

「…26くらい?」

「22だ!!」

「へ?」

まさか。

「意外なくらい貫禄ありますねー」

誤魔化そう。誤魔化されてくれ。

プリプリしはじめたので、そっと依頼票の掲示板へ逃げる。言われていたような急送の依頼を探す。

「フレッドさん。これのことですか?」

4日で書面を届けて欲しい。

「これは受けない」

他はもう無かった。


あれが残っていたのは、途中の森に賊が頻繁に出るからだ。いつもあのルートは残っているらしい。

安全に越えるには十分な人数と護衛を整えて行くそうだ。

それを見せたかったんだろう。



お付き合いありがとうございます

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