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【本編完結】小学生で迷子になっている   作者: へますぽん
番外編

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209/230

救急搬送

日に灼けた顔から血の気がひいてて、さっきまでの汗でべとついているのに、冷たい。

灼けた肌が土気色になっているので、どこをぶつけたのか不安でたまらない。

魔法が使えるのなら、どうして怪我が癒やせないのか。

落ちた拍子に辺りにぶちまけられて土にまみれたノルの大荷物の残骸を

泥ごとランドセルに拾っては放り込む。分別もしないし土を払いもしないで目につくものを全部手当たり次第に回収。

彼の借金返済のたねだから。

このせいで転げ落ちたんだから。


苛立ちながら、背の荷物(ランドセル)からターバンや腰紐、ベルトを片っ端からひっぱりだして

ノルを自分の胴にくくりつける。


ブケパロスをつかって坑道で怪我人を搬出したときは十数メートル、しかも天井と土砂の間の低空。

おじさんとブケパロスと両方にまとめてしがみついて数秒で通過する距離でしかなかった。

わたしは小さかったからそれでも落とす危険があったけれど、たまたま無事だった。


今回搬送しようとしている距離ははもっとあるし、ノルはぐんにゃりしてわたしにしがみつくことはできなそう。

わたしの腕だけで支えるのが心配なので何カ所もノルをわたしにくくりつけている。

脚も、腰も、腹も。

正気に戻ったら笑ってくれ。

きっとマヌケな二人羽織だろう?

どうか、笑ってくれ。

わらいごとになってくれ。


見た目の損傷がなくても

よびかけに応答していても

3日後、儚くなった同業者なんて珍しくない。


表面じゃなく臓器にダメージがあったら。


見た目怪我や自覚症状がなくて

臓器や血管が挫滅していたら、

傍目には唐突に亡くなったとしか見えない。


熱中症で祖母が倒れたときも、脳梗塞なのっっ??って過剰に心配した。

知識がないからね。

『意識が朦朧』として『崩れ落ちる』『年寄り』って、熱中症なのか、脳梗塞なのか状態が似ててわからん。聞く話だとどちらも同じだ。


どうかもの知らずのわたしが心配のしすぎでありますように。


痛いの痛いの飛んで行け。


体温の低いノルを縛り付けた上で抱え込んで、ブケパロスに跨がって

奥歯を喰い締めてじたばたと漕ぐ。

白鳥は水面下で脚を動かすから優美だ。

わたしは下からみたら丸出しの脚がガシャガシャしてさぞかし不格好であろう。

しかも焦って血相を変えているんだから、滑稽だ。


どうか。

どうか、滑稽だと笑い事にしてくれ。

末代まで笑っていいから。


手汗でぬるつく手でブケパロスの柄を握りしめて、

森の上を、尾根も谷もまたいで一直線に砦の町に向かってとびあがる。


預けたダイニングテーブルが

「紛失しました。てへっ」

でも預かったときの引っ越し係はおれじゃないし。

っていう引っ越しアルアルで憔悴。


代替のテーブルがようやく届きました。


今日の午前便で待ちかねた冷蔵庫も到来します。

梅雨明けしても冷蔵庫無しで暮らすってなかなか不便で

クーラーボックスもすぐ氷溶けちゃうからアテにならないわーって言いたい。

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