エサを水中でふやかすばかりな気がするんだよ
「ノルの村にはどんな魚がいたの?」
アリゲーターガーみたいな歯の鋭いヤツとか
パロットフィッシュみたいなサンゴをスナック菓子のようにかじる丈夫な嘴のヤツとか
ウツボみたいなかわいこちゃんとか?
このあいだの釣りではせいぜい両手に載る程度大きさの牙や棘のない
味がいいだけの魚しかいなかった。
小さい頃フレッドと行ったおとり釣りとはまったく違う優雅なものだ。
「ノルは釣り好き?」
返事がないのでさらに重ねて問うた。
「水辺は危険だから子どもは近寄らないかな。水中に引き込まれる」
ワニでもでるんだろうか?
カッパ?
セイレーンも水辺の魔物だな。
沼にでる白い女の幽霊とか。
底なし沼って水たまりに似てるらしいから、それか?
「あー。わたしも何度か池に頭から落ちたことある。危ないよね」
ノルが顔を強ばらせる横で、フレッドが噴き出す。
「おぉ。それでテオ泳げるようになったんだな。投げ込んでからこいつ泳げたっけ?ってあのときちょっと焦ったんだよ」
焦ったのは、ちょっとだけか?
あのときの怒りが蘇る。
「フレッドったら酷すぎる。幼い子どもになんてことするんだか。しかもあの湖の魚はデカすぎだし!!」
フレッドもカイも現地では定番悪戯なのでその件についてあまり反省の色がない。
キャンキャン叫ぶ飼い主を見守る雄ネコみたいなカオを向けてくる。
「今回の釣りであんなの出なくてほんとうに良かった!またエサに使われたら今度こそ暴れるからっ」
「んんー?そんなのがいたら寧ろ人気殺到しちゃうだろ。あそこはもう獲り尽くした場所だからな」
かつては立派な個体がいたらしい。わたし達がとったパーチみたいなの。
話題や興味のハンティングで狩り尽くされたらしい。
そりゃ、クルーザーで大きなカジキを釣り上げた写真UPするタレントとか居たから
こんなリゾート地でも大物を獲ったら名前がうれるだろう。
幻の巨大魚などと銘打って釣り大会などすれば集客になったかもしれないし。
「じゃあ、ワニカメみたいな凶悪生物もいない?」
「居たら討伐して名を上げたいヤツがシャシャリでるからな。そんで獲物を野次馬の見世物にして稼ぐだろ」
悪趣味だが安全安心につながってゆく不思議さよ。
楽園だったなー。
ちんたらと商隊の最後尾でなごりを惜しむ。
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毎日マメやシャンプーや輪ゴムを探してばかりで厭になる気持ちを支えてもらっています。
かたづけたってもうじき戻っちゃうんでしょ?という言葉で萎える気持ち。
仮住まいの整頓は放棄したし。
修繕の終わった家に帰ったところで、また収納しなくちゃいけないし。
ふて寝がとまらない。




