葛藤
ノルと噴水の縁に並んでかけている。
後ろには水たまり。
わたしとノルの間には週刊誌一冊ほどの幅で石材が見えている。
気の利かないおばさんなら、ちょっと座らせてもらっていいかしら?とセルフイメージでは手のひらサイズの大きなお尻をねじ込んできそうなくらいのちょっとした隙間。
前を向いたまま、返事に躊躇している。
いきなり、所帯を。というのは賛同できないだろう。
女子高の古典教師も、よくよく相手を見定めなさい。
ダボハゼみたいにいきなり食らいついてはいけない。って言っていた。
とりわけ女子校だと解禁になった途端、勢いがついて目の前の動くものに飛びつく。とまで言われた。うちの学校、どんな女子が通ってんだよ?
だからって教師の言いつけを守って冷静に推移を見守っていたら、ひょっとしてこのまま見逃し三振じゃない?ってところだったんだけどさ。
「…ある程度おつきあいを続けて価値観が共有できる方を伴侶にしたいと」
「ユーリカ、ご令嬢みたいなことをいう」
うすく、低い掠れる声で笑いをこぼす。
ロミオとジュリエットは、たちまち恋に落ちて、落命していった。
彼らは若かったからブーストがかけられたんだと思う。
でも、義務教育の年齢であんなに情熱が傾けられるかっていうと、国民性の違いなのか時代性なのか。畑のトウキビを盗んだ話でもりあがっていたろくでもない同級生や炭酸飲料を一気に飲んで鼻から噴き出す友達と育ったわたしには適性がないだろう。
せっかく、手を伸ばせば転がり込んできそうな好機なのに。
夢の中でも自制して、推しを眼前にしても抱きつけないわたしらしい。
起きてから、夢って判っているんだからハグでもキスでも遠慮なくしておけばっ!と歯ぎしりするんだから、ここは魔の手を伸ばすべきじゃないかしら?
恩師に背いて、食いついちゃおうか。
201話目です
存外長いことになりました。
評価、ブックマーク、いいねをありがとうございます。




