告白
芝居のかきわりが入れ替えられるように
日暮と共に街の様子はガラリと転換される。
赤や橙色のランタンに火が入ると、俄かに官能的な「元の町」の様相を取り戻す。
昼間の健やかなリゾート地じゃなくて、カジノと歓楽の剥き出しの欲望の街並み。
半裸というかほぼ全裸な姐さんが笑みを浮かべて手招きしている。
甲高い嬌声とけたたましい笑い声と酔漢のおらぶ声。
メインストリートのどこからわきだして来たのか、軒並みセクシー全開だ。
このお呼びじゃない感じ。
通りを歩いているわたしもノルも猫より相手にされていない。
せいぜい店先の下男が
「おぅ。ませてるなぁ。こども割で飲んでいくか?」
とからかってきたくらいだ。
背伸びして夜の街探索に来たスケベキッズ呼ばわりに、慌てて通りの反対端に避けると
「ぇぇえ?おねえさんのこと指名?お年頃ねぇー?」
薄衣と半径2mまでたっぷり香る甘い香水をまとったおんなの高い声に見舞われた。
立ち寄る店がないどころか、歩く通りすらないのか。
水の止まった噴水の縁に並んで掛ける。
尻が冷えるので結界を張り、足元をわずかに加温する。
ランタンの灯があってもなお星が見える。高層建築物がないから空が低く、見通せる。
ぼんやりとこんなに星が見えたら、どうやってオリオン座とか枠になる星を選んだのだろう?と不思議になってしまう。
つまり2人並んでむっつりと黙って居る。
「…ノル。朝になったらまた移動するから、早く休んだほうがいいよ?」
もう戻って眠りたいですと訴えてみる。仕事もあるしさ。
「…明日からはもうあまり話す時間なくなるから」
いや?道中馬を引きながらしゃべっていたじゃん。
「…ゴードンがね、邪魔が入らないうちに話をして来いって言ってくれて」
「ふん?」
「ユーリカもこの仕事長いっていうから、分かると思うけど
配偶者を得るのが難しい」
「うちのロブたちをディスってる?」
「そうじゃなくて。自分の話をしたい」
ノルは田舎を出てからの願いがある。
定住したい。それから家族を持ちたい。そのための仕事を得たい。
そしてわたしを紹介されて、所帯を持つ相手と決めたらしい。
「ユーリカは仕事も真面目だし、しっかりした経済観念を持っているし、家事スキルも高い。話も合う。長く付き合ってゆきたい」
えぇぇ。わたしこんなに初々しいのに甘酸っぱいところなしかよ。
オカン部分を褒められると中のヒトを肯定されているようで嬉しいけど。
「明日になったらきっと二人で話す機会はないから、朝が来る前に、気持ちを伝えたかった」
話が合うって?わたしがテキトーにふんふん相槌をうつことか?
連日のイヤゲものを否定しないことか?
ノルが可愛いのでスルーしていることを肯定だと思っているんだろうか。
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