妄想ばかり
どうやって手をつないだらいいのか。
オリバーに手を伸ばすことが憚られる。
どのくらいまで接近してよいのか。
意識するとまったくもってぎこちない。
悪いことをしている自覚がある。
年端も行かない好青年を弄ぶだなんてっっ!!
うぎゃぁぁ。
悪い女みたいっ。ひひっ。ふー。
ちがう。
呼吸法じゃない。
近寄っていいのか。
距離を保つべきなのか。
好奇心に駆られている。
でも憚られる。
なついてしまえば、手放すのが辛い。
たとえていうなら預かりものの他家の愛犬だ。
でも散歩とかブラッシングとかよしよししたい。
そういう葛藤だ。
あと数日で砦の町に帰るんだから、それまでベタベタしてもいいんじゃないか。
腕とか組んでみたり?
ただ、なにぶん狭いコミュニティだから、後々まで醜聞が残る。
どのくらいまで、くっついていいんだろう。
っていうか、どうやってきっかけを作ってくっついていったらいいんだ?
終りの時間は定まっている。その刻限は迫ってくる。
もじもじと寝返りをうっては灯りを落とした部屋の天井を見あげる。
興奮で眠れないのだ。
慣れないことすると独り反省会とかしちゃうよね。
いろいろいたらない自分を見つめて苦しい。
不用意な発言などを思い出すといよいよ寝返りが激しくなる。
中庭に面した窓がコツンと鳴る。
咄嗟に息を殺し、静かに身を起こしてナイフを握り警戒する。
再びコツンと音を立てるので、音を立てないように窓外がうかがえる影に身を寄せた。
月明かりにぼんやりと浮かぶ人影が中庭に佇んでいる。
身をかがめて、足元からなにかを拾い上げ、また窓がコツンと音を立てた。
窓が割れるので、やめるべきだろう。
襲撃や破壊に来たようではない雰囲気なので、窓を開けた。
「…ユーリカっ」
よく部屋が分かったな。
窓越しに声をかけると夜半に騒がしいので、
夜着のままローブを引っかけて階下へ降りる。
「ごめんね。どうしても会いたくて」
「ここで話をしていると寝ている人に迷惑なので、ちょっと出ますか?」
声をおとして告げる。
夜は声が響くから、立ち話はできない。
深夜営業の店はわたし達の入れない場所だ。
だから、寝巻きのままだが散歩するしかない。
寝起きのままの頭はフードで隠しているので、実に不審なてるてる坊主。
並んで歩こうとするけれど、歩幅が合わないのか
ちょっと前に出てしまったり、すこし遅れたり
肩がぶつかりかけたり、大きく離れたり。
歩調もお互いわからないのだ。
不意にその手を取られて、並んでいるオリバーを見あげる。
「手、暖かいね」
寝てたからな。
「ノルの手はひんやりしてるよ」
同じ歩幅でもくもくと歩きながら、話は弾まない。




