初彼
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滑稽なほどに初彼に浮かれる。
待ち合わせたランチのテーブルで小さなガラス細工を差しだすオリバー。
本当にカワイイ。
細工も彼も。
駆け出しだと紹介されたら、財布の中身はお察しだ。
これが彼の精一杯なのが分かるので
無駄遣いしなくていいんだけどな。
って言いそうなのを歯を食いしばって飲み込む。
彼の見栄を慮れ。
「ありがとう。嬉しい」
そう言って受けとる。壊れものを抱えて山道を戻るのは普通に困るんだ。なんて教えてあげない。
次の彼女に同じことやればいい。
そして痛烈に振られちゃえ。
近日中に振られちゃうだろうわたしは意地悪だ。
わたしの方が稼ぎが良い。だって長く仕事してるんだもん。
一応、自称行商人なんだけど、今回についてはほぼ同業。
貧弱な体躯でも、先輩なの。
それを了承してくれるだろうか?
オレより背が高い子ってヤダとか稼ぎが劣るのがイヤとかを正直に言わないで拗らせる系って
よく聞く話だ。
初デートが始まる瞬間から既に振られる覚悟で挑んでいるわたし。
まさにポンコツ。
俯くわたしを案じるようにオリバーがそっと声をかける。
「テオ。どうかしたの?ひょっとして食べられない食品がここにあるの?」
アレルギーも宗教的制約もないので首を振る。
よくそれに気がまわったな。
わたし達はお互いほぼ何も知らない。
「テオ。ぼくのことをノルって呼んでほしいんだ。それからテオの名前を知りたい」
はなだ色の目のきわを赤くしてそう言うオリバーのなんて愛らしいことか。
内臓か脳髄かどこかをギュッと絞られるような苦しさだ。
って悶える前に名前すら伝えていないのか、わたし。
「…妹尾 有理佳」
「ユーリカ」
うん。それが正解。
リリィじゃないの。本当は。
ガッツポーズでじいさんが叫んだの。
でもね。女子だし、リリィってことにしたかったのよ。
まあいいや。もう。
大人だし。
それで。
「ユーリカ」
視線はテーブルのグラスに行ったまま、噛みしめるように呟くオリバー こと ノル。
「はい。ノル。なんでしょう」
パッと顔を上げて、目があった瞬間にたちまち視線をグラスに戻した。
日に焼けているのに、赤面しているのがわかりやすい。
イカより早く色変わりする。
「…ユーリカ。って呼びたかっただけ」
あぁ。アレか。
おかあさん。
あのね。
うふふ。
ってエンドレスで声掛けて来る園児さん。
かわいいな。わたしの初彼。




