動顛して逆上
「ふははは。今日はフレッドさんもいないし悪の限りを尽くすぜ」
寝床の中で足をバタバタさせながら高笑い。
昼前に目覚める。
まず、寝間着を着替えない。ご飯じゃなくて豆菓子やあめ玉、プレッツェルなど御菓子を一日中食べる。本当はビールも飲みたいけど身体が出来てないので自重。
朝寝と二度寝したが昼寝もする。片付けも飽きた!
カウチの上で怠惰を決め込む。けだるい午後の日差しが退廃的なのよ。
「うふふふ。アンニュイー」
小さいのでカウチの上で寝返りも出来る。
寝返り成功でケラケラ笑う。
「おお。ごきげんだな」
音もなく侵入するな。胸が痛くなるほど心臓が!心臓が止まりそうになった。
「っ!!なんで!なんで!ただいまって言わない!!」
「抜き打ち検査?留守中の使用人の様子を見てみようって皆が言うから」
もうがっかりが止まらない。せっかく毎日キレイにしていたのに。真面目に整えていたのに。
今日に限って洗濯物は溜まっているし、テーブルの上は菓子の食べかけ、床は菓子クズだらけでわたしはこの時間から寝間着で寝癖。
泣きが入る。
「…ひどい」
ツルになって飛んで行くしかないんだろうか。
「…お世話になりました」
溜まっていた衣類をまとめてランドセルにぶち込み、テーブルの上の食べかけをくずかごにぶち込み、ざっと床を箒で掃いて
シーツで屋根裏のいくらもない私物を包むとランドセルを担ぎブケパロスを握った。
頭を下げて戸を開けた。背後からフレッドさんの声が呼び止める。
「待て。テオ。おまえ寝間着で何処へ行くつもりだ。おまえは今日休日だろう?休んでるところを咎めたわけじゃない。からかいすぎた」
外には塞ぐように大柄な旅装の四人が立っていた。
軽く頭を下げて、見なかったと自分に言い聞かせる。戸を閉めて、納戸の窓から庭に飛び出した。
一番近い友達の家はオネショの家なので、ダッシュで駆け込む。庭からオネショの家に入る
「家出してきた。ちょっと着替えさせて」
「なんで寝間着なんだよ」
「それを話すから、先にちょっとトイレ借りるね」
ものすごい速さで身繕いを済ませて戻る。
「フレッドさんの留守中は休暇だって言ったから、明日帰るまでに片付けようと思って寝間着でゴロゴロしてた。
そしたら予定より早く帰宅して抜き打ちでこのだらけた姿を暴かれた。ムカつく」
こら。爆笑して声も出ないってどういうことだ。
「おい。笑うな。暗くなるまで匿ってくれ。夜になったら移動する」
「いいじゃん。今日休みなんだろ?ウチに居なよ。遊ぼう」
おばさんが濡れたタオル持ってきて、顔を拭いてくれた。
オネショが水のコップを渡してくる。
意外とイイやつだ。オネショ治るよう祈ってやろう。
おばさんが夕飯をご馳走してくれた。
オネショは泊まって行けと言ったけど、そこは固辞する。いや、布団が気になったわけじゃない。
「気持ちが落ち着きました。ありがとうございます。これで帰ります」
そういってオネショの家をでて路地に入る。夕闇に紛れてブケパロスで城壁突破して駄猫の畑に向かう所存である。
「おい。家はこっちじゃねえぞ」
そういってランドセルを捕らえられる。身体をひねってランドセルを外す。
「待て。テオ。こっちへ来い。土産の菓子もある」
フレッドさんはしゃがんでわたしを低い声で囁くように呼ぶ。
「ほら。帰ろう。俺が悪かった」
ちっちっちっ
ってそれは雀を呼ぶときだろう。
懐から飴をだすな。
餌付けか。
「飴をくれる人について行かないよう申しつかっております」
「詳細については家で聞こう。出て行くなら賃金の精算もしよう。一旦家にいこう?」
日が暮れて、街灯のない街は暗い。窓からランプの明かりももれるけど、今日の月はまだ昇っていないから、星が綺麗に見えるくらい暗い。
影のようなフレッドさんが左手を差し伸べる。右肩にさっき捕らえたランドセルを引っかけている。
隣を歩くと思っていたより大柄だと思う。わたしと手をつなぐと肘が上がる。まるですこしぶら下がるようだ。
お付き合いありがとうございます




