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悪魔と契約した男の娘  作者: なすみ
2/6

2話:ちやほやされまくるじゃん

 それからは本当に災難続きだった。まず、俺の埃を被っていた制服は、当たり前といえば当たり前だが女子用の制服だし、父親はまるで初めから、俺が女であったかのように振る舞ってくるもんだから、スカートを履きながらリビングに出たらめちゃくちゃ怒られた。それから、顔を洗って、悪魔の言う通りに髪の毛に櫛を通して、朝ごはんを食べて、歯を磨いて、同じく埃を被っていた教科書を鞄に詰め込んで家を出るころには、8時半を過ぎるころだった。

「学校にはぼくが、今日から登校するって伝えてるから、適当に話を合わせてたらいいと思うよ」

 学校までの道を、急ぎ気味で歩きながら、悪魔は隣で話しかけてくる。だが、他の人、通行人などには悪魔の姿は見えていないため、俺はあえて返事をしない。が、心の中では思った。

 いや、だからオカンかよ。

 めっちゃ世話焼くじゃん。まあ、自分の命も俺に掛かっていると思えば、不自然ではないかもしれないけど、別に髪の毛の梳かし方とか、どうでもいいじゃん。

「何言ってんの、そういう小さいところから、女の子らしくしないと」

 だからオカンかよ。何度も言う様だけど。

 今のところ、便利だと思えたのは、悪魔に対して、こちらは心の中で何かを呟くだけで通じること、それくらいだ。どうやら、俺が思っている以上に、美少女というのは大変らしい。特に、このスカート。

 一年の初めの頃を思い出すと、クラスの女子たちは何食わぬ顔で生活していたが、こんなにも防御力の薄い衣類だとは、思いもしなかった。ただの布だよこれ。スカートというより、感覚的にはパンツが見えないようにする布。それこそ、ちょっと風が吹いたり、ちょっと小走りになるだけでも不安で不安で仕方がない。

 正直なところ、心は未だ男なので、パンツの一枚や二枚、見られたところで恥ずかしくはないと思っていたが、なんだろう、スカートを履いた瞬間、スカートがめくれてパンツが見えるという、その出来事自体がめちゃくちゃ恥ずかしくなる。

 不思議な衣類、それがスカート。

 学校の活発な性格の女子たちは、スカートを短くしていたのを思い出したが、本当に気が知れない。死と隣り合わせの生活だろ、あれ。

 そんなしょうもないことを考えながら、スカートがめくりあがらない最低限の速度で歩いていると、校門が見えた。どうやら遅刻は免れたらしい。時間的にはそれなりにぎりぎりだったが、間一髪、というところだろうか。

 あとはこのまま、教室に入るだけ。だけだが、それがこの先の生活でいくつも訪れる障害、その一つ目だった。

 俺は校門をくぐり、下駄箱に手をかけたところで、ふと帰りたくなる。

 隣では、悪魔が怪訝そうにこちらを見ている。

「どうしたの?」

「い、いや、なんか、久しぶりの学校だから、緊張して……」

「え、別に学校でいじめられたり、誰かと仲が悪くなったり、そういうわけじゃないんでしょ? 何をそんな緊張するんだよ」

 本当に分からないといった様子で、悪魔は小首を傾げる。やはり、人間の感性は悪魔には通用しないらしい。

「いや、でも、しばらく行ってなかった学校に、半年ぶりの登校だぞ。なんか……もし、俺の席がなかったらどうしよう」

「いや、その男っぽい喋り方に気を付けていれば、あとは黙っててもその顔だし、悪いようにはならないと思うけど」

 気軽に言ってくれる、この悪魔は。もちろん、俺だって自分の可愛さにはちゃんと自信が持ててきている。自分でこんなことを言うのはあれだけど、確かにめちゃくちゃかわいい。こりゃあ男女共に人気が出るのは間違いない。何せ、悪魔の産物だからな。けど、俺はそこで、ふと、仲の良かった幼馴染のことを考えてしまう。

 上履きを取り出しながら、幼馴染は今どうしてるだろう。そんなことを考えれば考えるほど、上履きを履く手は、まるで鉛を詰められたように重く感じる。だが、死ぬのも嫌だ。

 おそらくは自分の生死がかかっているために心配している悪魔を横目に、俺は何とか意を決して、上履きに足を通すと、廊下を歩いた。緊張で、鞄を握る手に汗が滲む。呼吸が早く、浅くなる。頭の中では、教室に入るときの第一声はどうしようか。クラスに今更、馴染めるだろうか。そんなことばかりを考えてしまう。

 どうやら、外見はいじれても、この内面は、手つかずらしい。

 そうして、とうとう教室の前まで来てしまった。が、扉に手をかける直前、やっぱり帰りたいという気持ちが、身体をついには止めてしまう。俺だって、別に学校に行きたくないわけじゃない。ただ、それ以上に、みんなとこの先、気まずくなるのが怖かったり、俺が入ることで、陰で何かを言われたりするのが怖かったりする。そうした気持ちは、学校を一日休んだころから、今に至るまで、ずっと積もり積もっていた。勿論、そんな気持ちは、休んで一週間くらいなら、少しの勇気で教室に戻れていただろう。だが、それも一か月、二か月と月日を重ねていくにつれ、どんどんと、俺の足を教室から遠ざけていた。

 行きたくない。

 俺は、無意味と知りながら、悪魔に助けを求めるようにして、視線を向けた。

 目が合った悪魔は、何かを言おうと、口を開く。

 その瞬間。

「うぉ、びっくりしたあ……って、え、かおり?!」

 教室の扉が急に開いたかと思うと、中から急いだ様子で出てきた男と鉢合わせになった。その男は、昔からよく見た顔。俺の幼馴染の、京助だった。

 びっくりしたのはこっちである。いきなり開けんな。昔だったら、そんな軽口も叩けていただろうが、こっちは教室に入る心構えすらできていない。そんな状況で、いきなり、悩みの種の一つである京助と、思わぬ形で邂逅を果たしてしまったのだ。あまりに咄嗟のことで、言葉に詰まり、何か話しかけようか、それともまずは教室に入るべきか。そんなことを考えている間に、京助はすぐさまその場を走り去ってしまった。

「ご、ごめん、先にトイレ行かせて!」

「……うん」

 空気読めよアホ。悩んでた時間を返せ。

 だが、そんな京助らしい言葉を残してトイレへと走り去っていく姿を見て、クラスの中からは、笑い声と、それを苦笑いで諫める先生の声が響いていた。そしてすぐ、先生は俺の姿を見ると、驚いてはいたが、すぐに手招きをした。

「おお、かおりじゃないか。久しぶりだなあ。丁度出席を取ってたんだ。……その途中で、トイレに行ったバカがいたが、気にするな。入れ入れ」

「は、はいっ……」

 言っておくが、緊張する気持ちも、クラスメイトから向けられる好奇の視線も、俺には相変わらず、苦痛でしかなかった。だが、それでもあいつとああして、偶然出くわすことがなければ、俺はきっと、もっと教室に入りづらい思いをしていただろう。

 俺は心の中で、あいつに感謝をして、先生の元へ歩み寄った。

それから自己紹介を改めて済ませ、先生から事情の説明があったとは思うのだが、正直、クラスの反応が気になって、ほとんどその記憶はない。

 正直、覚悟はしていた。それこそ、クラスメイトから物珍しい目を向けられるようなことも、誰からも話しかけられることもなく、また俺から話しかけるようなこともなく、少なくとも学校でしばらくは変な奴としてのポジションになることを、俺なりに腹を括ってはいたつもりだった。

 が。

「えー、めっちゃ髪の毛奇麗!」

「やば、化粧なにつかってんのー?」

「てか肌しろー! いいなー!」

 憶えている限りでは、というか、聞き取れたのはこれくらい。本当に、あ、これが矢継ぎ早というやつか。と実感するくらい、クラスの女子の大群に席を囲まれて過ごした、朝礼後の10分休みは、思っていた覚悟の斜め上を言っていた。

 おかしい。覚悟してた感じじゃない。いや、少なくとも、好奇の目に晒されるよりは断然、いいんだけど、でもなんか、調子が狂う。正直、照れる。

 いくら悪魔に貰った体とはいえ、こうしてクラスの女子に囲まれて、ちやほやされる機会なんて、これまでの人生で本当に一度としてなかったことだから、素直に反応に困る。その為、俺は絵にかいたようなコミュ障を発揮し、え、とか、あっ、とか、それくらいしか喋れていなかったように思う。

 そして、あの後少ししてトイレから戻ってきた京助はというと、女子の海に囲まれていた俺の元へ何とか行こうとしたが、すぐにクラスの男子に囲まれ、詰問されていた。

 あの子とどういう関係なんだ、とか、幼馴染なのか、とか、俺にも紹介してくれ、とか、主にそういう話題だったように思う。何せ周りの女子の声でかき消されて、ほとんどが聞き取れなかった。

 そして、俺と京助の周りに出来上がったグループは、そのまま授業が始まるまで続き、そして授業が終わるたびに続いた。放課後になるころには、みんな部活などで散り散りになって、ようやく解放されていたが、俺は久しぶりに人と話すだけでも緊張するのに、いきなりあの人数の異性に囲まれ、精神的にかなり疲弊していた。まあ、今は異性ではなく、彼女たちは同性なのだが。……なんだか変な感じだ。今朝はあまりの突拍子のなさに、すっかり考えていなかったが、冷静になってみると、なんということだ。まさか本当に、自分が朝起きて女になるだなんて、改めて信じがたい出来事というか、これこそ夢みたいだというか。

 だが、何度頬をつねってみても、これこそまぎれもない現実だった。というか、正直夢だったらどれほどよかったか。実際に女になってみて、ちやほやされて、全く嬉しくないといえば噓になるが、それ以上に人とのコミュニケーションの取り方がわからない。人間、半年引きこもるだけでこうも口が利けなくなるのだろうか。

 とりあえず、明日はもう少し、みんなと話せるようになろう。折角、こんな俺に話しかけてきてくれるんだ。柄にもなく、そう思って机に俯いたところで、上から声が降ってきた。勿論、あの悪魔ではない。あいつは俺が揉みくちゃにされているのを、教室の外の電柱から眺めていた。後でしばく。

「よ、久しぶり。なんか、久しぶりの登校なのに大変だったな」

 顔を上げると、そこには半年ぶりの幼馴染、京助が立っていた。正確には、今朝一度会ってはいるが、それ以来、言葉を交わせていなかった。そして、俺だって、小さいころからの幼馴染であるこいつには、いくら半年ぶりとはいえ、それなりに口が利けた。今朝は流石に驚いて、言葉が出なかっただけだ。

「ああ、まさかあんな風に女子ども――」

 言いかけて、思わず口を塞ぐ。

 忘れていた。俺は女だった。あまり京助に対して、気を使い過ぎた喋り方というのも、それはそれで不自然かもしれないが、流石にこの見た目で女子どもはまずい。なんなら、自分のことを、俺というのもよろしくない。

「女子たちに囲まれるなんて、思ってなかった、よ」

 慣れねえ。何この喋り方。え、女子って普段、どんな喋り方してんの。ちょっとでも気を抜くと、すぐに男っぽい喋り方になってしまう。

 あと、スカートを履いているから自重してるだけで、ほんとは足を開いて座りたい。本当に落ち着かない。

 そうしてそわそわとする俺の気も知らず、京助は何食わぬ顔で前の席の椅子を引っ張ってきて、俺の机の反対側に座った。

「でもまあ、あんな風に女の子たちに囲まれて、良かったんじゃね? お前、この様子ならすぐに友達も出来そうじゃん」

「んー、だといいんだけど……」

 まともに話して、改めて思う。本当に自分の声が、女の子の声になっている。いや、当たり前といえば当たり前だが。

「でも、久しぶりに制服着たから、なんか変な感じ。さっさと脱ぎたい」

「ああ、確かに、俺も家帰ったらすぐ脱いでるわ」

 言って、暑そうにシャツのボタンを何個か外して、パタパタと仰ぎ始める。それを見て、俺も真似をしてシャツのボタンを2、3個外した。どうやら男女の服で、ボタンの前後ろが反対になっているらしく、ちょっと外しにくさはあったが、しかし暑すぎる。6月に差し掛かって、急に蒸し暑くなった。ましてや、普段は冷房の効いた部屋でゲーム三昧だったから、余計だろう。

 真似をしてパタパタと仰ぎながら、帰り支度をしようとしたところで、ふと、京助が顔を不自然に反らしていることに気が付いた。咄嗟に、電柱の上でこちらを面白そうに見ていた悪魔に気付いたのかと、心底焦ったが、どうやらそうではないらしい。

 なんだこいつ。帰り支度しないのかよ。

「……なんで急にそっぽ向くんだよ。帰ろうぜ」

 結局口調が元に戻ってるなぁ。なんて考えながら話しかけるが、京助は依然としてこちらを見ようとしない。

「あ、いや、そうだな……だ、だけど、あんまり、女の子がそういう格好をするもんじゃないんじゃ、ないかな……」

 何か言い淀むようにして、もごもごと口をじれったく動かす京助。こいつにしてはえらく珍しい。いったい何のことだと思い、俺は自分の身体に視線を落とす。果たして、ボタンを開けた間から、思いっきり谷間が見えていた。

 弁解しておこう。別に恥ずかしくない。当たり前だが、身体こそ女でも、中身はただの男だ。一応、最低限度のマナーとして、コンビニで学校へ来る間に、適当なブラジャー? みたいなものを買って、つけてはいるけど、それだって京助に見られたところで、別に恥ずかしさは感じなかった。

 むしろ、その京助の方が明らかに恥ずかしそうに顔を赤くし、視線をこちらへ向けようとしていなかったのは、これまでずっと京助に劣等感を抱いていた俺としては、少し。ほんの少しだけ、溜飲が下がる思いだ。

「ああ、悪い悪い、別に京助なら、これくらい気にしないかと思ってさ」

「いや、気にするに決まってるだろ。俺だって男だぞ」

 胸のボタンを締めなおすと、京助は安堵のため息を吐いた。いや、俺だって男だよ。そう言いかけながら、教室を後にする。

 廊下に出ると、他の生徒たちは部活だったり、あるいは友達同士で話していたり、それぞれ思い思いの放課後を過ごしていた。わが校はあまり部活に精力的な学校ではなく、俺はもちろん、京助も帰宅部だった。まあ、俺の家みたく、京助の家も、母親と二人暮らしだったか。だから、こいつもいろいろと思うところがあるのだろう。

 個人的には、その恵まれた高身長と、筋肉質な体を生かして、バスケ部なんかが似合うと思うんだが、しかし本人がスポーツに興味を示していないのだから、仕方がない。それにしても、しばらく見ない間にこいつ、また一段と背が伸びたんじゃねえか。うらやましい。

 俺の身長が、昨日以前から変わっていないままだとすると、大体158センチ。女になった今では、それなりに平均的な身長だが、男の中ではかなり小さい。ましてや、今俺の隣を歩いているこいつは、確か180センチジャストだったはず。なんだか、余計に俺が小さく見えるんじゃないだろうか。

 そう考えると腹が立ってきた。俺は思わず、恨めしそうに京助を睨んでいたらしい。しかし、目が合うと、京助はきょとんとした顔を浮かべた。

「ん、どうしたんだよ、そんなしかめっ面で。……腹減ったのか?」

「人のことを動物みたいに扱うんじゃねえ」

「まあまあ、帰りしなにコンビニで何か買ってやるから、機嫌直せって。折角かわいいのに」

 余計に顔がしかめっ面になる。理由は大きく分けて二つ。

 一つ目は、これだからコミュ力の高い陽キャは、人のことを自然に褒めてモテるんだろうなっていう嫉妬。

 二つ目は、こいつにかわいいと言われるのは、なんだか変な感じがした。

「え、怒ってるじゃん」

 しかし京助は、そんなしかめっ面の俺がどうも可笑しいらしく、にやけ面を浮かべていた。

 下駄箱の周りは、これから下校したり、遊びに行こうとする生徒たちでごった返していた。後で京助から聞いた話によると、どうやら俺はここでも、周りの視線をそれなりに集めていたらしい。まあ、悪魔のスキルが付与されている、チート級の可愛さだから――自分でそういうのも変な話だけど――当たり前といえば当たり前か。だが、それよりも早く、この人込みを脱したかった。あまり人の多いところは、俺みたいな陰キャにとっては、体力をすり減らされる毒の沼みたいなものだ。だから、そそくさと下駄箱から靴を取り出し、足を通すために上がり框へ腰を下ろした。

 京助はすぐ隣で、器用に立ったまま靴を履いていたが、俺はそんなに運動神経が良くない。というより、本当に悪い。今日から登校再開、それ自体はまだ何とか頑張れそうだけど、体育の時間だけは本当に休みたい。

 身体とか動かすの、大嫌いなんだよな。

 と、そこで靴を履きながら、ふと俺の目の前辺りに、やたら男子が固まっていることに気付いた。みんな俺の方を見ているような……。

「ちょ、ちょっと、小豆沢さん!?」

 そこへ、急に割って入ってきて、俺の目の前にしゃがみ込む女子が一人。顔を見ると、どこかで見たこと、ある様な、ないような……。

「そんな座り方してたら、パンツ、見えちゃうよ……!」

「へ? あ、ああ、そっか。気にしてなかった」

 言われて初めて気が付いた。確かに、普段の癖で思いっきり三角座りをしていたが、これだと前からは丸見えなのか。別に見たいなら見させてやっても、減るもんじゃないし、とか思ったが、駄目だ。女の子らしくしてないと、死ぬ呪いがかけられているのをすっかり忘れていた。

 正確には、女の子らしい体験、だが、人にパンツを見せびらかすのが女の子らしい体験とは思えないな。感謝しないと。……この、名前がわからない誰かに。

「ってか、あんたも保護者として、ちゃんと小豆沢さんのこと、見てないとダメじゃないの!」

 そういって、その女子は横にいた京助に目をやる。

「わ、悪い悪い。気付かなかった。ごめんな、香織」

「いや、お――わたしのほうこそ、ごめん」

 あっぶね。俺って言いかけた。

「それから、えっと……」

 お礼を言おうとして、その女子の顔を見つめる。女子が良くやる、膝を抱えてしゃがみ込むような姿勢の女子は、丁度名札が隠れていて名前が見えない。思わず言い淀んでいると、彼女は、人懐っこい笑顔を浮かべた。

「あーごめん、一応今朝、話しかけに言ったんだけど、自己紹介はしてなかったよね、わたし、伊久美、梨沙っていうの。よろしくね! 小豆沢くん!」

 そういって彼女、梨沙は手を差し伸べてきた。俺はその手を掴み、そして、さっきからずーっと、俺の前にしゃがみ込んでいるせいで俺にだけ見え続けている、彼女の派手なパンツのことを、いつ本人に教えようか。

 ん、待てよ。この人、今、俺のこと、小豆沢くんって言ったか?

 思わず怪訝そうな顔をすると、彼女もすぐに間違いに気づいたらしく、訂正した。

「ごめんごめん、隣の朴念仁とごっちゃになっちゃった、小豆沢さん、よね!」

「え、さらっと俺のことディスるじゃん」

 京助のことらしかった。

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