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必殺執筆仕事人短編集

アイドル業界あるある

アイドル…。一見すると、実にいい響きの言葉だ。

もともと、アイドルという言葉には、『偶像』とか、『崇拝される人や物』『あこがれの的』『多くのファンを持つ存在』などといった意味がある。

現在は、数多くのアイドルグループが活躍している。まさに現在の『偶像』『崇拝される人や物』『あこがれの的として、追っかけたい存在、自らがそれになりたい存在』『多くのファンを持ち、追っかけられる存在』といえるだろう。


しかし、全てが『あこがれの的』という一言で済まされるわけではない。


晴れてオーディションを勝ち抜き、あこがれの的であるアイドルになれたとしても、いやむしろ、アイドルになってからの方が、本当の困難や、地獄が待ち受けていることもある。


例えば、このグループ、『HONEY TRAP』のメンバーの一人、笹本早妃(ささもと・さき)は、グループ内での人気が下位のまま、将来のアイドル活動に、展望を見いだせないでいた。


なお、このグループとメンバーは、実在しない。したがって、この話はフィクションだ。


フィクションではあるが、実際に本当にありそうな話だ。


「私、もうアイドルとしては、やっていけないかもしれない…。」


そこに、相手の男らしき人物の姿が。


「だったら俺と結婚しない?ちょうどいい潮時だよ。」


その男とは、在籍し始めて間もない頃からの付き合いで、当然、公言はしていなかった。


この時実は、体調不良で休養すると、ファンクラブのサイトや、世間一般、ネット記事には公言していたが、実際には、この男と交際をするためだった。


彼女にも事情があった。このままグループ内で続けていたとしても、どうせあのグループは、一番人気で絶対的エースの、あの子を中心としたグループで、それ以外のメンバーは、その他大勢の引き立て役。


だからもう、この交際が世間に発覚したら、その瞬間に辞表を叩き付け、辞めるつもりでいると、割り切っていた。


他のメンバーとも折り合いが悪く、卒業公演はもとより、花もやらない、辞めてくれてせいせいする、と思われるだろう、と、これもやはり、想定内のこと。


運営もまた、代わりのメンバーは、オーディションの応募者の数だけいる、という考え方だろうと、割り切っていた。いや、そのように割り切るしかなかった。他にどうしろというんだ、どうすることもできないよ、と心の中では思っていた、笹本早妃だった。


そして、交際が発覚し、表向きは卒業と発表されたが、実質はクビだろうと、ネットのコメント欄でも書かれる。


他のメンバーたちも、何か一言くらい、このことについて言及してもよさそうなものだと思われたが、運営に口止めされていたのか、誰も何も語らないまま、結局この件はうやむやにされてしまったという。


この件は事実ではなく、この小説の中のフィクションとして書かれている。


しかし、今のアイドル業界では、これと似たような話が、ゴロゴロあるのではないかと、これを書いた作者は、思っている。


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