強敵
洞窟に戻ると大きなトカゲのようなモンスターに仲間のレッサーアント達が襲われていた。
『あれは、、、ジャイアントリザードです!』
ソフィアによる念話によって敵の名前を知らされる。目の前にいるトカゲのようなモンスターは今まで見たどのモンスターよりも大きく、強そうだった。
ジャイアントリザードは全長10メートルほどもある巨大なモンスターでトカゲによく似た見た目をしている。全身が茶色の鱗で覆われており首から尾の末端にかけて鋭そうな棘が生えていてなかなか凶悪そうな見た目をしている。しかしこのまま俺の仲間たちを襲わさせ続けるわけにはいかない。俺はとりあえず念話によって仲間のジャイアントアントとグリーンキャタピラーにそれぞれ酸の噴射と糸の吐き出し攻撃をするように伝えた。それによってジャイアントリザードに向かってジャイアントアントは酸攻撃を、グリーンキャタピラーは糸を吐き出してリザードにぶつける。
俺はその間に先に戦っていたレッサー達の戦況を素早く把握する。10体いたレッサーアントは4体が甲殻が割れたり足を折られて行動不能に、1体が体を真っ二つにちぎられていて絶命していた。3体いたレッサーキャタピラーは2体が爪で切り裂かれたような傷を負って行動不能に、残り一体も体を食いちぎられていて動かない様子をみるとすでに絶命しているようだった。
こちらの戦力となる仲間の数を数える。
ジャイアントアント×3
レッサーアント×5
グリーンキャタピラー×1
それに加えて、蟲人である俺、人間のソフィアだ。俺はともかくソフィアは護衛するという約束なので戦わせるわけにはいかない。彼女はこの世界を知るにおいて貴重な手がかりだ。絶対に彼女を失うわけにはいかない。
おれは自分のステータス画面を開いて魔力を確認する。
名前:カヤイ
種族:蟲人(幼体)
体力:30/30
魔力:21/27
レベル:7
スキル:虫モンスターテイム、自己修復、蟲生成、生命力譲渡、念話
魔力は21まで回復していた。急いでレッサーアント2体を生成し、戦闘に加えさせる。これで仲間の数は11になった。果たして倒せるだろうか。俺は念話を使い仲間たちを散らばらせてジャイアントリザードを囲ませる。敵はどのくらい強いのか、とりあえずしばらく仲間たちに戦わせて様子を見ることにした。
アリたちの酸攻撃によって体の表皮が軽く溶かされ、キャタピラーの糸によって動きが妨害されるジャイアントリザード。各モンスターの遠距離攻撃が終わるとアリたちはジャイアントリザードに群がりその体に向かって顎を突き立てる。
「グァアアアッ」
ジャイアントリザードは煩わしそうに乱暴に暴れ、アリたちを引きはがした。あまり攻撃が効いている様子はなさそうだ。
そしてそのままジャイアントリザードは体を勢いよく捻るようにして後ろを向いた。そしてその一瞬後、遠心力によって振り払われたジャイアントリザードの太い尾がアリたちを薙ぎ払った。
『ジャイアントアントは熟練の冒険者がが10人いてやっと勝てるかどうかのレベルです!逃げましょう!』
ソフィアが念話を通して俺に逃げるように声をかける。
確かに仲間のモンスターとジャイアントリザードでは対格差が赤ん坊と大人ぐらいあるし、攻撃もあまり効いていなさそうだ。このまま戦いを続けても勝ち目はないだろう。
『全員、撤退!』
俺は念話を使用して仲間たちに逃げるように声をかける。それによって戦っていた仲間がすぐに身をひるがえしてこちらに戻ってきた。
そして俺たちは仲間たちを連れてそのまま森の奥への敗走した。逃げる途中、後ろからジャイアントリザードの叫び声が聞こえたが追ってはこないようだ。おそらく戦いによって倒されたモンスター達に集中しているのだろう。アリやキャタピラーは彼にとって餌でしかないに違いない。
しばらく森の中を走り、もう大丈夫だろうというところで止まり仲間の数を確認する、
仲間の数
ジャイアントアント×2 (1体負傷)
レッサーアント×3 (1体負傷)
仲間の数が5になってしまった。しかもそのうち2体は甲殻が割れたり足が折れたりしていて負傷している。もし戦いになっても戦力にはならなさそうだ。
俺は続いてステータス画面を開いて魔力を確認する。
名前:カヤイ
種族:蟲人(幼体)
体力:30/30
魔力: 4/27
レベル:7
スキル:虫モンスターテイム、自己修復、蟲生成、生命力譲渡、念話
残念ながら魔力はあまり回復していないようだった。これでは蟲モンスターが1体も生成できない。
そして追い打ちをかけるようにあたりもだんだん暗くなってきた。今夜はここで野宿するしかなさそうだ。
俺は念話を使いみんなにここで休むこと、交代で見張りをして夜を明かすことを伝えた。
伝え終わるとそれぞれ動き出したが仲間たちは疲れていそうだった。無理もないかもしれない。ジャイアントリザードとの激しい戦闘により仲間を失い、敗走した。せっかく集めた食べ物もあの場において来てしまったため食事も十分にとることができていない。
ソフィアの方を見てみると彼女も荷物のほとんどあの場に捨てて逃げたようで小さな鞄しか身につけていなかった。彼女が落ち込んでいる様子だったので念話で話しかけ、明日戻ってみてジャイアントリザードがいなかったら道具や食べ物を拾いに行こう、そう励ますと少し元気が出たみたいだった。
その夜は転生してから始めて洞窟以外の場所で過ごす夜だった。交代で見張りをするが数が少なく手負いの仲間もいたため心細かった。食事を朝以外食べていないためか元気も出ない。
自分の見張りの番になるまで寝ようとしたが戦いに負けた悔しさ、仲間を失った悲しみ、森の中で夜を過ごす不安さでなかなか寝付くことができなかった。