名前決定
【人間の若手研究者、ソフィアが仲間になりました。】
アナウンスにより、彼女の名前がソフィアということが分かった。そういえば俺にはまだ名前がなかったな・・・。自分でつけるものなのだろうか?そう考えるとソフィアからの念話があった。
『蟲人さんはまだ名前がないのですね・・・もしよろしければ私が名前を考えてもよろしいでしょうか?』
やっぱり名前がないと不便なのだろうか?別に名前なんかなくても特に困ってはなかったが・・・。そう考えていると続けて彼女からの念話があった。
『実は念話を使うことができる条件に名前を持った生物であるということがわかっているのです。』
なるほどそういうことか。それならば名前がいるな。転生して新しい体なので人間だったころの名前を使う気にもなれない。彼女に名前を付けてもらうこととしよう。おれは少女に向かってうなずいだ。
『わかりました。それでは少し考えるので決まったら言いますね』
おれは正直どんな名前でもいいのだが少女は時間をかけて真剣に考えてくれるようだ。何となくうれしいも。しかしここにとどまっているとモンスターが襲ってくるかもしれない。とりあえずいったん洞窟に戻った方がいいだろう。とりあえず俺はステータス画面を開き、魔力を確認する。
名前:なし
種族:蟲人(幼体)
体力:30/30
魔力:12/27
レベル:7
スキル:虫モンスターテイム、自己修復、蟲生成、生命力譲渡
俺は魔力が少し回復していることを確認するとスキル【蟲生成】を使用し、レッサーアントを1体作り出す。その様子を少女は少し驚きながらもとても興味深そうに見ていた。そしてこちらを向き念話で話しかけてきた。
『蟲人が昆虫系モンスターを生み出すことができるというのは明らかになっていましたが、実はアリを生み出すことのできる蟲人は珍しいんです。あとで観察させてもらってもいいですか?』
彼女は念話でそう伝えながら取りつつこちらを見た。おれは頷き、仲間たちに近寄り触覚を触れさせ、これから洞窟に戻ること、その間彼女を守ることを伝える。仲間たちは理解したようですぐに彼女を守るように隊列を組むようにして歩き出した。彼女もそれに素直について行く。俺はアリたちの為にゴブリンの死体を1体担ぎ、もう1体をジャイアントアントの背中に乗せ、仲間と共に洞窟まで歩いて行った。
しばらくの間歩いたが、特に問題なく洞窟まで着いた。途中、彼女の知識により木になっていた果物や地面にあった木の実やキノコなどを採取することができた。流石研究しているだけのことはあって、俺が来るときは時に見落としていた食べ物をこんなにあったのかと驚いた。ついでに食べ物の見つけ方や食べ方の注意なども念話によって彼女から教えてもらう。
洞窟に着いてすぐ、触覚をレッサー達の触覚に触れさせソフィアを攻撃しないよう、脅威から守るように伝えた。そのあとはゴブリンの死体や採取した食べ物を食料部屋まで運び、食事にする。まずは俺を含めた探索組が食事をとり、そのあと見張りを交代して洞窟に残ったレッサーたちが食事をするようにした。
レッサー達が食事をしている間、洞窟の入り口に立って外の見張りをしていると彼女が念話を使って話しかけてきた。
『蟲人さん、あなたの名前が思いつきました。カヤイというのはどうでしょう?』
どうやら彼女の中で俺の名前が決まったようだ。
『ブルーカヤイナイトという名前の宝石があります。その宝石はきれいな蒼色をしていて蟲人さんの甲殻に色合いや模様が何となく似ているんです。それにその宝石は贈り物に使われることがあるんですがそれには周りとの関係を円滑にするという意味が込められています。蒼色の甲殻を持ち、多くの蟲たちを従える蟲人さんに似あうと思うのですが、どうでしょうか?』
彼女はそう言いながら俺の方をみる。ふむ、カヤイ、カヤイか・・。頭の中で何回か唱えてみる。
うん、何となくしっくりくる。変な名前ではなさそうだしこれでいいだろう。俺は彼女の方を向いてうなずく。すると彼女は顔を綻ばせて念話を使って話しかけてきた。
『決まりですね!改めたましてよろしくお願いします。カヤイさん!』
頭の中にアナウンスが流れた。
【名前がカヤイに決まりました。】
俺はステータス画面を見て確認をする。
名前:カヤイ
種族:蟲人(幼体)
体力:30/30
魔力:17/27
レベル:7
スキル:虫モンスターテイム、自己修復、蟲生成、生命力譲渡
どうやら俺の名前は正式にカヤイに決定したようだ。名前なしからカヤイに決まったことにより何となく落ち着いた気分になる。しかし、名前が決まっても念話を使えるようにはならなかった。少しだけ期待していたのに残念だ。
俺の名前が決まると食事を終えたアント達が戻ってきた。いつの間にか外も暗くなり始めたようだ。俺はみんなを集めて仲間の数を数える。
仲間の数
ジャイアントアント×3
レッサーアント×8
グリーンキャタピラー×1
レッサーキャタピラー×2
全員で14体か。俺は触覚を通して敵が来ないか見張ること、敵が来たら全員に知らせること彼らに伝えて洞窟の奥へと戻った。ソフィアも俺の後ろについてくる。
自分がいつも寝ている位置に着くと、俺はうつぶせになり眠る準備を始めた。そうすると彼女の俺の近くに来て鞄から寝袋のようなものを出して寝る準備を始める。もし俺が人間の男のままだったらドキドキしたんだろうが、しかし今はそういった緊張などは感じなかった。蟲人として転生したことによって人としての欲求は残っていないのだろう。もし彼女が蟲人ならそう言った欲求がうまれるのだろうか?そもそも蟲人に雌雄はあるのだろうか?というか彼女は今日いきなりあった俺を本当に信用しているのだろうか?俺は彼女を信用していいのだろうか?彼女はゴブリンに苦戦するぐらいだから強くはないのだろうが、もし襲われてしまったら返り討ちにできるだろうか?そういえば護衛してほしいといっていたがの期間について聞いていなかった。彼女はどのくらい一緒にいるつもりなのだろうか?
しかしそういったことを考えているうちにいつの間にか隣の少女から寝息が聞こえてきた。それを聞くとなんだか考えていたことがどうでもよくなり、俺もすぐ睡魔に負けてに眠りについた。