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グレイグ  作者: 夢之中
47/52

ドゴンブレス


パインとアンナはゾルの攻撃を見ていた。

そして、鼻の横に剣先が命中すると同時に

ドラゴンに向かって移動を開始した。


ゾルは、ドラゴンの鼻の横に剣先が命中した時、

自分の役目は終わったと考えていた。

ゾルが足下を見ると、パインとアンナがドラゴンの前足に

移動してくるのが見えた。

ゾル:(あとは任せた。)

そう考えると、自由落下に任せて体の力を抜いた。


ドラゴンはカッと目を見開き、男を見つめていた。

男は剣先を鼻の横に命中させ、

その反動で後方へと移動していた。

このまま移動すれば、ブレスの直撃を受ける事になる。

即死しないまでも戦闘不能には追い込めるだろう。

しかし、ドラゴンはブレスを吐き出そうとした時に

異変を感じた。

ドラゴンの脳は、ブレスを吐き出す為に、

口に対して大きく開くように指示していた。

しかし、口は開かなかった。



ゾルは、自由落下中にドラゴンの顔を凝視していた。

自分に向かってドラゴンの首が伸び、

今にもブレスを吐き出そうとしていた。

もし、この距離でブレスを吐き出されたら、

ブレスの直撃を受ける事になるだろう。

しかし、口は開く動きを示さなかった。

ゾルは、地面に着地するとドラゴンを見ながら、

バックステップで後方へと移動した。

その時、ドラゴンに変化があった。

ドラゴンの顔が少し膨らんだようにみえたのだ。

同時に異変は起きた。

ドラゴンの鼻、口の隙間から炎が噴き出したのだ。

噴き出した炎はその量を急速に増やし、

ドラゴンの顔を覆いつくした。

ドラゴンは顔を左右に振り、両前足を顔に近づけるように

持ち上げ、炎を消そうと試みていた。

その隙をつくように、パインとアンナがドラゴンの懐に

飛び込み、飛び上がると剣を突き出した。

ゾルは、この時この作戦が成功したことを確信した。

そして、軍議でのキーラの発言を思い出した。


=====

キーラ:「ドラゴンの鱗だけど、全身にびっしりとあるように

    見えるけど、無い場所があるのを知ってる?」

ゾル:「そうでね。

   目でしょうか?」

キーラ:「そうね。

    目には鱗はないわ。

    だけど、ドラゴンが最も警戒している

    場所でもあるのよ。

    だから、目を狙うのはかなり難しいわ。

    他には思いつかない?」

この質問に誰も声を上げる者はいなかった。

キーラ:「やはり、知られてないようね。」

パイン:「一体どこなんですか?」

キーラ:「関節の付け根よ。」

パイン:「関節の付け根?」

キーラ:「そう。

    人間で言うと、脇の下や股の内側よ。」

パイン:「そこには鱗が無いんですか?」

キーラ:「そこは異なった方向の鱗が交わっている場所よ。

    つまり鱗同士の間に隙間があるのよ。」

ゾル:「なるほど、そういうことですか。」

キーラ:「その隙間にドラゴンキラーの毒を塗った剣を

    突き刺すの。」

ゾル:「確かに剣を突き刺せそうな気がします。

   しかし、その状況はどうやって作り出すのですか?」

キーラ:「その状況を作り出すのは、ゾル。

    あなたよ。」

ゾルは、驚いた。

ゾル:「えっ!

   わたしですか?」

キーラ:「鍵はあなたが持っているサンダーソードよ。」

ゾル:「・・・」

キーラ:「サンダーソードは、対象を破滅させる剣では無いわ。

    その効果は相手の動きを止める事。

    例えば魔導士の詠唱を中断させたり、

    対象の動きを一時的に止める為に使われるわ。

    しかし、ドラゴンの様な巨大な生物の身体全てを

    止める事はできないの。

    だから部分的に止めるということになる。

    そこで、ドラゴンブレスに着目するの。

    ドラゴンがブレスを吐くときに口を閉じていたら

    どうなるかしら?」

パイン:「ブレスが口の中に溢れるということですか?」

キーラ:「そう。

    そして行き場の無くなったブレスは、ドラゴンの鼻や

    口の隙間からあふれ出すわ。

    そして、ドラゴンの顔はブレスで

    覆いつくされるというわけね。

    先に言ったように、ドラゴンの目は鱗がないのよ。

    つまり己のブレスでダメージを受けるという事。

    ドラゴンは顔を振ったり、両前足を使ってブレスを

    消そうとするわ。」

ゾル:「両前足を使うために持ち上げるから脇が露出する

   というわけですね。」

キーラ:「その通りよ。」

パイン:「師匠。

    そんな冗談みたいな作戦が

    本当に通用するのでしょうか?」

    :

    :

=====


パインとアンナの攻撃は、見事に成功した。

ドラゴンの両前足の脇に剣が突き刺さった。

ドラゴンは、一瞬びくっと身体を振るわせたが、

顔のブレスを振り払う事にに集中し続けた。

2人は、自由落下にまかせて剣を抜くと

ドラゴンの足元に着地した。

そして、素早く後方へと下がる。

ドラゴンは、ブレスを消す為にもがいていた。

しかし、次第にその動きは次第に緩慢となり、最後には両前足を

だらんとぶら下げ、地面に接近するほどになって行った。

最後には力が完全に抜けたように、その巨体を地面に委ねた。

その様子を眺めていたキーラは、

マジックカーテンの呪文を解くとドラゴンに近づき、

ドラゴンの胴体を優しくなでたあと、

目を閉じ、しばらく黙祷した。

キーラは目を開けると口笛を吹いた。

パイン達は何事かとしばらく様子を伺った。

すると、遠くから鳥の鳴き声が聞こえた。

空を見上げると1匹の鳥が飛んで来るのが見えた。

パイン:「あれは?」

その声に対してキーラが答える。

キーラ:「あれは、煉獄鳥*1よ。

    私が初めて永久召喚を実験したときに呼び出したのよ。

    あの時は、煉獄鳥の大きさを知らずに呼び出したので、

    孵化する直前の卵だったわ。

    召喚直後に孵化したため、

    私の事を親だと思っているようね。」

パイン:「師匠でも、間違ったりするんですね。」

キーラ:「当然よ。

    人の人生なんて、失敗の連続だからね。

    ただ、同じ失敗を繰り返さないようにすることが、

    重要なのよ。」

パイン:「確かにそうですね。」

キーラは、忘れていた何かを思い出した。

キーラ:「あっ。

    貴方達は、すぐにマッカスとシルカーを救助して。」

その指示でパイン達はドラゴンの奥に置かれた檻へと向かった。

キーラは、ドラゴンの横で煉獄鳥を待った。

煉獄鳥がドラゴンの横に着地するとその胴体の大きさは、

ドラゴンよりも二回りほども大きかった。

キーラは、煉獄鳥に何やら指示を与えた。

煉獄鳥は、巨大な足でドラゴンを鷲掴みにすると、

空高く舞い上がって行った。

丁度その時、パイン達がマックスとシルカーを

救助して戻ってきた。

パイン:「師匠。

    あのドラゴン、どうするんですか?」

キーラ:「ドラゴンは、魔導の素材として優秀なのよ。

    全て使わせてもらうわ。」


その後、キーラ達は転移の魔法を使って砦へと戻った。

ビックスはキーラ達を出迎えた、そして真っ先に発言した。


ビックス:「魔法具(フィラクテリー)が消え失せた。」

キーラ:「どういう事?」

ビックスの話は次のようなものだった。


置き土産の連動魔法により、魔法具(フィラクテリー)のある

建物に火をつけた。

それにより、ザラスは移動した。

しばらくして、魔法具(フィラクテリー)の反応は消え失せた。

その後、残った魔法具(フィラクテリー)は、一つ、また一つと

消えて行った。

これは、何者かが魔法具(フィラクテリー)

破壊したとは思えない。

ザラス自信が何か行動にでたと考えた方が正しいように思えた。


キーラ:「そう。

    まさかね。

    もしかしたらザラスとの決戦は

    目前に迫っているかもしれないわ。」

ビックス:「うむ、そうじゃのう。」


その時、一人の兵士が慌てた様子でキーラ達の前に現れた。

兵士:「大変です!!

   空が異常です!!

   空に人が!!」

キーラ達は、兵士が何を言っているのか分からなかった。

そこで、すぐに外へ出ると、空を見上げた。

まだ昼間だというのに空は厚い黒雲で覆われ、

遠くに稲光が見えた。

キーラ達が見ている間に雲は渦巻くように移動すると、

人の上半身の様な形を造り始め、そしてすぐに壊れる。

またしばらく待つと、人の様な形を造り出し壊れる。

何度か繰り返すうちにその形は段々と形作られていった。

そして、最後にはザラスと思われる形へと落ち着いた。

キーラ達は、声を聞いた。

 「キーラよ。

 お前ならばこの呪術を知っているだろう。

 期限は1日。

 決戦の場はセンド平原に用意した。

 仲間たちと一緒に来るがよい。

 明日の昼、どちらが生き残るか雌雄を決しようではないか。」

そこまで言うと、空に形作られたザラスは消え失せた。

同時に空にあった黒雲は消え失せて行った。


キーラ:「まいったわね。

    どうやら、私の命もあと1日ということね。」

パイン:「えっ!!

    師匠。

    どういう意味です。」

キーラ:「あれはね。

    邪神魔導士の決闘状よ。

    それも命を賭けたね。」

パイン:「無視することは出来ないのですか?」

キーラ:「あの呪いは、残念ながら避けて通る事はできないわ。

    逃げれば、1日で私の命は亡くなるわね。

    ある意味絶体絶命のピンチってところね。」

パイン:「そんな。

    さて、この場で話してもしょうがないわ。

    軍議室に行って作戦を練りましょう。」

そして、キーラ達は、軍議室へと向かった。



*1:煉獄鳥

 煉獄*2に住む巨大な鳥。

 火属性であるため、火耐性が高い。

 

 

*2:煉獄

 天国には行けなかったが地獄にも墜ちなかった人の行く

 中間的なところ。

 苦罰によって罪を清められた後、天国に入るとされる。


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