書状
4人が調査に向かった次の日の朝。
キーラ達は、軍議室に集まって軍議をしていた。
それは、今朝の早朝に砦に逃げ込んできた少年の話題だった。
少年は書状を持っており、マスターキーラに渡すように
言われたらしい。
ザラスのメッセンジャーとして利用されたと思われた。
ジェイク:「本日早朝に現れた少年は、
リーモ村の住人であるとが判明しています。
そして少年はマスターキーラ宛の書状を
持っていました。
それがこれです。」
そう言って書状をキーラに渡す。
キーラは書状を受け取ると目を通した。
キーラ:「ふーん。
なるほどね。
マッカスとシルカーは、ザラスに捕えられたわ。」
ジェイク:「なんだって!!」
キーラ:「どうやら、ザラスは対決を望んでいるようね。
私達が勝てば2人を解放するらしいわ。」
パイン:「一体どうして。」
キーラ:「目的は、私ね。」
パイン:「師匠が目的?」
キーラ:「リッチは、生きていた頃の恨みを忘れないのよ。
本来は、ゾーラなのだろうけど、
彼はこの世にはもういないわ。
だから仲間の私を対象に選んだのよ。」
パイン:「そんな。」
キーラ:「問題だけれども、今回の件で分かる事もあるわ。」
パイン:「何がわかるんですか?」
キーラ:「予想だけど、ザラスは敵の指揮下に
入っていない。
単に協力者だと思うわ。」
パイン:「行動が組織立っていないという意味でしょうか?」
キーラ:「そうね。
人質の交換条件が対決というのは割に合わないわ。」
パイン:「確かにそうですね。」
パインは納得するように頷いた。
ジェイク:「マスターキーラ。
ビックス殿とライ殿は無事なのでしょうか?」
キーラ:「2人については何も書かれていないわ。
無事だといいのだけれど。」
ジェイク:「そうですね。
ところで、対決は何時なのですか?」
キーラ:「2日後にセンド平原*1よ。」
ケイン:「センド平原だって!!」
ケインの驚きも無理はなかった。
センド平原はアンデットの発生場所の1つである。
メルトニアの対策で発生数はかなり減少しているが、
現在でも高位の冒険者が通過することを躊躇する場所でもある。
そんな不安を払拭するようにキーラが言った。
キーラ:「昼間であれば、それほど脅威に思う必要はないわ。
それよりもザラスとドラゴンの対策を検討しましょう。」
そして、長時間に渡る軍議が行われた。
しかし、結論が出ないまま時間が過ぎていった。
キーラ:「やっぱり、問題は魔法具を
どうするかね。」
パイン:「そうですね。」
ゾル:「この際、ザラスが復活することを前提に
ドラゴン対策を中心に検討するのはどうでしょう。」
キーラ:「そうね。
ビックスとライが戻らない以上、
そうする以外に方法が無いかもしれないわね。
まず、ドラゴンの対処法を検討しましょう。
これについては私に策があるわ。
それについて話しましょう。
ドラゴンと対峙したのは、
パイン、ゾル、アンナの3人ね。
ドラゴンがブレスを吐いた時の事を思い出して頂戴。
パイン、どういう動作でブレスを吐いたか覚えている?」
パイン:「えーと。
確か、首を縮めて胴体に引き寄せた後に、
首を突き出し、大きく口を開けてブレスを吐いていたと
思います。」
キーラ:「ゾルとアンナも同じ意見かしら?」
ゾル:「はい。」
アンナは、うなづくことで同意の意を示した。
キーラ:「大体そんな感じね。
ドラゴンが首を縮めた時、ドラゴンは口を開けていた?
それとも閉じていた?」
パイン:「確か、閉じていたかと。」
キーラ:「その通り。
実は、この動作に隙があるのよ。」
ゾル:「隙ですか?
いや、しかし、いくら隙があったとしても、
鱗を何とかしないとどうしようも無いかと思うのですが。
今の我々の武器では、ドラゴンにダメージを当たる事は
困難だと思います。」
キーラ:「確かにそうよね。
でも、先ずは最後まで話を聞いて頂戴。」
そう言うとキーラは、対ドラゴン対策を話始めた。
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キーラの話が終わり、最初に声を上げたのはパインだった。
ソルは少し興奮気味だった。
それはキーラの言っていた『局面を変える』役割だったからだ。
パイン:「師匠。
そんな冗談みたいな作戦が
本当に通用するのでしょうか?」
キーラ:「冗談ねー。」
キーラは、そう言いながらクスッと笑った。
キーラ:「そうね。
確かに冗談みたいな作戦かもしれないわね。
私達がこの作戦を初めて聞いた時もパイン達と同じく、
冗談かと思ったわ。
でもね、この作戦は私達がブラックドラゴンを
倒したときにも使われた作戦なのよ。」
パイン:「えっ、そうなんですか?」
キーラ:「えぇ、そうよ。
この作戦は、ドワーフ王バルガ=ドヴェルなの。
私達も最初は疑問視したわ。
でもほかに有効な手立ても無く、
最後にこの作戦を実行に移したわ。
そして、見事に作戦は成功したのよ。」
パイン:「そうだったんですか。」
キーラ:「なので、他に有効な策がなければ、
この作戦を実行するわ。
反対するならば、他に案を持って反対する事。
それ以外は認めないわ。
案も無く反対するのは最も愚かな行為よ。」
ゾルは少し興奮気味に声を発した。
ゾル:「その作戦、ぜひ実行しましょう!!」
ゾルの発言の後、軍議室は沈黙に包まれた。
しばらくまってキーラは声を発した。
キーラ:「どうやら他の案は無いようね。
それでは、次にザラスをどうするかを考えましょう。
ザラスとドラゴンを分断する方法が
あればいいのだけど。」
キーラのその言葉が終わるか終わらないとき、軍議室の扉が
『バタン』と音を立てて開かれ、全員が開いた扉に注目した。
なんとそこには、ライとビックスが立っていた。
キーラが安堵の声を漏らす。
キーラ:「よかった。
無事だったのね。」
ビックス:「まったく、散々な目にあったわい。」
キーラ:「一体何があったの?」
2人は、その言葉に応えるように話を始めた。
2人の話を要約すると以下の様な話だった。
4人は洞窟に侵入後、2手に分かれて調査することとなった。
ビックスとライは、洞窟の支道を進み、首都の東の端に位置する
地下墓地の侵入に成功した。
しかし、そこでレイスの襲撃を受ける。
レイスは無事浄化したものの2人は、レイスの精神攻撃で
そのまま気を失ってしまう。
先に目を覚ましたのはライだった。
ライはビックスを起こすと魔法治療をした上で調査を再開した。
地下墓地を出ると最も近い死者の目の反応場所へと
向かった。
その場所は墓地内にある別の地下墓地だった。
そこでビックスとライは石棺に閉じ込められた子供のゾンビに
遭遇し、それを浄化する。
その後、最も近い死者の目の反応地点へと向かい、
魔法具を発見する。
それは、手のひらに載るサイズの宝石箱であった。
次の反応先へ向かうべく移動を開始しようとしたが、
町中の至る所に兵士が巡回しており、
調査を中止せざるを得なかった。
そして、ビックスの帰還の魔法で帰還したということだった。
キーラ:「ということは、魔法具の場所は、
ほぼ特定できたと考えていいのかしら?」
ビックス:「そうじゃのぉ。
今のところそれで問題ないじゃろうな。
それに何もしていないから、
ザラスも気が付いてもおらんじゃろうな。」
キーラ:「それじゃあ、2人も軍議に参加して頂戴。
ザラスとドラゴンをどうやって分断するかについて
検討していたところよ。」
ビックス:「なんと!!
それは丁度良いぞ。」
キーラ:「どういうこと?」
ビックス:「発見した魔法具の近くに、
置き土産*2を残してきたんじゃ。」
キーラ:「やるじゃない。」
パイン:「置き土産って何ですか?」
ビックス:「連携可能な魔法具じゃよ。
上手く使えば、ザラスを魔法具に
移動させることも可能じゃろうな。」
パイン:「なるほど、それでザラスとドラゴンを分断しようと。」
キーラ:「そう言う事よ。
ただ直接魔法具に働きかける事は
できないからタイミングを合わせる事は難しいわね。」
ビックス:「確かにそうじゃが、無いよりはましじゃろ。」
キーラ:「えぇ、その通りね。
さて材料は揃ったわね。
それじゃあ詳細に作戦を練りましょう。」
キーラ達はその後、作戦を練って行った。
そしてある程度固まるとその準備へと移った。
*1:センド平原
メルトニアの東に位置する平原であり、
この地で大量のアンデットが発生している。
伝説では、遥か昔にセンド平原で大きな戦いがあり、
その為にアンデットの発生地になったと言われている。
*2:置き土産
魔法具を制作する魔導士達の間で使われる隠語。
連携された魔法具は対になった魔法具に対して
様々な効果を及ぼす事ができる。
大抵の場合は安全の為に効果を限定しているが、
効果を限定しない事も可能である。
効果を限定していない魔法具の片方を置き土産と呼ぶ。




