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グレイグ  作者: 夢之中
44/52

潜入


ビックス、ライ、マッカス、シルカーの4人は

軍議室で待機していた。

マッカス:「なぁ、シルカー。」

シルカー:「どうした?」

マッカス:「ここから石櫓までの距離は非常に遠い。

     見つからずに移動するのは、時間的にも距離的にも

     かなり難しい。

     マスターキーラは、石櫓までどうやって

     行くつもりなのだろうか?」

シルカー:「そうだな。

     まず転移魔法は無理だな。」

マッカス:「どうしてだ?」

シルカー:「転移魔法は、転受の魔法陣が必要なんだ。

     転受の魔法陣の位置を知らなければ

     移動することはできない。」

マッカス:「ほかには?」

シルカー:「フライの魔法だが、

     今回フライの魔法を使えるのは2人だけだ。

     本人以外を運ぶには無理がある。」

マッカス:「そうか。

     では、ほかには?」

シルカー:「邪神魔法にゲートという魔法があるのだが、

     本来この魔法は、召喚につかわれるんだ。」

マッカス:「召喚?」

シルカー:「精霊界や魔界等の異世界と我々の世界を接続して、

     精霊や魔族を呼びだすんだ。

     現世と現世を繋ぐことも可能なのだろうが、

     実際に実行したというのを私は知らない。

     残念ながら、4人を同時に運ぶ方法は

     思い当たらない。」


そんな話をしていた時、キーラが軍議室に現れた。

キーラ:「準備が出来たわ。

    一緒に来て頂戴。」

5人は、キーラに率いられるように廊下を進んで行った。

そして、一つの扉の前に到着した。

キーラが扉を開くとその先には、小さな部屋があった。

その光景にライは驚きの顔を見せた。

ビックスは、頷きながらニヤニヤと笑っている。

キーラは、4人を中に誘導した。

キーラ:「椅子にすわって。」

キーラは4人が椅子にすわるのを待ってから言った。

キーラ:「すこし揺れるかもしれないから気を付けてね。」

そしてキーラは、部屋を出て行った。


マッカス:「揺れる?

     一体なにが起こると言うんだ。」

ライ:「少し気になる事がある。

   通路からこの部屋に続く扉だが、俺の記憶が正しければ、

   その扉はこの部屋ではなく、裏庭に続いていたはずだ。」

マッカス:「どういうことだ?」

相変わらずビックスはニヤニヤと笑っていた。

シルカー:「ビックス先生、何かご存じなのですか?」

ビックス:「そうじゃのー。

     しばらく様子を見た方がいいじゃろうな。」

ビックスがそう言った時、部屋が大きく揺れ、

同時に部屋の中が光に包まれた。

 「んっ?」

 「どうした?」

 「むぅ。」

 「・・・」

そして、4人は意識を失った。


4人の意識が戻った時、そこは建物の中だった。

マッカスが辺りを見回すと、石壁で作られた円柱形の建物である

ことがわかった。

壁際に上へと続く階段がらせん状に続いていた。

他の者も辺りを見回し不思議がっていた。

キーラ:「ここは、目的の石櫓よ。

    私は戻るけど、皆は調査を続けて。」

そう言い残すとキーラは、転移の魔法で消え失せた。


マッカス:「一体どうやって移動したんだ?」

ビックス:「フライの魔法だと思うぞ。」

シルカー:「フライですって?

     しかし、マッカスとライは魔法を使えませんし、

     フライで運ぶのは重量的に不可能だと思われますが。」

ビックス:「そうじゃの。

     フライで4人運ぶなど、たとえ師匠だとしても

     不可能じゃろうな。」

シルカー:「ではどうやって?」

ビックス:「ドールハウス*1じゃよ。」

シルカーはドールハウスと言う魔法を聞いたことが無かった。

シルカー:「ドールハウス?」

ビックス:「ドールハウスは魔法具じゃよ。

     邪神魔法に分類される魔法を使用しておる。

     ドールハウス内にいる生物を人形に変えるんじゃよ。

     元々は侵入者用の罠として作ったんじゃが、

     まさかこんな使い方をするとはのー。」

シルカー:「作った?

     もしかして先生の作品ですか?」

ビックス:「師匠とわしの合作じゃな。」

シルカー:「そうでしたか。」

ライが2人に近づくと言った。

ライ:「そろそろいいか?

   こっちに地下へと続く階段がある。」


4人はライの発見した階段を降りて行った。

階段を降りると目の前に金属で補強された扉があった。

シルカーが扉の前に歩み出て、何やら呪文を唱える。

シルカー:「どうやら、魔法や罠はかかっていないようだ。」

シルカーは続けて呪文を唱えた。

 『カチッ。』

扉の鍵は音を立てて解錠された。

マッカス:「俺が先に行く。」

そう言うとマッカスは扉をゆっくりと開き、

扉の先を覗き込んだ。

扉の先には洞窟が続いていた。

シルカーとビックスが4人の剣の先端に明かりを灯した後、

部屋の中へと進んだ。

マッカス:「狭いな。」

シルカー:「あぁ。

     壁面に人が掘った跡がある。

     明らかに目的をもって掘られた物だ。

     だとすると、脱出用に掘られた物に

     間違いないだろう。」

ビックス:「わしも同じ意見じゃな。」

ライ:「という事は、正解ということだな。」


4人が洞窟を進むと、広い空洞に出た。

その広い空洞からは、四方八方に別の道が先へと続いてた。

ただ、1本だけ他の道よりも広い道があった。

マッカスは、扉の近くに散乱する骨を発見した。

マッカス:「おぃ、見ろ。

     これは、人骨だな。」

ライ:「あぁ、間違いないな。

   こんな場所にというのもあるが、量がすごい。

   何人分あるのだろうか?」

シルカー:「あぁ、何があったのかは分からないが、

     かなり昔のもので間違いないな。」

ビックス:「そうじゃな。

     これ以上情報を得られんじゃろ。

     先へ進むとしようかの。」

シルカー:「そうですね。」

マッカス:「なら、一番広い道が本道だろうから、

     そこを進もう。」

シルカー:「いや、確かに本道かもしれないが、

     他の道も調べた方がいいんじゃないか?」

ビックス:「そうじゃのー。

     手分けして調べるかのー。」

シルカー:「そうですね。

     二手に分かれて調べましょう。

     あまり深追いはせずに決めた時間以上は

     調査しない方針で。」

そして、ビックスとライ、マッカスとシルカーに分かれて

支道の調査が始まった。

4人はしばらく調査したあと約束の時間になった為、

最初の空洞へと戻った。

マッカス:「それで、どうだった?

     こちらは、全て行き止まりか、

     この空洞へと続いていた。」

ビックス:「こっちも、1本を除いて同じようなものじゃ。」

ライ:「あぁ、1本だけ、先へと続いている。」

シルカー:「そうですか。

     では、本道とその支道を二手に分かれて

     進んでみましょうか。」

ビックス:「そうじゃのー。

     時間もないし、そうするのがいいかのー。」

そして、マッカスとシルカーが本道へ進み、ビックスとライが

支道を進むことになった。



ライは少し苛立っていた。

それはビックスの足取りが遅いためだ。

ライ:「ビックス爺さん、もう少し早く歩けないのか?」

ビックス:「すまんのー。

     しかし、年寄はいたわるものじゃぞ。」

ライ:「もうすこし早く移動できる魔法はないのか?

   たとえば、そうだ。

   フライとか使えないのか?」

ビックス:「フライは使えるが、この狭さでは難しいかのー。」

ライ:「くそっ、じれったい。」

そう言うとライはビックスを持ち上げて背負った。

ビックス:「なっ、何をするんじゃ。」

ライ:「俺が運ぶから、しっかりと掴まってな。」

ライは暗い洞窟の中をビックスを背負い疾走し始めた。



その頃、マッカスとシルカーは本道を進んでいた。

剣先の灯りは通路の全てを照らすにはあまりにも弱かった。

数メートル先は暗闇に覆われており、2人が歴戦の冒険者で

無かったとしたら臆する事は間違いないだろう。

それほどまでに暗闇は人を恐怖へと誘う。

2人は、わずかな音も聞き逃さないように

聴覚を研ぎ澄ましていた。

視覚を奪われている以上、音に敏感になる事は当然ともいえる。

マッカス:「この感覚、久しぶりだ。」

シルカー:「あぁ、まさか再び味わえるとはな。」

マッカス:「冒険者をやめた事を後悔しているか?」

シルカー:「んー。

     まだ分からん。」

マッカス:「俺は後悔している。

     こんなゾクゾクとした感覚、

     他では味わえないからな。」

シルカー:「あぁ、それには賛同しよう。」

マッカス:「だよな。

     やっぱり、冒険は俺に合っている。」

シルカー:「私もそう思う。」

しばらく進むと、扉があった。

マッカスとシルカーは音を頼りに中の様子を探った。

2人の結論は中に人の気配は無いという事だった。

シルカーが魔法を唱え解錠する。

マッカスがゆっくりと扉を開けて中を覗き込む。

そこは小さな部屋だった。

いや部屋と呼ぶのは相応しくない。

家具など一切なく、あるのは反対側の扉だけだった。

マッカスは部屋の中を見回した後、

シルカーの方を見て頷いた。

そして部屋の中へと入る。

シルカーも後に続いた。

2人は、他の事には目もくれず、

真っ先に反対側の扉へと向かった。

その扉は、把手や鍵穴が無く、

開閉できるように作られていなかった。

しばらくしてシルカーが言った。

シルカー:「この扉には魔法が掛けられている。

     解錠には少し時間がかかりそうだ。*2」

マッカス:「そうか。

     ならば俺は壁を調べよう。*3」

シルカー:「頼んだ。」



丁度その頃、ビックスとライは行く手を遮られていた。

行く手を遮っていたのは、大小様々な石が積み上げられた

石垣だった。

ライ:「何故、こんなところに石垣が?」

ビックス:「明らかに人が積み上げたものじゃな。

     少し調べてみるかの。」

そう言ってビックスはライの背中から降り、

石壁を丹念に調べ始めた。

そしてある部分に違和感を感じた。

ビックス:「すまんが、ここを照らしてくれ。」

ビックスはその部分を丹念に調べ始めた。

ライはビックスを見守るしかできなかった。

ビックスは、終いにはその大きな石に手をあて上下にゆする。

そして、ライの方を見ると言った。

ビックス:「この石を引き抜くことができるか?」

ライは最初ビックスの言っている意味が分からなかった。

しかし、ビックスの示した石の辺りを見るとその意味を察した。

その辺りの材質が明らかに他の石と違うのだ。

ライ:「やってみよう。」

ライは、両手を胸のあたりまで持ち上げた。

ビックスの見ている前で爪が伸びて行き、

2cm程伸びると止まった。

ビックス:「ほぅ。

     便利なものじゃな。」

ライ:「あぁ、たまにはそう思うよ。」

ライは、その大きな石の隙間に爪を差し込み、

ゆっくりと引き抜こうとする。

ライ:「んっ?」

ライは直ぐに気が付いた。

その石が見た目以上に軽いのだ。

ズリズリと音を立てて石が引き抜かれた。

その石は薄く明らかにはめ込んだという物だった。

重さも10Kg程度というところだろうか。

成人男性であるならば、取り外す事も可能だろう。

空いた穴は腹ばいになれば、大人でも通り抜けることが可能な

大きさだった。

ライは取り外した石板を壁に立てかけると、

首を中にいれて中を確認した。

反対側にも石板らしき板が設置されている。

ライはそれを慎重に取り外した。

そして、身体を穴に滑り込ませる。

ライは、石垣の反対側に出ると辺りを見回した。

そこは、部屋の中だった。

ライは、剣を前に突き出し辺りを見回した。

真っ先に目に入ったのは石棺だった。

後から入ったビックスがライの横に立つとポツリと言った。

ビックス:「地下墓地(カタコンペ)のようじゃな。」

ライ:「あぁ、そのようだ。」

ビックスとライは地図を頭の中に描くと、現在の場所を探した。

先に声を上げたのはビックスだった。

ビックス:「首都の東の端の墓地のようじゃな。

     用心するんじゃ。

     死者の目の反応位置じゃ。」

その時、2人の背中に悪寒が走った。

同時にライが声を上げた。

ライ:「なんだあれは?」

そう言って剣を前方に突き出す。

剣先の明かりが、前方を照らす。

明かりの中に見えたのは、半透明な人の姿だった。

ビックス:「レイス*4か。」



その頃、マッカスとシルカーは、扉を開ける為に動いていた。

しかしどちらの作業も順調とは言えなかった。

マッカスが壁を調べていると、入った側の扉の先から

異音が聞こえた。

それは、カチャカチャと何か乾いた硬い物が

接触する時に発する様な音だった。

マッカス:「おぃ、シルカー。

     なにか聞こえないか?」

シルカー:「すまないが、今は手が離せない。

     1人で調べてくれ。」

マッカス:「そうだな。

     わかった調べてこよう。」

マッカスは入ってきた扉を出ると洞窟を戻って行った。

しばらくしてシルカーは、呪文を唱えた。

 「カチッ。」

シルカーの顔に笑みが浮かぶ。

同時に部屋の中が光に包まれた。



マッカスは、洞窟を戻って行った。

カチャカチャという音が大きくなるにしたがって、

進む速度は低下していく。

最後にはその場に静止し、剣を強く握りしめた。

しばらく待つと、剣先の明かりに音の正体が現れた。

それは、複数体のスケルトン*5だった。

複数体とあいまいなのは、明かりが届かない範囲にいるであろう

スケルトンの気配を感じるのだ。

マッカスは直ぐに動いた。

剣を下段に構えると、先頭のスケルトンめがけて剣を振るう。

マッカスの剣はスケルトンの腰骨を捕らえた。

攻撃を受けたスケルトンはバランスを崩し、

ガラガラと崩れ落ち、骨の山を作る。

次の瞬間、骨は浮かび上がり、何事も無かったように再生した。

マッカス:「むぅ、浅かったか。

     それにしても、厄介な相手だ。」



ビックスとライは、レイスと戦っていた。

ライ:「おぃ、まだなのか!!」

ライはレイスから距離を取り、

レイスの攻撃を避けるのみだった。

レイスは霊体であり、通常の武器ではダメージを与える事が

不可能なのだ。

ビックス:「そうあせるな。

     あとすこしじゃ。」

レイスの攻撃を受けると肉体的ダメージではなく、

精神的ダメージを受ける事になり、

短時間で死に至る事はないものの、次第に衰弱して行く。

現にビックスもライもレイスの攻撃を受け精神的なダメージを

既に負っていた。

しかし、それは目に見えるものではなく、

疲労という形で表れていた。

2人共それを自覚していたからこそ焦っていたのだ。

ビックスの身体が光に包まれ*6、光が地下墓地を包み込んだ時、

疲労は限界に達していた。

そして2人は、崩れ落ちるように倒れた。



*1:ドールハウス

 魔法具の一つであり、罠の一つである。

 特徴としては、大きさを自由に変えられることと、

 魔法を発動すると部屋の内部に存在する生物を人形に変える。

 人形になった生物は、ドールハウスの外にでると、

 通常の状態に戻る。


*2:時間がかかりそうだ

 物理的に施錠された鍵は魔法によって

 簡単に解錠することができる。

 しかし、魔法の掛けられた扉を無理やり開けるには、

 魔法を解かなければならない。

 そのためには掛けられている魔法を知らなければならない。


*3:壁を調べよう

 扉には魔法がかけられている事が多々ある。

 この場合開ける方法を設けるのが一般的であり、

 それは巧妙に隠されている。

 マッカスは、それを発見するために壁を調べ始めた。


*4:レイス

 肉体と魂が分離することによって変貌してしまった姿であり、

 魂の持ち主と同じ姿で現れる。


*5:スケルトン

 人間のように動き回る骸骨であり、アンデットに分類される。

 剣や盾を携帯することもある。

 主要な骨が粉砕されない限り、何度でも復活する為、

 非常に厄介な相手である。

 神聖魔導士の浄化の魔法で一掃できる為、

 パーティで行動する場合は、脅威になることは少ない。


*6:身体が光に包まれ

 神聖魔法の浄化の呪文が発動した時に現れる現象である。

 その光は、邪悪な霊体を浄化する。


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