ドラゴンキラーその2
パインは能力を使い、広場を観察していた。
キーラ:「パイン。
何が見える?」
パイン:「はい。
中は、砂地になってますね。
ここは、どうやら2階ぐらいの高さに
位置するみたいです。
階段とか梯子は見当たらないので、
飛び降りるしかないですね。
あと、建物の残骸と思われるものが、
複数個所にあります。」
キーラ:「天井まではどのぐらいの高さがあるの?」
パイン:「そうですね。
ここからだと、10mぐらいじゃないでしょうか。」
キーラ:「そんなに高くないってことね。」
パイン:「そうですね。
んっ?」
キーラ:「どうしたの?」
パイン;「奥の方に、漏斗のように凹んだ部分があります。」
キーラ:「ふーん。」
パイン:「グレーターアントが、移動しています。
あっ。
漏斗の様な窪みに落ちました。
どうやら上がれないようです。
なんだあれ?」
キーラ:「どうしたの?」
パイン:「1匹のグレーターアントが窪みの中に
滑り落ちて行ったように見えたんです。
そのとき、窪みの中心で何か動いた気がしたんですが、
気のせいかもしれません。」
キーラ:「それは、気のせいじゃないわね。
サンドワーム*1って聞いた事がある?」
パイン、ゾル:「いえ。」
キーラ:「まあ、当然よね。
この辺りじゃ、先ずお目にかかれないからね。
ここよりずーーーっと東に行くと砂漠があるのよ。
その砂漠に生息しているわ。」
パイン:「どんな生き物なんですか?」
キーラ:「そうねぇ。
見た目は、巨大なミミズかしらね。
口が特徴的でね。
ヤツメウナギって見たことある?」
パイン、ゾル:「はい。」
キーラ:「あんな口をしているのよ。」
パイン:「うぁ、、、。」
ゾル:「・・・」
キーラ:「それの巨大なやつよ。
飢餓状態に陥っていなければ、おとなしいわよ。
蟻地獄の様に砂の中に潜って
獲物が落ちてくるのを待つだけ。
でも、飢餓状態に陥った個体は、とても狂暴よ。
蛇の威嚇行動の様に、身体を持ち上げて、
直接攻撃をしてくるわ。
身の危険を感じた場合も同様の行動をするわね。」
パイン:「ところで、巨大ってどれぐらいなんですか?」
キーラ:「そうねぇ。
私が目撃した最大の個体は、
直径5m、長さ100mというところかしら。
まあ、ここは狭いからそんなに大きくないだろうけど、
直径1-2mは、あるんじゃないかしら。」
パイン:「直径5mって、、、。
そんな化け物どうやって倒したんですか?」
キーラ:「倒してないわよ。」
パイン:「えっ。」
キーラ:「別に攻撃されたわけでもないしね。
それでも、万が一の為に討伐検討はしたわ。
そうだ、サンドワームの弱点を考えてみて。」
パイン:「そんな急にいわれても。」
ゾル:「そうですね。
巨大ミミズということは、虫系ですね。
だとすれば、炎ですかね。」
キーラ:「うん。
よく勉強しているわね。
他にはない?」
パイン:「んー。
砂漠に住んでるんですよね。
じゃあ、水とかですか?」
キーラ:「なかなかいい発想よ。
大抵の生物は、環境に合わせた進化をしているわ。
急激な環境変化には対応しづらいのよ。
だから、変化が大きければ大きいほど効果があるのよ。」
ゾル:「なるほど。
確かに炎も急激な変化ですね。」
キーラ:「その通りよ。
まあ今回は、近くに水源が無さそうだし、
炎で行きましょう。
パイン。
敵に向けてファイアースピアー*2を打ち込んで。
敵が顔を出したら、私とゾルがファイアーボールを
打ち込むわ。」
パイン:「わかりました。」
キーラは、ローブの中から小さな小瓶を多数取り出して、
その1つをパインに手渡すと、壁、天井、地面等に向けて
投げるように指示した。
パインは、小瓶を天井に向けて投げつけた。
小瓶は天井にぶつかると中の液体が天井に大きなシミを作った。
それを確認したキーラは呪文を唱えた。
すると、天井に着いた液体は、強い光を発する。
パイン:「なるほど。
そう言う事ですか。」
キーラの意図を知ったパインは、キーラから小瓶を受け取ると、
次々と投げて行った。
キーラも呪文を唱える。
真っ暗だった空間は、その発光によって
次第に明るくなっていった。
そして小瓶が無くなる頃には、隅々まで見渡せる程に、
明るくなっていた。
キーラもゾルもパインの見ていた光景が分かるようになると、
洞窟の奥にある窪みを見た。
キーラ:「やっぱり、サンドワームのようね。
さて、それじゃあ、始めましょうか。」
その声を合図にパインがファイアースピアーの呪文を唱える。
パインの頭上に魔法の槍が出現した。
ファイアーアローの3倍近い長さを持つファイアースピアーは、
パインの詠唱完了と共に山なりに窪みの中心に向かって
飛んで行った。
ファイアースピアーが着弾すると同時に
窪みは大きく盛り上がった。
同時に地面がビリビリと振るえる。
出来上がった砂山が連なった山々となり、
パイン達の方へと向かってきた。
そしてパインの近くで砂山は一段と大きくなり、
その頂上を突き破るように本体が姿を現わした。
それは正に化け物であった。
サンドワームは、上半身(?)を砂の中から出し、まるで蛇の
威嚇の様に鎌首を持ち上げ、こちらを威嚇する。
目らしきものは見当たらない。
開いた大きな口は、正に八目うなぎの口であった。
さらに口の周りにピンク色の触手の様な物が伸び、
うねうねと動き回っているのだ。
パインは、背筋に悪寒が走った。
キーラ:「ゾル。
いまよ。」
パインは、ゾルを見た。
ゾルの頭上に1m程の火の玉があった。
そしてゾルの頭上の火の玉がサンドワームへと放たれた。
火の玉は、真直ぐにサンドワームに向かうと直撃した。
サンドワームが炎に包まれる。
サンドワームは大きく身体を伸ばし、
頭を下にして砂に突っ込んだ。
地面が大きく揺れる。
そして、そのまま砂の中へと潜ってしまった。
キーラ:「どうやら、あまり効いていないようね。」
ゾル:「では、どうするんですか?」
その時砂が大きく盛り上がった。
キーラ:「来たわね。
とっておきのを見せてあげるわ。
よーく、見ておきなさい。
ファイアーボールの進化系よ。」
キーラが呪文を唱えると、頭上に火の玉が出現する。
パインは、すこし驚いた。
キーラの頭上にある火の玉は、
ゾルよりも遥かに小さいものだったからだ。
サンドワームが勢いよく飛び出し、威嚇の姿勢をとった。
同時に、キーラのファイアーボールが放たれた。
キーラの放った火の玉はサンドワームの胴部分に
真直ぐに飛んで行き命中した。
その時、キーラが『パチッ!!』と指をならす。
途端に火の玉が強い光を発し、
サンドワームが光りに包まれる。
パインは、思わず目を閉じてしまった。
『ドスン!』という何かが落ちるような音と共に地面が揺れた。
パインがゆっくりと目を開くと光は収まっていた。
そして見えた物は、胴部分で分断されたサンドワームだった。
切断部分は真っ黒に炭化しており、小刻みに震える上部と下部が
そこに横たわっていた。
キーラ:「なんとか、倒せたようね。
下に居りましょう。」
キーラは、フライの魔法を使い、パインとゾルは、
そのまま飛び降りた。
パイン:「近くで見ると、本当に大きいですね。
直径2m近くありそうですね。
それにしても凄い魔法ですね。
切断された部分が炭になってますよ。」
突然キーラは、パインに向けて右手のひらを見せる。
パイン:「???」
キーラ:「動くな!!」
キーラは、パインの手を掴み自分の方へと引き寄せた。
その時、サンドワームの頭がブルッと震えた。
頭だけになったサンドワームが飛び上がり、
巨大な口を大きく広げてパインとキーラめがけて飛んで来る。
パインは、見た。
キーラの伸びた腕。
開いた手のひら。
その手のひらの直前で巨大なサンドワームが空中に静止した。
そして、『バキバキッ』と音を立てると、
まるで全方向から大きな力で押しつぶされるように
圧縮されていった。
そして驚きに声を発する間もなく、小指の先ほどの固まりに
変わり下へと落ちた。
パイン:「!!!」
ゾル:「いっ、いまの魔法は、なんなんですか?」
ゾルは、見た事も聞いた事も無い魔法に驚きの声を上げた。
キーラ:「そうだったわね。
究極魔法って聞いた事ある?」
ゾル:「噂だけは、、、。
まさか究極魔法とでもいうんですか?」
キーラ:「まあ、呼び名は究極だけど、
ただのLV6魔法よ。」
パイン:「えっ、LV6!?
そんな魔法があるんですか?」
キーラ:「そんなに驚かないでよ。
LV5の魔法が存在するのだから、
LV6の魔法があってもおかしくないでしょ。」
ゾル:「いや、しかし、そんな魔法があること自体
何処にも載っていないですよ。」
キーラ:「まあ、そうでしょうね。
普通の人間なら耐性的に詠唱不可能だから。」
ゾル:「どういう意味ですか?
マスターキーラ。
貴方は普通の人間じゃないという意味ですか?」
キーラ:「私達の魔導書の最終章に書いてあるわよ。
そうね。
折角だからヒントをあげましょう。
私達の魔導書を読み解きなさい。」
ゾル:(私達の魔導書?)
ゾルが気になったのは、『私達』という部分だった。
キーラの言った『私達』とは、キーラ、セイラ、ゾーラの作った
魔導書の事を言っているのだろう。
それぞれ、精霊魔導書、神聖魔導書、邪神魔導書であり、
現在の魔導書の元になっている魔導書である。
魔導士であるならば、1度は目を通した事があるだろう。
その全てが序章から始まり、LV毎に記述され最終章に至る。
さらに最終章に関しては、
難解すぎる為に、それを解明した者はいない。
ゾルは思った。
大魔導士とよばれる3人は、3冊の魔導書に何かを隠したのだ。
そしてそれを解明することによって、何かを知る事ができる。
しかし、ゾルは直ぐにその考えを捨て去った。
この3冊を全て理解することは、寿命という点から
時間的に不可能だろう。
ゾルは何か手掛かりになる物は無いかと
キーラに質問しようとした。
しかし、キーラはそれを見透かしたように言った。
キーラ:「もう、これ以上は話せないわ。
さっさと手に入れて帰りましょう。」
3人は、サンドワームが罠を仕掛けていた辺りに移動した。
正面の壁に巨大な木の根が張っていた。
キーラ:「これね。」
キーラは、横に伸びた根の太い部分を指さした。
まるで何かが入っているかのように膨らんでいる。
キーラ:「この部分を切り取って。」
そう言うと、ローブの中から2本の糸鋸*3を
取り出し、2人に手渡した。
ゾルは、思った。
木の根に守られる剣。
正に聖剣ではないか。
もうすぐドラゴンキラーが手に入る。
そう思うと身体中に力がみなぎった。
長さ2m程のコブの部分が切り出された。
キーラ:「さあ、ドワーフ国に行きましょう。
パイン。
これ、持ってきてくれる。」
キーラはそう言いながら切り出した根を指さす。
ゾル:「あっ、それなら私が担ぎます。」
ゾルは、そう言うとすぐに根を担いだ。
キーラ:「あっ、そう。
じゃあ、おねがいね。」
そして3人は、ドワーフ国へと向かった。
3人がドワーフ国の洞窟の前に着いた時、
洞窟の前の広場には、不思議な装置が置かれていた。
それは、大きな釜のようなものが3つ、
複数の細い管によって繋がれていた。
ドワーフ王は装置の前に立ち自らせっせと作業をしていた。
キーラ:「バルガ=ドヴェル。
なかなか似合ってるわよ。」
ドワーフ王:「茶化すな。
これを扱える者がいないのだ。」
ドワーフ王はゾルの担いでいた根を見ると喜んだ。
キーラ:「それより、洞窟にサンドワームがいたのだけど、
放したのは貴方よね。」
ドワーフ王:「倒したのか?」
キーラ:「えぇ、倒したわよ。」
ドワーフ王:「それで、グレーターアントはまだいるのか?」
キーラ:「卵は少しあったけど、クイーンはいなかったわよ。」
ドワーフ王:「そうか、ならばあと少しだな。
うん、よかった。
さっきの質問だが、
グレーターアントを駆逐するために、
サンドワームを放したのは私だ。
サンドワームはグレーターアントを捕食し、
そしてエサが無くなればいずれ土に還る。」
キーラ:「そんなことだろうと思ったわ。
まあいいわ。
それより作業を始めて頂戴。」
ドワーフ王:「そうだな。
根をこちらへ。」
ゾルが根をドワーフ王の横におろすとドワーフ王は言った。
ドワーフ王:「良い根だ。」
ゾル:「???」
その言葉にゾルは戸惑った。
根の中に剣が封印されているわけではないのか?
もしかしたらこの根はドラゴンキラーを作るための
材料の一部なのか?
その疑問を晴らす為、ドワーフ王に質問した。
ゾル:「この根はドラゴンキラーの材料なのですか?」
ドワーフ王:「そうだ。
これからドラゴンキラーを作るんだよ。
ここからは時間がかかる。
部屋を準備させてあるので、
皆はしばらく休むと良い。」
キーラ:「そうね。
私達はしばらく休みましょう。」
*1:サンドトワーム
砂漠に生息する巨大ミミズ。
特徴としては、ヤツメウナギの様な歯を有しており、
環境に合わせて、その大きさが変化する。
*2:ファイアースピアー
ファイアーアローの上位(LV2)魔法。
ファイアーアローを詠唱可能な魔導士にとっては、
最も容易に修得可能な魔法となる。
さらに上位(LV3)の魔法には、最も有名なファイアーボールが
存在する。




