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グレイグ  作者: 夢之中
42/52

ドラゴンキラーその2


パインは能力(ナイトビジョン)を使い、広場を観察していた。

キーラ:「パイン。

    何が見える?」

パイン:「はい。

    中は、砂地になってますね。

    ここは、どうやら2階ぐらいの高さに

    位置するみたいです。

    階段とか梯子は見当たらないので、

    飛び降りるしかないですね。

    あと、建物の残骸と思われるものが、

    複数個所にあります。」

キーラ:「天井まではどのぐらいの高さがあるの?」

パイン:「そうですね。

    ここからだと、10mぐらいじゃないでしょうか。」

キーラ:「そんなに高くないってことね。」

パイン:「そうですね。

    んっ?」

キーラ:「どうしたの?」

パイン;「奥の方に、漏斗のように凹んだ部分があります。」

キーラ:「ふーん。」

パイン:「グレーターアントが、移動しています。

    あっ。

    漏斗の様な窪みに落ちました。

    どうやら上がれないようです。

    なんだあれ?」

キーラ:「どうしたの?」

パイン:「1匹のグレーターアントが窪みの中に

    滑り落ちて行ったように見えたんです。

    そのとき、窪みの中心で何か動いた気がしたんですが、

    気のせいかもしれません。」

キーラ:「それは、気のせいじゃないわね。

    サンドワーム*1って聞いた事がある?」

パイン、ゾル:「いえ。」

キーラ:「まあ、当然よね。

    この辺りじゃ、先ずお目にかかれないからね。

    ここよりずーーーっと東に行くと砂漠があるのよ。

    その砂漠に生息しているわ。」

パイン:「どんな生き物なんですか?」

キーラ:「そうねぇ。

    見た目は、巨大なミミズかしらね。

    口が特徴的でね。

    ヤツメウナギって見たことある?」

パイン、ゾル:「はい。」

キーラ:「あんな口をしているのよ。」

パイン:「うぁ、、、。」

ゾル:「・・・」

キーラ:「それの巨大なやつよ。

    飢餓状態に陥っていなければ、おとなしいわよ。

    蟻地獄の様に砂の中に潜って

    獲物が落ちてくるのを待つだけ。

    でも、飢餓状態に陥った個体は、とても狂暴よ。

    蛇の威嚇行動の様に、身体を持ち上げて、

    直接攻撃をしてくるわ。

    身の危険を感じた場合も同様の行動をするわね。」

パイン:「ところで、巨大ってどれぐらいなんですか?」

キーラ:「そうねぇ。

    私が目撃した最大の個体は、

    直径5m、長さ100mというところかしら。

    まあ、ここは狭いからそんなに大きくないだろうけど、

    直径1-2mは、あるんじゃないかしら。」

パイン:「直径5mって、、、。

    そんな化け物どうやって倒したんですか?」

キーラ:「倒してないわよ。」

パイン:「えっ。」

キーラ:「別に攻撃されたわけでもないしね。

    それでも、万が一の為に討伐検討はしたわ。

    そうだ、サンドワームの弱点を考えてみて。」

パイン:「そんな急にいわれても。」

ゾル:「そうですね。

   巨大ミミズということは、虫系ですね。

   だとすれば、炎ですかね。」

キーラ:「うん。

    よく勉強しているわね。

    他にはない?」

パイン:「んー。

    砂漠に住んでるんですよね。

    じゃあ、水とかですか?」

キーラ:「なかなかいい発想よ。

    大抵の生物は、環境に合わせた進化をしているわ。

    急激な環境変化には対応しづらいのよ。

    だから、変化が大きければ大きいほど効果があるのよ。」

ゾル:「なるほど。

   確かに炎も急激な変化ですね。」

キーラ:「その通りよ。

    まあ今回は、近くに水源が無さそうだし、

    炎で行きましょう。

    パイン。

    敵に向けてファイアースピアー*2を打ち込んで。

    敵が顔を出したら、私とゾルがファイアーボールを

    打ち込むわ。」

パイン:「わかりました。」


キーラは、ローブの中から小さな小瓶を多数取り出して、

その1つをパインに手渡すと、壁、天井、地面等に向けて

投げるように指示した。

パインは、小瓶を天井に向けて投げつけた。

小瓶は天井にぶつかると中の液体が天井に大きなシミを作った。

それを確認したキーラは呪文を唱えた。

すると、天井に着いた液体は、強い光を発する。

パイン:「なるほど。

    そう言う事ですか。」

キーラの意図を知ったパインは、キーラから小瓶を受け取ると、

次々と投げて行った。

キーラも呪文を唱える。

真っ暗だった空間は、その発光によって

次第に明るくなっていった。

そして小瓶が無くなる頃には、隅々まで見渡せる程に、

明るくなっていた。

キーラもゾルもパインの見ていた光景が分かるようになると、

洞窟の奥にある窪みを見た。

キーラ:「やっぱり、サンドワームのようね。

    さて、それじゃあ、始めましょうか。」

その声を合図にパインがファイアースピアーの呪文を唱える。

パインの頭上に魔法の槍が出現した。

ファイアーアローの3倍近い長さを持つファイアースピアーは、

パインの詠唱完了と共に山なりに窪みの中心に向かって

飛んで行った。

ファイアースピアーが着弾すると同時に

窪みは大きく盛り上がった。

同時に地面がビリビリと振るえる。

出来上がった砂山が連なった山々となり、

パイン達の方へと向かってきた。

そしてパインの近くで砂山は一段と大きくなり、

その頂上を突き破るように本体が姿を現わした。

それは正に化け物であった。

サンドワームは、上半身(?)を砂の中から出し、まるで蛇の

威嚇の様に鎌首を持ち上げ、こちらを威嚇する。

目らしきものは見当たらない。

開いた大きな口は、正に八目うなぎの口であった。

さらに口の周りにピンク色の触手の様な物が伸び、

うねうねと動き回っているのだ。

パインは、背筋に悪寒が走った。


キーラ:「ゾル。

    いまよ。」

パインは、ゾルを見た。

ゾルの頭上に1m程の火の玉があった。

そしてゾルの頭上の火の玉がサンドワームへと放たれた。

火の玉は、真直ぐにサンドワームに向かうと直撃した。

サンドワームが炎に包まれる。

サンドワームは大きく身体を伸ばし、

頭を下にして砂に突っ込んだ。

地面が大きく揺れる。

そして、そのまま砂の中へと潜ってしまった。

キーラ:「どうやら、あまり効いていないようね。」

ゾル:「では、どうするんですか?」

その時砂が大きく盛り上がった。

キーラ:「来たわね。

    とっておきのを見せてあげるわ。

    よーく、見ておきなさい。

    ファイアーボールの進化系よ。」

キーラが呪文を唱えると、頭上に火の玉が出現する。

パインは、すこし驚いた。

キーラの頭上にある火の玉は、

ゾルよりも遥かに小さいものだったからだ。

サンドワームが勢いよく飛び出し、威嚇の姿勢をとった。

同時に、キーラのファイアーボールが放たれた。

キーラの放った火の玉はサンドワームの胴部分に

真直ぐに飛んで行き命中した。

その時、キーラが『パチッ!!』と指をならす。

途端に火の玉が強い光を発し、

サンドワームが光りに包まれる。

パインは、思わず目を閉じてしまった。

『ドスン!』という何かが落ちるような音と共に地面が揺れた。

パインがゆっくりと目を開くと光は収まっていた。

そして見えた物は、胴部分で分断されたサンドワームだった。

切断部分は真っ黒に炭化しており、小刻みに震える上部と下部が

そこに横たわっていた。

キーラ:「なんとか、倒せたようね。

    下に居りましょう。」

キーラは、フライの魔法を使い、パインとゾルは、

そのまま飛び降りた。

パイン:「近くで見ると、本当に大きいですね。

    直径2m近くありそうですね。

    それにしても凄い魔法ですね。

    切断された部分が炭になってますよ。」

突然キーラは、パインに向けて右手のひらを見せる。

パイン:「???」

キーラ:「動くな!!」

キーラは、パインの手を掴み自分の方へと引き寄せた。

その時、サンドワームの頭がブルッと震えた。

頭だけになったサンドワームが飛び上がり、

巨大な口を大きく広げてパインとキーラめがけて飛んで来る。

パインは、見た。

キーラの伸びた腕。

開いた手のひら。

その手のひらの直前で巨大なサンドワームが空中に静止した。

そして、『バキバキッ』と音を立てると、

まるで全方向から大きな力で押しつぶされるように

圧縮されていった。

そして驚きに声を発する間もなく、小指の先ほどの固まりに

変わり下へと落ちた。

パイン:「!!!」

ゾル:「いっ、いまの魔法は、なんなんですか?」

ゾルは、見た事も聞いた事も無い魔法に驚きの声を上げた。

キーラ:「そうだったわね。

    究極魔法って聞いた事ある?」

ゾル:「噂だけは、、、。

   まさか究極魔法とでもいうんですか?」

キーラ:「まあ、呼び名は究極だけど、

    ただのLV6魔法よ。」

パイン:「えっ、LV6!?

    そんな魔法があるんですか?」

キーラ:「そんなに驚かないでよ。

    LV5の魔法が存在するのだから、

    LV6の魔法があってもおかしくないでしょ。」

ゾル:「いや、しかし、そんな魔法があること自体

   何処にも載っていないですよ。」

キーラ:「まあ、そうでしょうね。

    普通の人間なら耐性的に詠唱不可能だから。」

ゾル:「どういう意味ですか?

   マスターキーラ。

   貴方は普通の人間じゃないという意味ですか?」

キーラ:「私達の魔導書の最終章に書いてあるわよ。

    そうね。

    折角だからヒントをあげましょう。

    私達の魔導書を読み解きなさい。」

ゾル:(私達の魔導書?)

ゾルが気になったのは、『私達』という部分だった。

キーラの言った『私達』とは、キーラ、セイラ、ゾーラの作った

魔導書の事を言っているのだろう。

それぞれ、精霊魔導書、神聖魔導書、邪神魔導書であり、

現在の魔導書の元になっている魔導書である。

魔導士であるならば、1度は目を通した事があるだろう。

その全てが序章から始まり、LV毎に記述され最終章に至る。

さらに最終章に関しては、

難解すぎる為に、それを解明した者はいない。

ゾルは思った。

大魔導士とよばれる3人は、3冊の魔導書に何かを隠したのだ。

そしてそれを解明することによって、何かを知る事ができる。

しかし、ゾルは直ぐにその考えを捨て去った。

この3冊を全て理解することは、寿命という点から

時間的に不可能だろう。

ゾルは何か手掛かりになる物は無いかと

キーラに質問しようとした。

しかし、キーラはそれを見透かしたように言った。

キーラ:「もう、これ以上は話せないわ。

    さっさと手に入れて帰りましょう。」


3人は、サンドワームが罠を仕掛けていた辺りに移動した。

正面の壁に巨大な木の根が張っていた。

キーラ:「これね。」

キーラは、横に伸びた根の太い部分を指さした。

まるで何かが入っているかのように膨らんでいる。

キーラ:「この部分を切り取って。」

そう言うと、ローブの中から2本の糸鋸(いとのこ)*3を

取り出し、2人に手渡した。

ゾルは、思った。

木の根に守られる(つるぎ)

正に聖剣ではないか。

もうすぐドラゴンキラーが手に入る。

そう思うと身体中に力がみなぎった。

長さ2m程のコブの部分が切り出された。


キーラ:「さあ、ドワーフ国に行きましょう。

    パイン。

    これ、持ってきてくれる。」

キーラはそう言いながら切り出した根を指さす。

ゾル:「あっ、それなら私が担ぎます。」

ゾルは、そう言うとすぐに根を担いだ。

キーラ:「あっ、そう。

    じゃあ、おねがいね。」


そして3人は、ドワーフ国へと向かった。

3人がドワーフ国の洞窟の前に着いた時、

洞窟の前の広場には、不思議な装置が置かれていた。

それは、大きな釜のようなものが3つ、

複数の細い管によって繋がれていた。

ドワーフ王は装置の前に立ち自らせっせと作業をしていた。

キーラ:「バルガ=ドヴェル。

    なかなか似合ってるわよ。」

ドワーフ王:「茶化すな。

      これを扱える者がいないのだ。」

ドワーフ王はゾルの担いでいた根を見ると喜んだ。

キーラ:「それより、洞窟にサンドワームがいたのだけど、

    放したのは貴方よね。」

ドワーフ王:「倒したのか?」

キーラ:「えぇ、倒したわよ。」

ドワーフ王:「それで、グレーターアントはまだいるのか?」

キーラ:「卵は少しあったけど、クイーンはいなかったわよ。」

ドワーフ王:「そうか、ならばあと少しだな。

      うん、よかった。

      さっきの質問だが、

      グレーターアントを駆逐するために、

      サンドワームを放したのは私だ。

      サンドワームはグレーターアントを捕食し、

      そしてエサが無くなればいずれ土に還る。」

キーラ:「そんなことだろうと思ったわ。

    まあいいわ。

    それより作業を始めて頂戴。」

ドワーフ王:「そうだな。

      根をこちらへ。」

ゾルが根をドワーフ王の横におろすとドワーフ王は言った。

ドワーフ王:「良い根だ。」

ゾル:「???」

その言葉にゾルは戸惑った。

根の中に剣が封印されているわけではないのか?

もしかしたらこの根はドラゴンキラーを作るための

材料の一部なのか?

その疑問を晴らす為、ドワーフ王に質問した。

ゾル:「この根はドラゴンキラーの材料なのですか?」

ドワーフ王:「そうだ。

      これからドラゴンキラーを作るんだよ。

      ここからは時間がかかる。

      部屋を準備させてあるので、

      皆はしばらく休むと良い。」

キーラ:「そうね。

    私達はしばらく休みましょう。」



*1:サンドトワーム

 砂漠に生息する巨大ミミズ。

 特徴としては、ヤツメウナギの様な歯を有しており、

 環境に合わせて、その大きさが変化する。 


*2:ファイアースピアー

 ファイアーアローの上位(LV2)魔法。

 ファイアーアローを詠唱可能な魔導士にとっては、

 最も容易に修得可能な魔法となる。

 さらに上位(LV3)の魔法には、最も有名なファイアーボールが

 存在する。



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