ドラゴンキラー
アンナとライがお使いに行っている時、
キーラ達は軍議を続けていた。
キーラ:「ジェイク。
連動魔法陣の修復も急がせて。」
ジェイク:「はっ!!」
キーラ:「それと避難は、順調?」
ジェイク:「1000人程が撤退しましたが、
明らかに魔導士の数が足りません。」
キーラ:「そう。
なら、次に転移する魔導士に指示して。
バートランド王国とドリム公国に
魔導士を10人、いや20人送るように依頼して。」
ジェイク:「はっ!!」
キーラ:「さて、皆も一番気になっている件について
話しましょう。」
パイン:「それは、ドラゴンについてですか?」
キーラ:「そう、ドラゴンについてよ。」
パイン:「ドラゴンはザラスの味方になったのでしょうか?」
キーラ:「味方というよりは、下僕あるいはペットかしらね。」
パイン:「そんなことが出来るんですか?」
キーラ:「邪神魔法なら可能よ。
人間ほど知能の高い生物は無理だけど、
知能が低い生物なら可能なの。
ところで、今回ドラゴンと戦ったわけだけど、
どう思った?」
パイン:「あの鱗が厄介ですね。
あれを何とかしないと、とても勝てる気がしないです。」
キーラ:「そうよね。
あのドラゴンの鱗は物理攻撃を弾くだけでなく、
最高の魔法耐性を持っているのよ。
最強の盾の素材として使われるぐらいだしね。
今のままだと、とても勝てる気がしないわよね。」
パイン:「師匠は昔、上位ブラックドラゴンと戦ったと
言っていましたよね。
どうやって倒したんですか?」
キーラ:「そうね。
あの時とは状況がかなり違うからね。」
ねぇ、バルガ=ドヴェル。」
ドワーフ王:「なんじゃい?」
キーラ:「ドラゴンキラーは、まだある?」
ゾル:「!!」
その発言にもっとも反応したのはゾルだった。
ドワーフ王:「ドワーフ国には無い。
洞窟まで取りに行かねばならん。」
キーラ:「洞窟?」
ドワーフ王:「あぁ、古い採石場だ。」
キーラ:「そう。
なら取りにいかないとね。」
ドワーフ王:「・・・」
キーラは、ドワーフ王を一瞬見ると言った。
キーラ:「バルガ=ドヴェル。
何か問題でも?」
ドワーフ:「いっ、いや。」
キーラ:「なら、取りに行くメンバーを決めましょうかね。」
ゾルは真っ先に手を上げた。
ゾル:「ぜひ参加させてください。」
キーラ:「あぁ、そう。
じゃあ、1人目はゾルで決まりね。」
そしてキーラ、パイン、ゾルの3人に決まった。
キーラ:「さて、バルガ=ドヴェル。
ドラゴンキラーのある洞窟への案内を頼めるかしら。」
ドワーフ王:「案内するのは、構わないが、
中に入るのは遠慮しておく。」
キーラ:「やっぱり、何かあるのね。」
ドワーフ王:「実は、あの洞窟には、
グレーターアントが住み着いている。
それでドワーフはあの採石場を放棄した。」
キーラ:「そうか、グレーターアントは、
ドワーフの天敵だからね。」
ドワーフ王:「あいつらは生理的に受け入れられない。
あいつらを見るとなぜか身体が動かなくなる。」
キーラ:「じゃあ、しょうがないわね。
明日、洞窟の入口まで案内して頂戴。」
ドワーフ王は、やるきのない返事をした。
ドワーフ王:「わっ、わかった。」
一通りの話が終わるとキーラはパインに話しかけた。
キーラ:「パイン。
魔法の修行は続けてる?」
パイン:「はい。
おかげ様で、LV1の魔法の大半は修得できました。」
短い空き時間の中、キーラは師匠と弟子という関係の中で、
パインに魔法の指導を行っていた。
素早く欠点を見抜き、的確に指導を行う。
これにより、パインの魔導士としての能力は伸びて行った。
キーラ:「なら、そろそろ、LV2の魔法でも教えましょうかね。
ファイアーアローの魔法は使えたわよね。」
パイン:「はい。」
キーラ:「なら、修得は容易いわね。
全魔法の中で、もっとも簡単に修得できる魔法と
いっても過言ではないわ。」
キーラとパインは場所を移動すると魔法の修行を始めた。
そしてパインの修行が終わりに近づいた時、
アンナとライがキーラ達の元に現れた。
2人の後ろにはビックスがいた。
キーラ:「まぁ、ビックスじゃない。
まさか来てくれるとは思わなかったわ。」
ビックスは苦笑いをすると言った。
ビックス:「師匠、わざとらしい言葉は不要じゃ。
呼びつけたのが分からないほど
耄碌しとらんわい。」
キーラ:「やっぱりわかっちゃったのね。」
ビックス:「死者の目を所望なのじゃろ。
死者の目を使えるようにするには、
時間がかかるからの。
わしがやらなくて誰がやるんじゃ?」
キーラ:「そうよねぇ、やっぱりビックスしかいないわね。」
ビックスはニコニコと笑いながら言った。
ビックス:「そうじゃろうな。
早速作業にかかるわい。
場所を用意してくれ。」
そしてビックスは、死者の目の作業に入った。
ライ:「キーラ、死者の目って何なんだ?」
キーラ:「ビックスに会った時、
人狼だって見破られたでしょ。」
ライ:「あぁ、驚いたよ。」
キーラ:「あの力の一部が死者の目よ。
言葉通り、死者を見る目。
死者の目は魔法具を
見つけられるのよ。」
ライ:「それで、あの爺さんというわけか。」
キーラ:「貴方に行ってもらったのにも意味があるわ。
その力を見せたかったからなのよ。」
ライ:「俺にか?」
キーラ:「えぇ、ビックスの力を信じたでしょ。」
ライ:「もちろんだ。
凄い力だ。」
キーラ:「ビックスが作った魔法具も信じる?」
ライ:「当然だ。」
キーラ:「ならいいわ。
今回の作戦は主力の私達以外にこの砦にいる兵士達の
協力も必要なのよ。
人はね、直接経験するか、直接経験した人の話以外は
あまり信じないのよ。
もし、魔法具が透明化の魔法などで
見えなくなっていたとしたら、見えない物が存在すると
信じられるかしら?」
ライ:「なるほど。
兵士達に死者の目の力を信じてもらえるように
行動しろという事か。」
キーラ:「えぇ、そう言う事よ。」
ライ:「わかった。
やってみよう。」
次の日の朝、キーラ、パイン、ゾル、ドワーフ王の4人は、
ドワーフ国領内の山中にある洞窟を目指した。
途中何度かゴブリン等の一団を蹴散らし、
そして昼前には目的の洞窟に到着した。
ゾルは、一人心が躍っていた。
ドラゴンキラーという名前がさらに拍車をかけた。
パインは、能力の剣。
アンナは、攻めの剣。
アリスは、受けの剣。
特別な剣を得ていないのは、自分だけだった。
だとすると、ドラゴンキラーは、当然自分が手にするはずだ。
ゾルは、そう考えていた。
これほど心躍ることは今までになかった。
ゾルは意気揚々と言った。
ゾル:「それじゃあ、早速手に入れましょうか。
ドラゴンキラーを。」
一人張り切るゾルに対して3人は少し呆れていた。
ドワーフ王:「中は、一本道だ。
魔法の燭台が設置されているから
迷う事はないだろう。
再度言うが、自分はいかないからな。」
キーラ:「わかっているわよ。
じゃあ、ドワーフ国に戻って、
準備をしておいて。」
ドワーフ王:「わっ、わかった。」
キーラ:「それじゃあ、行きましょう。」
洞窟は直径5m程の穴であり、中は真っ暗闇だった。
3人は剣を抜くと剣先に魔法の明かりを灯した。
次にドワーフ王から教えてもらった呪文をキーラが唱えた。
魔法が発動すると、洞窟の壁際に設置されたいる燭台が
奥に向かって次々と点灯して行くのが確認できた。
地面には大きな岩がゴロゴロと転がっていたが、
進む分には問題ない明るさだった。
3人は、慎重に先を進んで行った。
しばらく進むと、大きな岩は極端に減り、
砂利の様な小さな石に変わった。
その時、ナイトビジョンの能力を
発動していたパインが支道を見つけた。
パイン:「あれは、支道かもしれません。」
3人は、支道へと繋がる位置まで移動した。
パイン:「ドワーフ王は一本道と言っていましたよね。
何故支道が?」
支道の入口を調べると、まるで磨いたようなきれいな通路が
繋がっていた。
キーラ:「グレーターアントが掘ったみたいね。
先へ進んで、後ろから攻撃されるのは、いやよね。
封鎖しちゃいましょう。」
そう言うとキーラはスパイダーウェブ*1の呪文を唱えた。
直ぐに効果は表れた。
蜘蛛の巣の糸を太くした様なネットが現れ支道の入口を塞いだ。
キーラ:「これで足止めできるわ。
蟻は、火を使わないからね。」
途中いくつかの真新しい支道をスパイダーウェブで
封鎖しながら先へと進んだ。
キーラは途中何度か立ち止まり、壁に耳を当てて
何かを確認した。
そして立ち止まると2人に話した。
キーラ:「少し気になることがあるわ。」
パイン:「えっ、なんです?」
キーラ:「わからない?
ドワーフ王は、この洞窟はグレーターアントが
住み着いたって言ってたでしょ。」
パイン:「はい。」
キーラ:「なのに、いままで1匹も出会って無いのよ。」
パイン:「確かにそうですね。」
ゾル:「グレーターアントが住処を変えたとか?」
キーラ:「さっきの支道は、それほど古くなかったわ。
それに、もう一つ気になる事があるの。」
ゾル:「それは?」
キーラ:「地面よ。」
パイン:「地面?」
キーラ:「そう、地面。
入り口あたりの地面は、
大きな岩の集まりだった。
でも、いまはどう?
砂の様に細かいのよ。」
ゾル:「それは、グレーターアントがやったのでは?
グレーターアントは、酸で岩を溶かすと
言われていますしね。」
キーラ:「私も最初は、そう思ったわ。
でも、あれだけ大きな身体だと、
この砂は細かすぎないかしら?」
パイン:「そうですね。
運搬するにしても、こんなに細かいと、
やりにくですね。」
ゾル:「では、なぜ?」
キーラ:「わからないわ。
でも、何かが起こっているのは確かね。
この先は、さらに慎重に進みましょう。
なるべく音を立てないように。」
その後、3人はより慎重に本道を進んで行った。
そして、しばらく進んだ後、広い空間が現れた。
その空間は非常に広く、多数の燭台があるにも関わらず、
闇に覆われていた。
*1:スパイダーウェブ
言葉通り蜘蛛の巣状のネットである。
しかし、その糸は魔法の糸で出来ている。
強度、柔軟性に富んでおり、刃物等での切断は困難であるが、
火に弱く燃焼することにより排除可能。
火を使わない生物の侵入防止にはうってつけである。




