表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレイグ  作者: 夢之中
40/52

ザラス


次の日の朝、キーラ、ゾル、ライは目を覚ました。

人狼の再生能力は尋常ではなかった。

それはパインに与えられた能力に匹敵する力だった。

キーラは、目を覚ますとすぐに動いた。

主要なメンバーを集めると軍議を始めた。


パイン:「師匠。

    もう大丈夫なんですか?」

キーラ:「えぇ、大丈夫よ。

    魔力不足が原因だからね。

    ゾルも同じよ。

    連日のフライの魔法で、かなり魔力が減っていたしね。

    私の場合、魔晶石が補助してくれたしね。

    ライは人狼だけあって、凄い再生能力ね。

    さて、話を変えましょう。

    話を聞く限り、ドラゴンはザラスの手に落ちたと

    思った方がいいわね。」

ライ:「あぁ。

   ザラスは間違いなく、何かしらの儀式を行っていた。」

キーラ:「そう。

    これで確定ね。

    間違いなくザラスは死んでいるわね。」

ライ:「んっ?

   何を言っているんだ。

   ザラスが生きている事は俺自身が人狼化している事で

   証明されている。」

キーラ:「あぁ、そうね。

    言い方を変えましょう。

    肉体は死んでいる。

    でも魂は生きている。」

ライ:「どういう意味だ?」

キーラ:「ザラスは元々精霊魔導士なのよ。

    そして挫折して邪神魔導士になったのよ。

    そのためには、精霊との契約を解除して、

    邪神と契約しなければならないの。

    そうしないと上位(LV4以上)の魔法は使えないわ。

    パイン。

    精霊との契約は済ませているわよね。」

パイン:「はい。

    魔法学院の卒業時に済ませました。」

キーラ:「契約の時に何をした?」

パイン:「契約書に自分の血で署名しました。」

キーラ:「そうね。

    契約は、魂の契約なの。

    契約が解除される時は、自ら契約を解除するか、

    あるいは、死んで魂が解放されるかしかないわ。」

ライ:「ザラスの魂が生きているから呪いが解けないと?」

キーラ:「そう。

    ザラスは、肉体的には死んでいるけど、

    魂は解放されていない状態なの。」

ゾル:「それってまさか。

   リッチ*1?」

キーラ:「そう。

    ザラスはリッチになったのよ。」

ライ:「リッチになるとどうなるんだ。」

キーラ:「さっき契約しなければ上位(LV4以上)の魔法を

    行使できないと言ったけど、

    実は行使する方法はあるのよ。

    それは、リッチになる事。

    リッチは特殊でね。

    生前に覚えた全ての魔法を契約無に行使できるの。」

パイン:「えっ。

    それって、邪神魔法と精霊魔法の両方をLV5まで

    使えるってことですか?」

キーラ:「そう言う事になるわね。」

ゾル:「んーっ。」

キーラ:「さらに、ドラゴンを従えた。

    これは、最悪ね。」

ライ:「キーラ、何故ザラスの事をそこまで知っている?」

キーラ:「そうね。

    話す機会かもしれないわね。」


そう言ってキーラはザラスの事を話始めた。


=====


私が初めて魔法を習ったのは、

モーリーという魔導士の元だったの。

この頃は魔導学院なんかは無くて、高名な魔導士の元で

弟子として修業をするのが一般的だったのよ。

モーリーの元には多くの弟子がいたけど、

その中の一人にザラスがいたの。

ザラスは弟子の中でも秀逸であり、

大魔導士の卵と呼ばれるほどだったわ。

しかし、不幸は突然訪れたの。

ザラスがLV5の魔法を修得しているときにそれは起こったわ。

ザラスが修行中に突然倒れたのよ。

モーリーは、ザラスを調べたわ。

そして身体を見た時に悟ったの。

ザラスは、魔法耐性が低いという事をね。

魔法を行使する為には、魔力を一か所に集める必要があるの。

この時、集約した魔力が術者の肉体にも

少なからず影響を及ぼすのよ。

LVが上がるに従い影響力は増大するわ。

ザラスは、悲鳴を上げる肉体を抑え込んで

修行をしていたの。

モーリーは真実を知って、魔法耐性の説明を怠ったことを

謝罪した上でザラスにそれを説明したわ。

次の日ザラスはモーリーの元を去ったの。

そして次にザラスの事を知った時は、

邪神魔導士のザラスだったわ。


=====


パインは、この話を聞いて初めて魔法耐性の重要性を

認識したのだった。


パイン:「何故、邪神魔導士なのでしょう?」

キーラ:「邪神魔法は、そのほとんどが儀式を行うの。

    そして媒体となる物を必要とするの。

    精霊魔法の場合は、その媒体が術者の肉体という訳ね。」

パイン:「そうか。

    魔力の影響を受けるものを術者の肉体から他の媒体に

    変えたというわけですね。」

キーラ:「そう言う事ね。

    ザラスはその負荷軽減の為に魔晶石を

    手に入れようとしていたと思っているわ。

    もう一度精霊魔導士に戻ろうとしたのかもしれないわ。

    私が魔法防壁を発動するために、魔晶石の粉末を

    ばらまいたの見ていたでしょ。

    あれと同じことよ。

    そして、最後にザラスを見たのは

    火口に落ちて行く姿だった。

    私は、彼は亡くなったと思っていたわ。」

パイン:「なるほど。」

ライ:「それで、どうすればザラスを倒す事ができる?」

キーラ:「リッチであるならば、肉体をいくら倒しても

    復活してしまうわ。

    そもそも死体(リッチ)だしね。

    魂はフィラクテリーという魔法具に封印されているの。

    この魔法具を破壊すれば倒す事が可能よ。」

パイン:「さすが師匠ですね。

    邪神魔法にも詳しいのですね。」

キーラ:「えっ、そうね。」

ライ:「それで、その魔法具(フィラクテリー)は何処にある?」

キーラ:「残念だけど、まだ分からないわ。」

ライ:「そうか。

   では、見つける方法は無いのか?」

キーラ:「方法は無いわけでは無いわ。」

ライ:「では、指示してくれ。

   俺がそれをやろう。」

キーラ:「そうねぇ。

    一つ条件があるわ。」

ライ:「なんだ?」

キーラ:「場所が分かったとしても、

    指示があるまで行動に出ないこと。」

ライ:「どうしてだ。」

キーラ:「ダミーが数多くあるからよ。」

ライ:「ダミーだと?」

キーラ:「そう。

    大切なものを守るためにダミーを作っているはずよ。

    本物を含めて多くても5つね。」

ライ:「もっと多く作っている事は無いのか?」

キーラ:「ダミーも魂を必要とするから限界があるのよ。

    6割以上の魂が存在していないと生存できないし、

    ダミーを1つ作るのに魂を1割必要とするわ。

    それに、魔法具(フィラクテリー)を壊すと

    ザラスは直ぐに知る事ができるのよ。」

ライ:「壊されたのを知ったら移動されてしまうという事か?」

キーラ:「いえ。

    本物もダミーも一度設置したら移動できないの。

    移動するためには、

    時間をかけて儀式をしないといけないの。

    恐ろしいのは、リッチが瞬時に設置場所に

    転移できるという事よ。

    警戒されたら、この作戦は失敗に終るわ。」

ライ:「だとすると、ザラスを倒し復活するまでの間に

   魔法具(フィラクテリー)を破壊するということか?」

キーラ:「その通りよ。

    それしか方法は無いわ。

    ただ、、、。」

ライ:「ただ?」

キーラ:「私は、リッチでもないし、

    リッチと戦った事もない。

    その全てを知っているわけでは無いわ。」

ライ:「なるほど。

   キーラの知らない何かがあるかもしれないということか。

   そればかりはどうしようもないな。」

キーラ:「えぇ、その場で対処するしかないでしょうね。

    今は、この事を議論するのはやめましょう。」

ライ:「ところで、魔法具(フィラクテリー)を見つける方法が

   あると言っていたが、どうすればいいんだ?」

キーラ:「そうね。

    まずは、お使いに行ってもらおうかしらね。」



数分後、ライとアンナは、ドリム公国にいた。

途中2人は別れ、アンナはドリム大公の元へと向かった。

ドリム大公はアライン、エレナと会談中であった。


ドリム:「なにっ、アンナが戻ったと。

    直ぐにここに連れてくるのだ。」


そしてアンナは、ドリム、アライン、エレナのいる部屋へと

招かれた。


アンナ:「マスターキーラからの書状です。」

そう言って書状をドリム大公に渡した。

アンナ:「アライン様もご覧になり返答をお願いします。」


書状には以下の内容が書かれていた。

・1-2日の間に人魚の涙砦にメルトニア兵が投降を始めるので

 投降兵を纏めた上で反撃を検討してほしい。

 作戦開始時期については別途相談したい。

・王国、公国内にゴルザの間者が入り込んでいる可能性が高く、

 反対する者達の中に仲間がいるだろう。

 ゴルザは既に敵の手に落ちている。


ドリム:「わかった。

    キーラに直ぐに検討すると伝えてくれ。」

アライン:「私は、すぐに砦に向かうとしよう。」

アンナはその言葉を聞くと、一礼して部屋を出ようとした。


後ろから小走りに近づいてくる足音がする。

アンナが振り返るとエレナが立っていた。

エレナ:「アンナ。」

アンナ:「エレナ様。」

エレナ:「無事でよかった。」

アンナ:「心配していただき、ありがとうございます。

    何時の日か、必ず戻ります。

    その時はまた護衛をさせて頂いてもよろしいですか?」

エレナ:「もちろんよ。

    その時は絶対にお願いするわ。」

アンナ:「それを聞いて安心しました。

    仲間が待っていますので、これで失礼します。」

そしてアンナは一礼した後、部屋を後にした。



その頃、ライはビックス魔道具店の前に立っていた。

ライ:「ここか。」

扉を開け、中に入ると一人の老人がいた。

老人は、ライを見るなり驚きに満ちた顔をして言った。

ビックス:「お主、人狼じゃな。」

ライは驚いた。

一見で見破られたのは初めてだった。

ビックス:「何をしに来られた。

     わしの命を所望かな?」

ライは、その言葉にさらに驚いた。

ライ:「いっ、いや、そうではない。

   魔道具を買いに来たのだ。」

ビックスは、ニッコリと笑顔を返した。

ビックス:「それで、何を御所望ですかな?」

ライは、黙って紙きれを手渡す。

そこには、

・死者の目の力を持った魔導具 あるだけ

・銀製品           あるだけ

と書かれていた。

ライは、続けて、小さな小袋を渡した。

ビックスはそれを受け取ると中をみた。

そこには多数の千年草の実が入っていた。

ビックスはライを人睨みすると言った。

ビックス:「お主、これをどこで手に入れたんじゃ?」

ライ:「そうだ。

   伝言を頼まれていた。

   よく意味がわからんが、

   『マリオネットの舞台は大成功したわ。』

   だったかな?」

ビックス:「なるほど。

     そういうことじゃな。

     師匠はリッチと戦う事になったといわけか。」

ライ:「良く分かったな。」

ビックス:「これでも大魔導士の弟子じゃぞ。

     魔導具に関してはわしが一番じゃしな。」

ライ:「代金はそれで足りるのか?」

ビックス:「十分じゃ。

     それよりも手伝ってくれ。

     商品が多すぎる。」

ライが大きな袋を手に持ち、その中にビックスが銀製品を

放り込んで行く。

ライ:「ところで爺さん。」

ビックス:「店名は見なかったのか?

     わしはビックスじゃ。」

ライ:「すまないビックス。

   最初に会った時、何故俺が人狼だと分かった?」

ビックス:「そうじゃな。

     人以外を見分ける目を持っているとでも

     言っておくかの。」

ライ:「生まれつきなのか?」

ビックス:「そうじゃな。

     生まれついての能力じゃな。」

ライ:「そうか。」

ビックス:「さて、これで終いじゃな。

     入口で待っていてくれ。」

ライが入口で待っていると、ビックスが頭ほどの大きさの袋を

手に持って現れた。

そして、玄関のカギを締めた。

ライ:「もう店じまいか?」

ビックス:「何を言っとるんじゃ、わしも行くんじゃよ。」



*1:リッチ

 高位の魔導士が強力な魔法で自分自身の体をアンデッドに

 変えることで生まれる。

 リッチは生前に覚えた魔法を契約することなく全て

 使用する事が可能となる。

 自身の魂はフィラクテリーと呼ばれる魔法具に

 封じ込められる。 

 このため、物質的なリッチを倒したとしても、

 10日前後で完全復活することになる。

 復活を阻止する為には魔法具(フィラクテリー)

 破壊する以外には方法はない。

 フィラクテリーには種類制限はなく、

 生命を持つ物以外であれば、

 小箱であったり、指輪やアミュレットであったりと

 様々な物を使用することが出来る。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ