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グレイグ  作者: 夢之中
38/52

メルトニア軍


リーモの村は静かだった。

メルトニア兵と思われる兵士が数人見回りをしている。

建物の前には歩哨はおらず、無警戒と言ってもいいだろう。

そんな中それを目撃してたものがいたとしたら、

異様な光景と思っただろう。

暗闇の中、2つの指輪が空中に浮遊しているのだ。

その指輪は、時には早く、時にはゆっくりと、

村の中央広場に向かって移動し、

檻の前まで進むと動きを止めた。

ドワーフ王は、イビキをかいて寝ていた。

しばらくすると、ドワーフ王の肩辺りが僅かに光を発した。

ドワーフ王は、突然起き上がると、辺りを見回した。

そして、囁くような声を耳にした。

???:「バルガ=ドヴェル。」

ドワーフ王:「んっ?」

???:「何を呑気に寝ているの?」

ドワーフ王:「んんんっ?

      その声。

      まっ、まさかキーラか?」

キーラ:「声が大きい。

    もっと小声で。」

ドワーフ王:「すっ、すまない。

      しかし、何でこんなところに?」

キーラ:「決まってるじゃない。

    貴方を助けに来たのよ。

    長話は危険よ。

    巡回兵が戻ってくる前に、おさらばしましょう。」

ドワーフ王と2つの指輪は光の中に消え失せた。


キーラ達とドワーフ王は、リーモ砦の軍議室にいた。

キーラ:「さて、何があったのか教えて頂戴。」

その言葉にドワーフ王は、ことの経緯を話始めた。


=====

数日程前、ドワーフの国に1人の商人を名乗る者がやってきた。

商人は、洞窟内を一通り見学すると、豪華な装飾をほめてから

足りないものがあると言った。

わしが、それが何かを聞くと、商人は香りだと言う。

商人が言うには、この装飾に香りが合わされば、

王宮にも勝る宮殿が出来上がると言うのだ。

そこでわしは商人にそれを依頼した。

次の日、ローブを着て仮面をした者が現れた。

そして、洞窟の入口で香木を焚くと言うのだ。

わしはそれを許可した。

香りづけの作業は進んだ。

洞窟内は良い香りで充満していった。

その時突然背中の魔法陣が光った。

今まで経験した事の無い激痛が身体を襲った。

わしは、その激痛にあがらいきれなくなり、

そのまま意識を失った。

=====


ドワーフ王:「そして気がついたら檻の中という訳だ。」

キーラ:「なるほどね。

    そんなことをしたのは、

    やっぱり、ドワーフ軍を作る為かしらね?」

ドワーフ王:「檻の中にいたが色々と話は聞こえた。

      ドワーフ軍か。

      それもあるだろうが、もう一つある。」

キーラ:「もう一つ?」

ドワーフ王:「あの村からずっと南に行った場所に

      洞窟があるらしい。

      その洞窟が落盤によって塞がってしまった。

      それの復旧の為らしい。

      なにせ洞窟作りにおいては、

      ドワーフに勝る者はないからな。

      なんでも、バーランド王国側に繋がっていると

      言っておったぞ。」

パイン:「それって、あの遺跡の洞窟のことでは?」

キーラ:「パインの言っている事は当たりの様ね。

    あの村から洞窟までは、数日かかるわ。

    それで、ドワーフ達は出発したの?」

ドワーフ王:「あぁ、昨日の朝に出発した。」

キーラ:「そう。

    じゃあ、私達も急がないとダメね。

    洞窟の復旧をさせてはならないわ。」


次の日の昼、キーラ達は、砦の建物の屋上に立っていた。

キーラ:「私とゾルは、あの洞窟へ向かうわ。

    パイン達は、リーモ村の件をよろしくね。」

パイン:「はい、お気をつけて。」

パイン達は、飛んで行くキーラとゾルを見送ると、

早速行動に移った。

パイン達の目的は、リーモ村に存在するであろう

チャージの魔法陣を兵士に危害を加えずに破壊することだった。

そこで、ジェイク達が率いる兵士達と

パイン達との共同作戦を立案した。


その日の夕方、ジェイク含め100人程の兵士達は、

リーモ村の側の森の中に潜み、パインの合図を待っていた。

パインはというと、カモフラージュの能力を発動し、

村の中を探索していた。

パインに同行した者は、ライだった。

パインが一つの建物に近づいた時、ライは建物の屋根にいた。

ライは、当然であるが透明化の魔法やカモフラージュの能力を

持っていなかった。

しかし、人狼の能力を生かした行動をとっていた。

それは、まるでシーフであった。

足音を消し、物陰に隠れて監視者の目線を避けていた。

パインが1つの建物の窓から中を除こうとした時、

ライがパインの横に飛び降り、語り掛けた。

ライ:「中に見たことが無い魔法陣がある。

   確認してくれ。」

パインは、キーラから渡された透明な石を目の前にかざした。

その透明な石を通して物を見たとき、魔晶石がある場合は、

赤く光って見えるという石だった。

パインは、部屋の中を覗いた。

部屋は横長で、左右に扉があった。

部屋の中には2人の兵士が何かを話していた。

その中間の机の上に真っ赤に光る板とその上に描かれた

魔法陣を見つけた。

パインは、小声でライに言った。

パイン:「見つけました。

    たぶんあれがチャージをする魔法陣でしょう。」

ライ:「そうか。

   ならば、合図をするぞ。

   準備はいいか?」

パイン:「はい。

    頼みます。」

ライは、小さな玉を取り出すと、空に向けて力強く投げた。

小さな玉は、村の上空でまばゆいばかりの光を発した。

同時に(とき)の声が聞こえた。

その声に村の中はにわかに慌ただしくなった。


 「なんだ、あの声は、、、。」

 「敵襲か?」

 「おいおい、なんだってんだ。」

 「全員、門前に集合せよ!!」


集合の声に部屋の中の2人も建物を後にした。

2人は建物に忍び込んだ。

ライは腰に下げたスクロールを取るとパインに渡す。

パインは、スクロールを確認すると魔法陣の上に広げた。



一方キーラとゾルは、休憩を挟みながら南へと急いでいた。

そして次の日の朝、洞窟の近くまで到達することができた。

洞窟の周りには、大規模な野営地があった。

それは1万前後の兵士達が野営していたのだろう規模であった。

していたとは、既に野営地には人影が無かったからだ。

朝にも関わらず、人の気配が全くないのだ。

そればかりか、歩哨すらいなかった。

キーラ達は野営地の近くに降り立つと、野営地の中を調査した。

キーラ:「どうやら一足遅かったようね。

    想像以上にドワーフ達の作業が早かったようだわ。」

ゾル:「砦は大丈夫でしょうか?」

キーラ:「そうねぇ。

    ラング将軍によるわね。」

そう言いながら、野営地の中心付近の大きなテントを

調べて回わった。

そして、1つのテントの中で、目的の物を発見した。

キーラ:「見つけたわ。

    さっさと壊しちゃいましょう。

    ゾル。

    その辺りにある箱を調べてみて。」

キーラが、呪文を唱えている間にゾルは、辺りの箱を物色した。

ゾルは、キーラが呪文を唱え終えるのをまってから話した。

ゾル:「マスターキーラ。

   魔晶石が大量にあります。」

キーラ:「やっぱりあったわね。

    これは、ありがたく貰って行きましょう。」

そう言って大量の魔晶石をローブの中にしまい込んで行く。

それを見ていたゾルは驚いた。

ゾル:「えっ、そのローブ、一体どうなっているんですか?」

キーラ:「気が付いたようね。

    まっ、当然か、、、。

    このローブはね、特別製なのよ。

    ローブに魔法陣が縫い込んであって、秘密の倉庫に

    繋がっているのよ。」

ゾル:「えっ、どういうことですか?」

キーラ:「転移の魔法陣の応用よ。

    簡単に言うならば空間を接続する魔法かしらね。

    魔法陣の先には、私の倉庫の棚があって、手を伸ばして

    そこから出し入れできるのよ。

    ローブの中にアイテムをいっぱい持つのはいやでしょ。」



キーラ達が、野営地に到着した頃、人魚の涙の砦のラングの元に

兵士が飛び込んできた。

ラング:「何事だ?」

兵士:「東の地にメルトニアと思われる大軍が現れました。

   少数ですが、ドワーフの部隊も混じっているようです。」

ラングは、予期していた様に質問した。

ラング:「それで、兵力は?」

兵士:「およそ1万。」

ラング:「防衛体制をとるように指示しろ。」

そう言うとラングは、あの日の事を思い出した。

それは、最後にラキがやってきた時の事だった。


=====


ナガットの尋問を終えた後、キーラはラングの傍にやってくると

耳打ちした。


キーラ:「一月以内にこの砦に大軍が押し寄せてくるわよ。」

ラング:「なんだと!!。」

キーラ:「しーっ。

    黙って聞いて。

    メルトニアが落ちたのは知ってるわよね。」

ラングは、黙って頷く。

キーラ:「現在メルトニア軍は、敵の手中にあると思われるわ。

    でもメルトニア軍は、魅了で操られているのよ。

    後で防衛の為の魔導士を派遣するから、

    できるだけ戦いは避けてほしいの。」

ラング:「んっ、そう言う事か。

    わかった。」


後日、キーラの発言通りに防衛の為の策と共に

魔導士が派遣されてきた。

この時、ラングは考えた。

ラキの指示通りに動かされるのは(しゃく)だったし、

大軍が来るという話も半信半疑だった。

しかし、それを無視して本当に大軍が来た場合、

その責任を負うのは自分である。

準備をしたうえで大軍が来なければ、

その責任はラキにある。

黙ってラキに従うのが最善の策である。

そう結論付けた。

そして黙々と防衛の為の準備に励んだのだ。


=====


ラングはぽつりとつぶやいた。

ラング:「やはり、侮れない相手だな。」


防衛線は、非常に単純な方法だった。

城門の補修と、防衛用の柵および罠の設置、

そして、巨大な投石機やバリスタの設置だった。

罠といっても、強力な罠ではない。

そのほとんどが足止めを目的としており、

場合によっては、投石機やバリスタで攻撃するという

よくある防衛罠である。

しかもそれらを目立つように配置している。

いわゆる心をくじく作戦だった。

派遣された魔導士は、最低でも5日足止めをするようにと

言っていた。

さらに、投降するものは、受け入れるようにと。

つまり、5日以内に何かが起こるということだ。

このときラングには、それが何かは分からなかった。



メルトニア軍は、戸惑っていた。

目前には、延々と柵が続いていたのだ。

そして、あからさまな看板が目についた。

 『足止めの魔法陣が設置されています。』


ミンサ:「なんだこれは?」

メルトニア軍を指揮していたのは、ミンサだった。

柵の内側には、所々に魔法陣が設置されており、

ミンサが確かめると確かに足止めの魔法陣だった。

砦へと続く石門の近くには、巨大な投石機と

バリスタが設置されている。

まさに足止めした上で、それらで攻撃しますよと

言っていた。

ミンサ:「これは、罠に違いない。

    他の魔法陣も隠されているだろう。

    柵の先はどうなっている?」

兵士:「柵は、石門を中心に半円上に設置されています。

   そして、半円の頭頂部に人1人が通れる幅の道が

   敷設されていました。」

ミンサ:「なるほど、石門に辿り着くには、罠を通過するか、

    その道を通過するしかないという訳か。

    もう少し、調査が必要だ。

    少し下がって、陣を築く。

    全軍後退だ。」

兵士:「歩哨はどうしますか?」

ミンサ:「そうだな、どうするかな。」

兵士:「あの柵と罠エリアは、砦からの新軍も防いでいます。

   柵の近くに数十メートル間隔で歩哨を立てるのは

   どうでしょうか?」

ミンサ:「それだと、人数が多くなりすぎるな。」

兵士:「では、野営地内の歩哨を減らして、その分柵の警備に

   回しましょう。」

ミンサ:「そうだな。

    敵の進軍ルートは、限られる。

    対応は、任せた。」

兵士:「はっ、畏まりました。」

そして、メルトニア軍は、後退を始めた。


キーラとゾルは、その光景を少し離れた場所から眺めていた。


キーラ:「ラングは、ちゃんと指示を守ったようね。

    これで、何とかなるわ。

    さて、私達は、あの魔法陣がどのテントに設置されるか

    観察していましょう。」


その日の深夜、

キーラとゾルは、メルトニア軍の野営地に潜入した。

歩哨の数が異様に少なかった。

当初キーラは、罠ではないかと疑った。

しかし、起きている者達は砦側に集中しており、

奇襲に備えていた。

さらに、目的のテント以外のテントを確認した時、

罠ではないと確信した。

彼等は本当に眠っていたのだ。

2人は、静かにそして迅速に目的のテントへと向かった。

そして、魔法陣の破壊と魔晶石の奪取に成功した。


その日の朝。

ミンサのテントに兵士が飛び込んできた。

ミンサ:「何事だ!!?」

兵士:「チャージの魔法陣が動きません。」

ミンサ:「なんだと。

    分かった、すぐに行く。」

ミンサは、すぐにチャージの魔法陣へと向かった。

ミンサ:(まさか、奴らの攻撃だというのか?)

ミンサは、チャージの魔法陣を調べた時、

疑問が確信へと変わった。

魔法陣は、明らかに破壊されており、

予備の魔晶石も消えていた。

ミンサ:「やられた。

    直ぐに後退する。

    まだ、負けたわけでは無い。

    こんなこともあろうかと、洞窟の反対側に

    残してきたのだ。

    抜かりはないのだよ!!

    準備を整え再侵攻だ!!

    わっはっはっはっ。」

数時間後、ミンサの目論見は脆くも崩れ去った。


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