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グレイグ  作者: 夢之中
37/52

魅了


キーラ一行は、リーモ村の近くでキャンプするための

準備をしていた。

キーラとゾルは透明化(インビジブル)飛行(フライ)の魔法を

使い、上空からリーモ村を調べる為に行動していた。

パイン達が焚火の準備をしていると、

ライがクンクンと鼻を鳴らした。

ライ:「誰かいる。」

パインは辺りを見回し警戒する。

アンナとアリスが剣の柄に手をかけた。

そして、剣を抜く。

アンナはアリスのこの初動を見て、心から安心した。

アリスは、ここ数日アンナから剣術の指導を受けていた。

移動中は、剣術に関する知識を。

キャンプ中は、実戦指導をだ。

アンナは不安だった。

アリスは神聖魔導士だ。

剣技に優れているわけでは無い。

どちらかと言えば並み以下と言えるだろう。

受けの剣を持っているとはいえ、剣を構えなければその恩赦を

受けることは出来ない。

つまり、アリスには初動が重要なのだ。


ライは剣を抜くことをせず、クンクンと匂いの元を探した。

ライ:「ここか!!」

ライは、慎重に1本の巨木の裏側に回り込んだ。

ライ:「!!」

そこには、1人の少年が木に横たわるように倒れていた。

ライは、子供を確認する。

息はしている。

ライ:「アリス。

   子供だ。

   意識が無いようだ。」

アリスは、すぐに剣を鞘に納めると、ライの元へと移動した。

そして、少年の容態を見始める。

アリス:「衰弱しているようだけど、大丈夫そう。」

アリスはドクターの能力を発動した。

しばらくするとアリスは、子供を抱きかかえ、

焚火の傍に移動した。

丁度その時、キーラとゾルが戻ってきた。


キーラ:「その子供は?」

ライは、キーラに説明した。

キーラ:「そう。

    アリス、その子をお願いね。

    集まって頂戴。

    リーモ村の様子を説明するわ。」

そして、キーラはリーモ村で見た事を話し始めた。


リーモ村は、人の気配が無く、閑散としていた。

そして、村の中央の広場には、1つの檻があった。

中には、一人の人らしき者が入っていたが、

それが誰かを確認することができなかった。

もし、ゾルに千里眼(クレアボイヤンス)の力があれば

また違った結果になったかもしれない。

キーラとゾルはしばらく監視していたが、

状況に変化が無いため、一旦引き上げたということだった。


その時、子供が意識を取り戻したのか口を開いた。

子供:「きっと、それ、大王様だよ。」

キーラ:「大王様って、ドワーフ王のことかしら?」

子供:「うん。

   大王様が他のドワーフ達に連れ去られたんだ。

   僕は、それを追って来たんだけど、

   歩き疲れちゃったんだ。」

キーラ:「そう。

    大王様は、私達が何とかするわ。

    だから、あなたは少し眠りなさい。」

子供:「うん。

   わかった。」

そして子供は目を閉じた。


キーラ:「さて、ドワーフ国に何か起きたようね。

    ゾル。

    ドワーフ国まで行って帰ってくるだけの魔力は

    残ってる?」

ゾル:「えぇ、なんとか。」

キーラ:「私とゾルは、ドワーフ国へ行ってくるわ。

    貴方達は、ケイン達のいる砦へ向かって。

    私達も後で合流するわ。」

そしてパイン達は、砦へと向かった。

パイン達は、ケイン達の巡回のおかげか、

ゴブリンやオークなどに出会う事も無く砦が見える位置まで

移動することができた。

砦を見てパイン達は驚いた。

それは、水堀で囲まれ、高い石壁を持ち、

そしてその上に多数のバリスタが設置されていた。

ケイン達は砦と呼んでいたが、砦と呼ぶよりも要塞

呼んだ方がよいだろう。

元々は、ドラゴンの来襲に備えて防衛用に建築されてものだが、

ドラゴンの来襲が減少した今、軍事費削減という名目で

使用を中止した。

パイン達が、跳ね橋に近寄ると、多数のバリスタが一斉に

パイン達に照準を合わせた。

そして、石壁の上の兵士がこちらに呼びかけた。

 「止まれ!!

 何者だ?」

パイン:「私は、パイン。

    ケイン殿に話があってきた。」

その言葉に兵士が慌てて移動して行ったが、

相変わらずバリスタはこちらを向いていた。

しばらくして、石壁の上にケインとジェイクが現れた。

そして、右手を上げて指示を出すと

ゆっくりと跳ね橋が下り始めた。


その頃キーラとゾルは、ドワーフ国の入口に立っていた。

洞窟の中に入るとドワーフの女性達*1が地面に座り込んでいる。

キーラは彼女達に話しかけたが、まるで上の空だ。

この時キーラは、確信した。

服従の魔法*2。

この朦朧とした状態は、服従の魔法をレジストした場合の

副作用だと判断したのだ。

洞窟の内部を調べると多くのドワーフが存在していないことに

気が付いた。

そして玉座の間には、大王も側近もいなかった。

さらに洞窟内を調べ、人間が存在していないことを確認すると、

キーラは砦に向かう事を決断した。

ドワーフは人間よりも遥かにタフである。

人間であれば、4-5日も水分補給が無ければ

死に至るとされるが、ドワーフはそのタフさゆえに一ヶ月ほどは

問題ないと言われている。


その日の夕方、キーラとゾルは無事砦内に降り立った。

ケインとジェイクの計らいで、空からの移動者を攻撃しない旨の

通達が出ていたからだ。

キーラは、パイン達と合流すると、少年の元へと向かった。

少年は丁度食事を終えた所だった。

キーラは、少年に向かって笑顔をみせると言った。

キーラ:「すこし話をさせてもらえるかしら?」

少年:「うん。」

キーラ:「私はキーラ。

    貴方は?」

少年:「ジェイだよ。」

キーラ:「ジェイは、どうしてドワーフ国にいたの?」

ジェイ:「うん。

    村に沢山の兵隊さんがやってきたんだ。」

キーラ:「メルトニアの兵隊さん?」

ジェイ:「そうだよ。

    それでね、村の皆が森に逃げ始めたんだ。

    それでね、エル姉ちゃんと一緒に逃げたんだけど、

    途中ではぐれちゃったんだ。

    そしたら、ドワーフのおばちゃんがやって来て

    助けてくれたんだ。」

キーラ:「なるほどね。

    じゃあ、

    ドワーフ王が連れ去られたときの事は知ってる?」

ジェイ:「知ってるよ、見てたから。

    檻の中に大王様が入って、

    その檻をいっぱいのドワーフが担いでたよ。

    それで、追ったんだ。」

キーラ:「それを見る前はジェイは何処にいたのかな?」

ジェイ:「んーと。

    水汲みしてた。」

キーラ:「水汲みに行く前に何か変わったことは無かった?」

ジェイ:「ローブを着た人が入って行ったよ。

    なんか変な仮面を被っててちょっと怖かった。」

ライ:「ザラスか、、、。」

キーラ:「ほかに何かいつもと変わったことは無かった?」

ジェイ:「あっ、そうだ。

    ドワーフのおじさん達、みんな腕輪してたよ。

    いつもはそんなのしてないのに。」

キーラ:「そう。

    ジェイ。

    ありがとうね。

    貴方は強いわね。」

そして、キーラ達は部屋を後にした。

キーラ達が部屋を出ると、ジェイクが待っていた。

ジェイク:「マスターキーラ。」

キーラ:「なに?」

ジェイク:「この砦の転移の魔法陣のなのですが、

     何とか稼働させることは出来ないのでしょうか?

     できれば、民間人を避難させたいのですが。」

キーラ:「分かったわ、見てみましょう。

    でも、期待はしないでね。」

そして、転移の魔法陣のある地下へと向かった。

キーラ:「転送の魔法陣は、やっぱり完全に壊れてるわね。

    んっ?

    ちょっとまって、転受の魔法陣は、止めていたのね。

    んー。

    だとしたら、修復できそうね。」

ジェイク:「本当ですか?」

キーラ:「えぇ。

    この砦は、何年も使われてなかったのよね。」

ジェイク:「はい。」

キーラ:「なるほど、撤退時に転送の魔法陣を使ったのね。

    その時に、転受の魔法陣は、止めておいた。

    それで、壊れなかったのね。」

ジェイク:「どういうことです?」

キーラ:「アラインが緊急脱出魔法を発動した時、

    管理下の転移の魔法陣は、全て壊れるように

    なっていたのよ。

    でも、この魔法陣は、止まっていた。

    だから壊れなかった。

    そういう訳よ。

    ところで、この砦には魔導士はいる?」

ジェイク:「はい。

     少数ですが。」

キーラ:「なら、兵士分の帰還の巻物を作らせて頂戴。

    あと、他国へ転移できる転移の魔法を覚えている者を

    探して、民間人の撤退を進めて頂戴。」

ジェイク:「はっ、分かりました。」


この後、キーラは皆を集め軍議を始めた。

パイン:「ドワーフ王を捕らえるとか、

    いったい奴らは何をしようとしてるんだ?」

ジェイク:「軍隊ですかね?」

キーラ:「ジェイク。

    私もそう思うわ。」

アリス:「えっ、どういう事?

    ドワーフ王と軍隊がどう関係するの?」

キーラ:「そうね。

    ドワーフ王の件は、ドワーフ軍を作るための

    一つの過程に過ぎないということね。

    指導者を失えば、新たな指導者を求める。

    当然、納得できる考え方や理念が必要だけど、

    納得できるという部分を魅了で補う。

    成功すれば、軍隊の完成だわ。」

アリス:「ひどい、、、。」

パイン:「力を得た者が多数いるのに軍隊が必要なんですか?」

キーラ:「あなた、疲れたりしない?」

パイン:「確かに力を得る前よりも疲れにくいと感じます。

    しかし、疲れない訳じゃないです。

    それに、力を行使した時は、やはり疲れますね。」

キーラ:「でしょう。

    パインが寝ているのを見て、そう思ったんだけどね。

    力を得た者でも疲労はある。

    つまり、永久に戦い続けられる訳では

    無いということよ。

    最初の戦いでもそう。

    最後まで戦わずに撤退しているしね。

    だから、敵は大軍には大軍をぶつける以外に

    方法は無いと考えると思ったのよ。」

パイン:「そんなに簡単に実現できるものなのですか?」

キーラ:「現にドワーフ王は投獄されているわよ。」

パイン:「確かにそうですね。」

ケイン:「メルトニアの兵士達は、どうなったと思いますか?」

キーラ:「多分大半が取り込まれていると思っているわ。

    そうねぇ。

    偽情報とかを流しているのでしょう。

    たとえば、人魚の涙の砦が王国によって

    占領されたのを、王国が侵略を始めたとでも

    煽っているのかもしれないわね。

    アライン元首がいなくなったのを、

    王国に寝返ったとかね。

    情報制限や偽情報は、大きな効果を生むのよ。

    それに魅了を付加すれば、さらに効果は上がるわ。」

ケイン:「・・・」

キーラ:「ところで、メルトニア軍はどれぐらいの規模なの?」

ジェイク:「そうですね。

     専従兵ならば、1万2千というところでしょうか。」

キーラ:「それだけいれば、次の手に打って出そうね。」

ジェイク:「次の手とは?」

キーラ:「人魚の涙の砦の攻略よ。」

ジェイク:「奇襲ですか。

     砦は大丈夫なんですか?」

キーラ:「ラング将軍が、ちゃんと動いてくれていれば、

    大丈夫だとおもうわ。」

ジェイク:「・・・」

ゾル:「魅了ということは、時間的な限界がありますよね。」

キーラ:「いい事に気が付いたわね。

    さて、問題です。

    魅了を延長するには、どうすればいいでしょう?」

ゾル:「そうですね。

   再度掛けなおす。

   エターナル系の魔法陣の中で生活させる。

   それぐらいですかね。」

キーラ:「何故、魔法具は入れなかったの?」

ゾル:「それは回数が決まっているからです。

   回数が限界に達したら終わりですからね。」

キーラ:「チャージできたとしたら?」

ゾル:「軍隊って、数千あるいは、万単位じゃないんですか?

   定期的に回収して1つ1つチャージするなんて、

   どう考えても不可能ですよ。」

キーラ:「本当にそうかしらね。

    もし、魅了された者が自分から

    チャージしに行ったとしたら?」

ゾル:「えっ!!!

   たっ、確かに可能です!!」

キーラ:「じゃあ次の質問。

    大軍相手に少数で戦いを挑む場合、

    もっとも効果的な方法は何だと思う?」

ジェイク:「そうですな。

     防戦であるならばゲリラ戦、

     攻撃するならば、兵站*3の分断ですか?

     ゲリラ戦であれば、我々も準備を始めています。」

キーラ:「どんな準備かしら?」

ジェイク:「元々存在した避難経路用の地下道をゲリラ用として

     改修中です。」

キーラ:「さすがね。

    地下道の改修はそのまま続けて頂戴。

    いつ攻められるかわからないしね。

    質問の正解は、もう一つの方。

    兵站よ。

    糧道*4を制圧すること。

    じゃあ、この事を今回の魅了の件に置き換えてみて。」

パイン:「そうか!!

     チャージしている魔法陣か何かを

     破壊するということですか?」

キーラ:「そう。

    その何かを破壊して魅了を解くのよ。

    とりあえず、目先の方針は決まったわね。

    それじゃあ、細かい作戦を考えましょう。」



*1:ドワーフの女性達

 ドワーフは男女とも髭を生やしており、

 一見では性別を判断するのは難しい。

 ドワーフ以外の者は、

 胸の膨らみや服装で判断するしかない。


*2:服従の魔法

 魅了の上位版である。

 魔法と呼ばれるが呪いに分類される。

 高価な触媒を使用する上に短時間(数秒から数十秒程度)しか

 効果が無いため単独で使用されることはほどんどない。

 レジストすることが魅了よりも難しいため、

 耐性の高い種族に対して魅了の前段階として

 使用されることがある。

 服従の魔法をレジストした場合、媒体の効果のみが残り、

 数日の間、腑抜け状態となる。


*3:兵站

 戦場で後方に位置して、前線の部隊のために、

 軍需品・食糧・馬などの供給・補充や、後方連絡線の

 確保などを任務とする機関やその任務。


*4:糧道

 軍隊の食糧を運ぶ道。


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