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グレイグ  作者: 夢之中
34/52

不帰の森


キーラ達は、トモフ村の宿屋で地図を見ながら

議論を繰り返していた。

その時、1人の男が現れた。


マイク:「この度、案内を請け負ったマイクです。

    マッカス将軍、お久しぶりです。」

マッカス:「んっ?

     マイク?

     おぉ、まさか、あのマイクか!?」

マイク:「はい。

    あのマイクです。」

マッカス:「まさか、こんなところで旧知の者に出会うとは。」


キーラは、事前に手を回しゲーノモス山脈を越える為の

案内人を探していた。

多くの者がそれを不可能と言い、非協力的だった。

そんな中、一人の男が名乗りを上げた。

それはマイクというガイドだった。

マイクは、当初この話を受けなかった。

しかし、一行の中にマッカス将軍がいる事を知ると、

案内することを承諾したのだ。

マイクはプラチナの称号を得るほどのチームに所属していた

冒険者であった。

マッカスとの出会いは、公国領に現れたバンパイア討伐に

参加したことに始まる。

このバンパイア討伐時に、ブルーサファイアのジェム称号を持つ

チームにいたのが、マッカスとシルカーだった。

バンパイアとの戦いは壮絶を極めた。

最終的にマッカスとシルカーによってバンパイアを

討伐することができたが、冒険者達の損害も想像以上であった。

マッカスのチームは半壊し、マイクのチームも

全滅寸前状態まで追い込まれた。

マイクのチームが全滅しなかったのは、

マッカスとシルカーのおかげと言っても過言ではない。

それ以来マイクは、マッカスとシルカーに恩義を

感じているのだ。

マッカスとシルカーは、チームの半壊によって、

冒険者を引退することを決めた。

公国は、マッカスとシルカーに対して、

バンパイア討伐の功により要職を与えた。

マイクは冒険者を引退して故郷へと帰り、

現在の仕事を始めたのだった。


キーラ:「さて、私達はどういうコースで行けば良いのかしら?」

マイク:「そうですね。

    このコースはどうでしょう?」

マイクは、地図の上を指でなぞった。

キーラ:「予想される日数は?」

マイク:「20日です。」

キーラ:「成功率は、どのぐらいかしら?」

マイク:「幸いなことに、最も危険な時期ではありません。

    そうですね。

    6割というところでしょうか。」

キーラ:「もっと早い道はないのかしら?」

マイク:「あることはありますが、途中に何か所も難所があり、

    成功率は3割程度に落ちるでしょう。」

キーラ:「何日でつける?」

マイク:「成功すれば、10日程でしょうか。」

キーラ:「決まりね。

    10日の道を進みましょう。」

マイク:「それで大丈夫なんですか?」

キーラ:「えぇ。

    こちらにはフライの呪文を使える者が2人います。

    難所は、それで乗り越えましょう。」

マイク:「おぉ!、それは心強い。

    それならば、成功率は格段に上がるでしょう。」

そして準備と休養を挟み、2日後の出発と決まった。



キーラ達一行は、マイクの案内で山道を進んでいた。

山道といっても禿山ではなく、林道である。

それも、広大に広がる『不帰の森』の中だ。

しかし、マイクはこの森のことを知り尽くしていた。

生まれ故郷であると共に剣の修行の場でもあった。

この森には、多くのゴブリンやオーガは生息していたが、

それ以上の脅威になるような生物は見たことがなかった。


キーラ:「不気味なぐらい静かね。

    何も起きなければいいのだけど。」

マイク:「確かに珍しいぐらい静かですね。

    しかし私は、この森でゴブリンやオーガ以外の

    脅威になる生物を見た事がありません。

    何も起きませんよ。

    そうだ、この先に大きな泉があります。

    そこで一度休憩を取りましょう。」

そんな話をしながら先を急いだ。

しばらくすると、突然大量の鳥たちが何かから逃れるように

羽ばたいた。

同時に地響きが聞こえる。

 「ドドドドドドドド、、、。」

次第に音が大きくなってくる。

何かが近づいてくるのは明らかだった。


キーラは、すぐにフライの呪文を唱えると、

上空に浮かび上がり、そして、すぐに下りて来た。

キーラ:「カトブレパスよ。

    絶対に眼を見てはダメよ。

    即死するわよ。」

パインは、驚いた。

カトブレパスは、ドラゴン族、バンパイア族等と同等に

危険視されている種族である邪視族*1に分類される。

王国魔導学院ではこれらの種族に出会った場合は、

何も考えずにとにかく逃げろと教えている。


マッカス:「カトブレパスか。

     それならば、私に任せろ。

     皆は目をつぶってそこの木の裏にでも

     隠れていてくれ。」

マッカスは、そう言うとローブの中から1本の細長い帯を

取り出した。

これは、戦士がよく使う帯であり、

戦闘中に汗が眼に入らないように頭に巻くものだ。

それをまるで目隠しするように頭に巻いた。

音のする方向を向くと、剣を鞘から抜き下段に構える。

マッカス:「本来、剣技というのは、気配で戦うものなのだ。

     相手の気配を読み、そして、それに応える。」

その時、カトブレパスが現れた。

カトブレパスは、目前に立つ者を見ると直進を停止した。

その場で、一度吠える。

カトブレパスは、マッカスに対して威嚇の姿勢を見せたが、

マッカスは微動だにしなかった。

痺れを切らしたカトブレパスは、マッカスを押しつぶそうと

前足を高く持ち上げた。

その時、マッカスが動いた。

大きく飛び上がると同時に、

左下から右上に向かって剣を振った。

一瞬の出来事であった。

カトブレパスの首の最も細い部分を皮一枚残して切断したのだ。

カトブレパスは、地響きと共に、そのまま地面に転がった。

マッカスは、目隠しを外すと言った。

マッカス:「少し浅かったようだな。」


マイクは驚いていた。

この森にカトブレパスが存在しているなどとは

思ってもいなかったからだ。

マイクはその時に思い出した。

過去にドラゴンが山を下りた事があったという話を聞いた。

その時も、普段はいない魔物が現れた。

マイク:「そう言えば、過去にも普段はいない魔物が現れた時が

    あったようです。

    その時はドラゴンが山を下りたと言われています。」

キーラ:「なるほどね。

    つまり、何かに追われて移動してきたと言う事ね。

    そう何かにね。」


カトブレパスは泉を生息域とするため、

一行は泉を避けるように大きく迂回するように移動した。

その迂回行動が新たなる発見へと導くこととなった。

パイン:「えっ。」

キーラ:「どうしたの?」

パイン:「白い玉を発見しました。」

パインの視界に赤い十字が浮かび上がった。

キーラ:「それは、興味深いわね。

    多少の遠回りは仕方が無いようね。

    行ってみましょう。」

キーラ達は北へと進路を変え白い玉の場所を目指した。

しばらく進むと、突然視界が開けた。

それは峡谷だった。

地面はV字にえぐられ、遥か下の谷底には川が

流れていることが確認できた。


パイン:「どうやら白い玉は、この崖の中間あたりの

    地面の中を示しているようです。」

そう言って印の方向を指さす。

キーラ:「地面の中ねぇ。

    何処かに洞窟があるのかしら?」

ゾル:「そうですね。

   私が崖側を見てきましょう。」

そう言うとゾルは、フライの呪文を使い、

峡谷へと飛んで行った。

キーラ:「じゃあ、私は峡谷以外の場所に洞窟の入口が

    無いか見てきましょう。」

そして、キーラも飛び立った。

残った者達は、枯れ枝を集め焚火の準備を始めた。

パインは、集めた薪に炎系魔法を唱え、

薪に火をつけた後でその近くに座った。

そして、大きめの革袋を取り出すと、唯一詠唱可能な

水系呪文を唱えた。

革袋の中に水があふれた。

それを見ていたアリスがパインの横に座り話しかける。

アリス:「すごいわね。

    そんな魔法があるのね。」

パイン:「自分が唱えられる唯一の水系魔法だよ。

    近くにある水を集められるんだ。

    それにこの魔法で集めた水はとてもきれいで、

    飲料水としてはとても優れているんだ。」

アリス:「へーっ。」

パインは、木の枝を手に取ると焚火に放り込んだ。

パイン:「アリス、本当にすまない。」

アリス:「えっ?」

パイン:「いや、大変なことに巻き込んでしまった。」

アリス:「そんなことを気にしていたの?

    もし私達が出会わなかったとしても、

    この戦いは起こっていたのよ。

    遅かれ早かれ、巻き込まれていたはずよ。

    これは運命だったのよ。」

パイン:「アリスは、強いな。」

その時、マッカス、アンナ、ジェイク、マイクの4人が

野兎を捕まえて戻ってきた。

マイク:「少し早いが、昼食の準備を始めよう。」

4人は短剣を器用に使い、野兎を捌いて行く。

どうやら捕まえた野兎の半分は料理に使い、

残りの半分は燻製にして保存食にするようだった。

ある程度食事の準備が整った時、キーラが戻ってきた。


キーラ:「最近この先で地滑りがあったようね。

    広範囲が土砂に埋もれていたわ。

    洞窟の入口があったなら埋もれてしまっているわね。」

マッカス:「だとすると、洞窟の入口の発見は困難ですな。」

キーラ:「確かに、そうね。

    でも、まだ峡谷側に存在する可能性もあるわ。

    まずは、ゾルの帰還を待ちましょう。」

そう言って焚火の前に座った。


キーラが座ってから直ぐにゾルが戻ってきた。

ゾル:「峡谷の崖に洞窟を発見しました。

   しかし、、、。」

キーラ:「しかし?」

ゾル:「確証はないのですが。

   だれか住んでいるように思えるのです。」

キーラ:「えっ。

    こんな場所に誰か住んでいるというの?」

ゾル:「私にはそう思えました。」

キーラ:「なるほどね。

    地滑りで洞窟に閉じ込められたのかしらね。

    まあ、いいわ。

    とりあえず、その人に会いに行きましょう。

    パイン、行くわよ。」

パイン:「はい。」


キーラ、パイン、ゾルの3人は、峡谷の端まで移動した。

キーラとゾルはフライの魔法を唱え、2人がかりでパインを

持ち上げた*2。

ゆっくりと崖にある洞窟の入口まで移動すると、

パインを降ろし、洞窟の中を覗き込んだ。

ゾルの言う通り、何者かが生活しているようだった。


キーラ:「あのー。

    すみませーん。

    誰かいますかー?」

キーラの声が洞窟の壁に反響する。

返事は無かった。

しかたなく3人は洞窟の中に入ると、白い玉を探した。

パインは白い玉を直ぐに発見した。

そして、その玉に触れようとした時、背後から声がした。


???:「まて。

    お前らは何者だ?」

    

キーラは後ろを振り向くと声の主を見た。

そこには、髭だらけの顔に腰巻を付けただけの男が立っていた。

痩せているように見えたが、

四肢の筋肉は想像以上についていた。

武器になるようなものを携帯しているようには見えない。

キーラ:「怪しい者では無いわ。

    私達はその玉に用があるのよ。

    玉に触れてもいいかしら?」

男:「だめだ。

  動くんじゃないぞ。」

キーラ:「2人共、動かないようにね。」

男はキーラに近づくとクンクンと鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。

男:「んっ?

  この匂いは、、、。

  そうか、そういうことか。

  なるほど、成功したんだな。

  お前、キーラだろ?」

キーラ:「あら、私の事を知っているの?」

男:「あぁ、知っている。

  俺はライだ。」

キーラ:「ライですって。

    懐かしいわね。」

ライ:「俺は、お前に借りがある。

   ザラスを倒すまでの間、お前に従おう。」

キーラ:「なるほど。

    やはりザラスは生きているのね。」

ライ:「あぁ、俺が生きているのが、その証拠だ。」

キーラ:「確かにそうね。

    皆に紹介するわ。

    一緒に来て頂戴。」



*1:邪視族

  メデゥーサ、コカトリス、バジリスク、カトブレパス等の

  視線に石化効果や即死効果等の特殊効果を持つ

  魔物の種族である。


*2:2人がかりでパインを持ち上げた

  フライの魔法は浮遊の魔法であるが、

  自身を浮遊させるの程度の浮力しか得られない。

  移動速度を犠牲にすることによって+1人分程度の

  浮力を得られるが、所詮その程度である。

  そのため、2人がかりでパインを浮かせることになった。



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