白い玉
公国でキーラは、悩んでいた。
エレナの救出の後、パインとアンナが倒れたのだ。
2人は昏睡状態となり生死の境をさまよっていた。
キーラ:(2人が倒れた理由は、やはり、、、。)
キーラは、ドリム大公の元へと向かうと数日間の暇をもらった。
キーラは、この時時間が無いと言う理由でドリム大公には、
何も説明しなかった。
ドリムは、焦るキーラを見て何も言わずに送り出した。
数日後。
キーラは白い玉を手に公国へと戻ってきた。
そして、いまだに昏睡状態のパインの元へと向かった。
パインの傍にはアリスがいた。
アリス:「キーラ様、パインはいまだに目を覚ましません。
このまま目が覚めなかったらと思うと、、、。」
アリスの目から涙が零れ落ちた。
キーラ:「大丈夫よ。
きっとこれで目を覚ますはず。」
キーラはパインの傍らに白い玉を置くと、
パインの手をその玉の上に置いた。
そして、キーラはじっと待った。
アリスもキーラと同様にじっと待った。
次の日の陽が昇るころ、パインは目を開けた。
パインは衰弱していたが、アンナの状況を知ると、
よろめく足取りでアンナの元へと向かった。
アンナの元にはエレナがいた。
エレナは、パインの回復を大層喜んだ。
パインが回復するという事は、
アンナも回復する可能性があった。
パインは、寝ているアンナの手を握ると静かに待った。
そして、陽が沈む頃にアンナは目を開いた。
次の日、軍議室には、ドリム大公、アライン元首、エレナ、
キーラ、マッカス将軍、シルカー魔導士長、ゾル、アリス、
そして回復したパインとアンナが集まっていた。
この10人は、キーラが指名したのだ。
ドリム:「マスターキーラ。
何があったのか説明してもらいたい?」
キーラ:「はい。
私とパイン、アンナの3人は、エレナ様救出のために、
ナガットの足取りを追いました。
そして、メルキスの第4区画に逃げ込んだことを
突き止めたのです。
ナガットはメルトニアに向かう為に第4区画の裏の長、
ザラスの住むマーケットへと潜入しました。
そこでザラスがナサカ村に向かったことを知りました。
ナサカ村の東にはメルトニアへと通じる洞窟があると
言う言い伝えがあり、そこへと向かう事を決めました。
確かに洞窟はありました。
我々はそこで未発見の遺跡を発見したのです。」
ドリム:「未発見の遺跡だと。」
キーラ:「はい。
私の予想では、最も古い遺跡でしょう。
遺跡の中には、守護者が
配置されていました。」
ドリム:「ガーディアンだと。」
キーラ:「はい。
金属でできた昆虫の様なものが徘徊していました。」
ドリム:「んー。」
キーラ:「それを倒し、先へ進むとホールの様な場所に出ました。
そこでは、ゴーレムの様なものとナガット達が戦って
いました。」
ドリム:「戦っていた?
ならば、我らの敵ではないのか?」
キーラ:「いえ、そうではないでしょう。
それについては、最後に説明します。
アンナがナガット達の戦闘中にエレナを救出しました。
そして帰還したのです。
パインとアンナはその直後に昏睡状態に陥りました。
原因か何かを私は考えました。
何故、私とエレナ様は昏睡状態に陥らなかったのか?
何故、パインとエレナだけなのか?」
ドリム:「力を得た者か?」
キーラ:「その通りです。
そう考えた時、ゴーレムはナガットのみを
攻撃していたことに気が付いたのです。
戦闘には魔導士も参加していました。
しかし魔導士に対しては攻撃をしかけてませんでした。
そして、パインの発した一言。
パインは、ナガットとゴーレムの戦闘中に
『ナガットの動きが鈍くなっているような、、、。』
と言ったのです。
この言葉から、ゴーレムに関係あると考え、
遺跡に向かう事を決めたのです。」
ドリム:「なるほど。」
キーラ:「私は、考え得る対策*1を施して遺跡に侵入しました。
私の予想通り金属の昆虫は攻撃してきませんでした。
さらに、ゴーレムも動こうとはしませんでした。
私は、試しました。
身を晒し、ゴーレムの前に歩み出たのです。
しかしゴーレムは動くことはありませんでした。
そこで私は、ゴーレムのいるホールを隅々まで
詳しく調べました。
そして、巧みに隠された扉を発見したのです。
その部屋に入ると、女性の声が聞こえました。
彼女は姿を現わすことなく私に語り掛けてきました。
しかし私には彼女の言葉がわかりませんでした。
彼女に目があるのかはわかりませんでしたが、
私は、身振り手振りを交えて話しました。
すると彼女はすごい速度で言葉を覚えていきました。
次の日には、子供と会話する程度になっていたのです。」
ドリム:「なんと。」
キーラ:「彼女は自分の事をマザーと呼びました。
残念ながら、その言葉が何を意味するのかは
私にはわかりません。
私はマザーに尋ねました。
外のゴーレムは何を守っているのかと。
マザーは、答えました。
ゴーレムは、グレイグを倒す者だと。」
ドリム:「むぅ。」
アライン:「それだと、白い玉は何の目的で生み出されたのだ?
力を持つ者を増やす目的ではいのか?」
キーラ:「それについては、私も同じ疑問を持ち、
マザーに質問しました。
マザーは答えました。
それは、別の者の考えであり、
私はグレイグを倒す為に存在すると。
つまり、最低でもグレイグを残そうとした者達と
滅ぼそうとした者達が存在したということになります。」
アライン:「なるほど、利害関係という訳か。」
ドリム:「それで、次はどうしたのだ?」
キーラ:「パインを救うために、
白い玉が必要であると考えました。
それも、パインが最初に触れた白い玉です。」
ドリム:「何故、最初に触れた玉なのだ?」
キーラ:「ノリムの事を思い出してください。
ノリムの触れた玉には、多くの者が触れています。
しかし、力を得る事はできませんでした。
さらに、私は今回持ってきた玉に触れていますが、
やはり力を得る事はできませんでした。
パインが力を与えられると言った3人は、
事前にノリムの玉に触れさせています。
しかし力を得る事はできませんでした。
つまり、力を得るには資格が必要なのです。
それも、主となる者の資格です。
僕となる者の資格ではありません。
だとすると、玉毎に資格を得られる者が異なる可能性が
あるのです。
ドリム:「なるほど、そう言う事か。」
キーラ:「そこで、パインが最初に触れた玉を探したのです。
パインに力を与えた玉。
それこそがパインを戻す事の出来る玉であると
考えたわけです。」
ドリム:「さすが、マスターキーラだ。
これで、まだ戦えるわけだな。
それで、次はどうする?」
キーラ:「なんとかして、バーランド側へ潜入します。
しかしバーランド側の海路は封鎖されているでしょう。
今回発見した洞窟は力を持つ者は通過できません。
そこで、ゲーノモス山脈を越える方法を検討します。」
アライン:「ゲーノモス山脈だと。
大軍でゲーノモス山脈を越えるのは、
不可能ではないのか?
まさか、少人数で向かうと言うのか?」
キーラ:「そのまさかです。」
アライン:「あそこは、ドラゴンの住処でもあるのだぞ。」
キーラ:「ドラゴンロードは、私の友です。」
アライン:「そうか、何を言っても無駄なようだな。
全てを託すことは心苦しいが、
マスターキーラに全てを託そう。」
ドリム:「うむ、そうだな。」
キーラは、軍議の終了時に同行者を募集することを決めた。
軍議は終わり、キーラ達は行動を開始した。
まずは、僕の力を与える事だった。
ゾル、アリスにそれぞれ力を与えた。
パインによると、肉体強化の力とは別に他の力を1つ与える事が
できるという事だった。
それは、パインが得たほかの力だった。
話合いの結果、
アリスには、ドクターの力、
ゾルには、パレットの力、
アンナには、ガントレットの力が与えられた。
そして、7日後。
準備を整えた後でキーラ達は出発した。
最初の目的地は、トモフ村だった。
トモフ村は、王国領にあり、コリキ村の北東に位置していた。
牧畜が主な産業であり、広大な牧草地に多くの牛、豚、羊などが
飼育されていた。
1台の4頭立ての馬車が北上していた。
御者が1人、馬車の中には、6人のローブを羽織った者達が
座っていた。
馬車の中の6人は、キーラと力を得た者が4人。
パイン、ゾル、アリス、アンナ。
そして、最後の一人は、マッカス将軍であった。
マッカス将軍は、自ら名乗り出たのだ。
マッカス:「キーラ殿、私を同行させてくれないだろうか?」
キーラは、驚いた。
キーラ:「将軍。
何故そんな決断を?」
マッカス:「国の危機であることもあるのだが、
知っての通り私は、将軍ではあるものの、
軍を率いられる器ではない。
根っからの武人なのだ。
私が国に報いるには、武しかないのだ。
力を得た者の足元にも及ばないことも分かっている。
足手まといになるかもしれない。
それでも、国の為に尽くしたいのだ。」
キーラ:「武人として死ねるとは限りませんよ。」
マッカス:「承知の上だ。」
キーラ:「それならば、ぜひお願いします。」
御者は、ジェイクであった。
軍議のあった次の日。
アライン:「ジェイク。
頼みがある。」
ジェイク:「はっ。
何なりと。」
アライン:「マスターキーラは、
ゲーノモス山脈を越える事を考えている。」
ジェイク:「それは、無謀な。」
アライン:「いや、メルトニアを救うにはそれしかないのだ。
マスターキーラは、数名の同行者を探している。
それに参加してほしいのだ。」
ジェイク:「えっ。」
アライン:「本来ならば、私が向かうべきだろう。
しかし、マスターキーラに拒否されてしまったのだ。
そこで、私の代わりに行ってほしいのだ。」
ジェイク:「はっ、喜んで。」
アライン:「よく考えてくれ。
生きて帰れる保証は無いのだぞ。」
ジェイク:「元より命は、国の為、アライン様の為に
捨てるつもりでおりました。
国の為、アライン様の為であるならば、
喜んで命を捧げましょう。」
アライン:「よく言ってくれた。
全てを託す。
必ず生きて帰るのだぞ。」
ジェイク:「はっ、承りました。」
一行を乗せた馬車は放牧地を疾走し、トモフ村へと到着した。
*1:考え得る対策
この時キーラは、姿を消し、音を隠し、熱を消して
身を隠したと云われている。




