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グレイグ  作者: 夢之中
31/52

バートランド平原への道


キーラ、パイン、アンナの3人がナカサ村へ到着したとき、

村がもう存在していないことを知った。

ナサカ村のあった場所には、

焼け焦げた家々の残骸のみがあった。

パインが偵察に来た時、ナサカ村はゴブリンやオークに

襲われていた。

村人はパインが見た限り村人を発見することは出来なかった。

そして、力を得た者にゴブリンやオークは殺されたのだ。

この時、それを見ていたパイン達も襲われたのだが、、、。

状況から考えれば、力を得た者が燃やしたのか、

あるいは、進軍した連合軍が燃やしたかのどちらかだろう。

キーラ:「村で情報を集めようと思ったけれど、

    これじゃあ、しょうがないわね。

    先へ進みましょう。」

キーラが得ていた情報では、ナサカ村の真東の岩山に

洞窟の入口があるらしい。

3人はわずかな情報を頼りに先へと進んだ。

岩山までは、それほど時間はかからなかった。

到着すると、それは直ぐに発見できた。

キーラ:「これって、洞窟の入口じゃなくて、亀裂よね。」

キーラの言う様に、洞窟の入口ではなく、

人が入れるほどに割けた亀裂であった。

3人は、剣先に明かりを灯すと、

恐る恐る亀裂の中へと入って行った。

しばらく進むといきなり視界が広がった。

まさしく洞窟であった。

洞窟の側面に亀裂が繋がっていたのだ。

キーラが地面を確認すると、真新しい多数の足跡が

北に向かっているのが分かった。

キーラ:「どうやらこっちに向かったようね。」

そう言って北の方を見る。

その瞬間、飛び出そうとするアンナをキーラの腕が制した。

パインは驚いた。

アンナは、グレイグの力を得ているのだ。

生身のキーラがそれを止めるには、

事前にそのことを知っていなければ不可能だ。

キーラは、アンナの行動を予測していたのだろうか?

キーラは焦るアンナに言った。

キーラ:「まだ、早いわ。

    敵に気付かれるとエレナを危険に晒す事になるわよ。」

その言葉にアンナは気を落ち着かせた。

そして、3人はゆっくりと先へと進んだ。

途中何本かの分かれ道があったが、足跡を確認しながら進んだ。

そして、崩落の跡を発見した。

その崩落は道を塞ぎ、先へ進むことが出来なかった。

良く調べると、別の場所に穴があいていた。

その穴も崩落で出来たものだろう。

3人はその穴を通り抜けた。

すると、別の洞窟が続いていた。

しばらく進むと、様相が一変した。

壁が人工的な様相を醸し出したのだ。

壁は削っただけではなく、綺麗に磨かれており、

さらに不思議な模様が描かれていた。


キーラ:「あら、こんなところに遺跡が。

    パイン、この遺跡。

    何か気が付くことはない?」

パイン:「えっ、何と言われても、、、。

    あっ、この壁の模様、何処かで見たことがあるような。

    そうだ。

    師匠と出会った、あの山の遺跡。

    あれと同じ模様じゃないですか。」

キーラ:「よく気が付いたわね。

    だとすると何か思う事は無い?」

パイン:「えっ、いきなり言われても。

    あっ、もしかして魔法の罠のことですか?

    ここにも魔法の罠があると?」

キーラ:「良く分かったわね。

    正解よ。

    絶対にあるとは言えないけれど、

    その可能性は高いわ。

    なので、ここからは慎重に進むわよ。」

アンナは、落ち着いたと言っても、やはり気が気ではなかった。

そこで、少しでも早く進めるように何かしなければと考えた。

そしてキーラに提案した。

アンナ:「私が先に行って様子を見てきます。」

キーラ:「そうね。

    力を使えば発動後でも逃げられるとは思うけど*1、

    魔法の罠には注意してね。」

アンナ:「わかりました。」

そう言うとアンナは先へと先行した。

パイン:「それにしても、良くそこまで気が付きますね。

    どうやったらそうなれるのですか?」

キーラ:「別に難しい事では無いわ。

    まずは、何にでも興味を持つ事。

    そして、それをよく観察する事。

    例えば、私がパイン、貴方を観察したとする。

    次第にパインの通常の行動が分かってくるの。

    通常と異なる行動をとった時、

    それを知る事ができるわ。

    そして、何故そのような行動をとったのかを

    考えるのよ。

    ここでは、今までに得た知識を使うわ。

    あぁ、経験も知識の一つだからね。

    そしてその行動をパインの気持ちになって考えるのよ。

    そうすれば、おのずと答えを導き出せるわ。

    確実ではないけれど、かなり近い結果を出せるわ。

    もし、答えが間違っていたならば、何故間違えたのかを

    考え修正を加える。

    この繰り返しが重要なの。」

パイン:「なるほど。

    問題は知識ですね。

    恥ずかしながら、知識が足りなすぎます。」

キーラ:「知識が足りないのを恥じる必要はないわ。

    恥じるべき事は、知識が足りないと知っているのに

    知ろうとしないことよ。」

パイン:「そうか。

    放置したら、知識は増えませんからね。」

キーラ:「そして注意すべきは、思い込みね。

    折角知識を得ようと努力したのに、

    思い込みで全てを台無しにすることがあるわ。

    知らない知識を得ようとしたときに、

    別の知らない知識が出た場合、

    面倒でも、その知識を得るまでは先に進まないことね。

    もっとも危険なのは思い込みや想像で進める事よ。

    もし、知らない知識ばかりだった場合、

    その知識を得る為の最低限の知識を得ていないと思って

    他の知識を得る事を考えた方がいいわよ。」

パイン:「んーっ、大変ですね。」

キーラ:「当然よ。

    知識とは、知識という土台の上に成り立っているのよ。

    土台が脆ければ直ぐに崩れてしまうわ。

    だから、建物を建てるようにしっかりとした土台を

    作らなければならないのよ。

    急がば回れってことね。」

パーン:「地道に進むしかなさそうですね。」

キーラ:「その通りよ。」

その時、アンナが戻ってきた。

アンナ:「マスターキーラ。

    この先に壊れた扉があります。」


3人が扉の前に到着すると、扉を眺めた。

それは両開きの鉄製の扉であった。

しかし、観音開きの扉ではなく、

左右にスライドする方式の扉であった。

扉は、何かで叩いたようにくの字に折れ曲がっており、

もう二度と閉じる事ができなかった。

それは、丸い何かをぶつけたような曲がり方だった。

キーラ:「どうも叩き壊したって感じね。」

パイン:「それにしても凄い力ですね。」

キーラ:「パインなら力を使えば同じことが出来るかしら?」

パイン:「試してみましょう。」

そう言うとパインは扉に近づいた。

左手で扉を抑えると、折れ曲がった部分を右手で掴む。

そして力を加えた。

パインの右手が黒く変色して行く。

扉はギシギシと音を立てながら変形して行った。

そして、ある程度まで試すと力を抜いた。


パイン:「ふぅ。

    かなり硬いですね。

    時間をかければなんとかなると思います。」

キーラ:「そう。

    ちょっと変わってくれる。」

キーラは、パインと入れ替わるように扉の前にたった。

そして、扉の曲がった部分に手をかざすと呪文を唱えた。

その後、扉を掴み力強く引っ張った。

扉はまるで水飴の様にぐにゃりと曲がった。

キーラ:「どうやら、効果はあるようね。」

パイン:「えっ。

    どうやって?」

キーラ:「この魔法は、ソフティン*2という魔法よ。

    特定の金属を軟化させる効果があるのよ。

    もの凄く特殊な魔法で、よほどの事が無い限り

    わざわざ修得する魔導士は存在しないわね。

    そう。

    よほどの変わり者の魔導士か、あるいは、

    修得する魔法が無くなった魔導士とか以外わね。

    それにこんな魔法を使える魔導士は限られるわね。」

パイン:「それって、敵の中に優秀な魔導士が同行しているって

    ことですか?」

キーラ:「えぇ、そうなるわね。

    それも、かなり高位のね。

    魔導士の生き残るための6か条覚えている?」

パイン:「えーと。

    1.魔導士と悟られることなかれ。

    2.接近されることなかれ。

    3.先制されることなかれ。

    4.準備を怠ることなかれ。

    5. 常に罠を警戒すべし。

    6.切り札を用意すべし。

    でしたっけ?」

キーラ:「正解。

    この中で3の先制されることなかれは、最も重要よ。

    これによって多くの魔導士が命を落としているわ。

    もし、私に魔法攻撃が来た場合、私から離れなさい。

    力を持っている貴方達なら可能なはずよ。」

パイン:「えっ、でも。」

キーラ:「私は大丈夫。

    私一人だけならば、

    瞬時に魔法結界を張る事ができるわ。

    私の結果は強力よ。

    並みの魔導士には打ち破れないわ。」

パイン:「分かりました。」

キーラ:「それでは、先に進みましょう。」


3人は、警戒しながら部屋の中へと進み、

入口で立ち止まると部屋の中を観察した。

部屋は3つに仕切られていた。

3人が進んだ場所は部屋というより通路だった。

反対側には、入り口と同様に壊された扉があった。

左右は透明度の高いガラスのような壁で覆われている。

ガラスの向こう側は、白を基調とした色の壁。

見た事もない机や椅子。

机の上には、四角い箱のようなものが多数置かれており、

扉と思われるものが存在していた。

通路の天井には多数の良く分からない物がぶら下がっている。


パイン:「不思議な部屋ですね。

    まるで、ここを通る人を観察するような。」

キーラ:「そうね。

    たぶんそんな目的で作られたんでしょうね。」


この時、キーラは前方の床にある足跡を眺めていた。

積もった埃の上にくっきりと足跡が残っている。

多くの足跡が残されていたが、

ごく短時間でキーラは識別していた。

人数は、およそ7人。

足運びから見て、その内の一人はシーフ。

戦士等の肉体系が2人というところだろうか?

後は、ゴルザとナガット、そしてエレナ。

あと一つは、魔導士と思われるが、

明らかに他の足跡とは異なっている。

体重が軽すぎるように思えるのだ。

それだけではない、足跡に残留魔塵を感じたのだ。

キーラは特殊な能力を持っていた。

それは、別に特別なことではない。

人は、生まれながらにして特殊な能力を持っている。

プラス方向の能力もあれば、マイナス方向の能力もある。

しかし、人はそれを選ぶことはできない。

パインが強力な魔法耐性を持っているのと同じように、

キーラは、意識を集中すると残留魔塵を感じる事ができた。

ただ、それは明確に見えるのではなく、

なんとなく感じるだけではあるのだが。

足跡にまで残留魔塵を残す事ができる魔導士は限られる。

常に防御魔法等の魔法を掛け続けなければならない。

その為には人並み外れた魔力を持っていなければならないのだ。

それだけの魔力を持つ者がどれだけいるだろうか?

キーラの頭の中には、まるで走馬灯のように魔導士の顔が

浮かんでは消えていった。

そして、1人の魔導士に辿り着いた。

キーラは、ぼそりと呟く。

キーラ:「ザラス、、。

    まさかね。」

アンナ:「どうされました?」

キーラ:「いえ、何でもないわ。」




*1:力を使えば発動後でも逃げられるとは思うけど

  魔法陣による魔法の発動は瞬時であるが、

  それでも多少の遅延が発生する。

  その遅延は人間が行動する速度より早いため、

  常人では逃れる事はできないが、

  グレイグの能力を使えばその限りではない。


*2:ソフティン

  特定の金属(主に鉄)を軟化する。

  魔法具を作成するときに必要そうに思えるが、

  鉄を加工する場面は想像以上に少ない。

  剣や防具を作る場合は鍛冶職人に任せた方がより良い物を

  作り出せるからだ。

  修得することが難しいわりに使い道に困る魔法でもある。

  その為、修得する魔導士は稀である。


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