メルキス第4区画
報告者の話では、発見されたのは城塞都市メルキスであった。
当初キーラは、移動速度の件から不可能と判断していた。
公国内の全ての転移の魔法陣には、兵士を派遣していたからだ。
しかし、裏の転移の魔法陣の事を知ると考えを改めた。
裏の転移の魔法陣とは、各国で裏稼業を生業としている者達の
所有する転移の魔法陣である。
どんな国でも表に出ず、裏の仕事をする者達が存在する。
そのような者達は、国が禁止している事を金儲けの手段とし、
大金を取得しているのだ。
各国は、このような事を生業としている者達を
取り締まってはいるものの、特定が困難なうえに
買収される者までもが存在するため、思う様に進展していない。
長年に渡り間接的な経済攻撃を受け続けているのだ。
キーラ:「公国外どころか、
まさか、メルキスまで移動しているとは、、、。
考えてもいなかったわ。
ところで、メルキスは、今誰が管理しているのかしら?」
ドリム:「ラング将軍は、人魚の涙砦にいるので、
代わりではないが、ビッツ将軍が
指揮をとっているはず。」
キーラ:「ビッツ将軍?
確か王国軍の総司令官でしたか?」
ドリム:「その通りだ。」
キーラ:「ならば、至急連絡をとっていただけますか?
ラキとパインとアンナがメルキスに向かうと。」
ドリム:「対処しよう。」
ドリムはそそくさと軍議室を後にした。
キーラ:「さて、私達も出発しましょう。」
そして、3人はメルキスへと移動した。
メルキスでは、ビッツ将軍に会う事は出来なかったが、
ビッツ将軍の計らいによりクーザという兵士が出迎えてくれた。
ビッツ将軍からの親書には、最もメルキスに詳しい部下を
案内役として送ったと書いてあった。。
ラキ:「さて、クーザさん。
目撃者に合わせて頂戴。」
クーザ:「それなのですが、仕事の関係でこちらに来れないと
言っているのです。」
ラキ:「いいわよ。
私達が向かいましょう。」
4人は目撃者に会うために、第3区画と第4区画の間に存在する
城壁の上へと移動することになった。
クーザの後に続き進んで行く。
そして、第4区画の城門が目の前に現れた。
第4区画の城門は他の門と異なり、建物で覆われており、
建物の入口の前には何かを警戒するように、数人の兵士が
立っていた。
しかし、クーザはその建物を通り過ぎ、
第3区画の城門へと向かった。
パインは、その行為に不思議がり理由を聞いた。
パイン:「第3と第4区画の間の城壁なんですよね。
第4区画から行けないのでしょうか?」
クーザ:「えっ?」
パイン:「いや、そっちの方が近いかと思いまして。」
クーザ:「あぁ、そうですよね。
当然ご存じないですよね。
実は第4区画からは、
城壁の上に行くことはできないんですよ。
それに色々と危険もありまして。」
パイン:「危険?」
クーザ:「いえ、それは、こちらの話です。」
パインは、何か釈然としない感覚を覚えながら
クーザの後を進んだ。
第3区画に入ると中は非常に入り組んでいた。
細い道がまるで迷路のように続いていた。
それは、我先にと隙間に家を埋め込んだようにも見えた。
パイン:「すごい入り組んでますね。
まったく道が覚えられませんよ。
他の区画もこんな感じなのですか?」
クーザ:「第1から第3区画は、こんな感じですね。
なにせ、住宅街ですからね。
第5区画以降は、もう少し整備されていますよ。」
パインは触れるのを一瞬ためらったが、思い切って質問した。
パイン:「第4区画はどうなんですか?」
クーザ:「あそこは、立ち入りを制限されていて、
我々軍兵士でも自由に立ち入ることが
できないんですよ。」
パイン:「メルキスに、そんな場所があったんですね。」
クーザ:「まあ、実際に制限されているのは、第4区画の一部
なんですが、ここと同じように
道が入り組んでいるので避けているんです。」
パイン:「なるほど。」
クーザ:「到着しました。
ここから上へあがりましょう。」
城壁の壁に空いた穴の先に上へあがる階段があった。
そして、それを4人は登って行く。
上まで登りきると、城壁の上はメルキスの区画を
一望できる高さであった。
そして、目的の人物を発見した。
そこにいたのは、1人の少年だった。
少年はじっと第4区画を見ていた。
そして、我々の気配に気が付くとこちらを向き近寄ってきた。
少年:「もしかして、あんた達が客かい?」
ラキ:「客?」
少年:「女性を担いだ男の情報が欲しいんじゃないのか?」
ラキ:「あぁ、そう言う事ね。
そう、客よ。
それも上客よ。」
少年:「上客か、面白い事いうね。
自分から上客なんて言う客は初めてだよ。
うーん、面白い。
そうだ、おれは情報屋のリックってんだ。」
ラキは、フードをめくりあげながら言った。
ラキ:「なるほどね。
初めまして、リック。」
リック:「うほーっ!!
お姉さん、めちゃくちゃ美人じゃない。
いい店紹介するよ。
働いてみない?」
アンナ:「おぃ、おまえ!!」
アンナは、少し興奮気味に怒鳴った。
ラキは、右手を上げてアンナを黙らせる。
ラキ:「それで、リック。
どんな情報を売ってくれるの?」
リック:「そうだな。
女を担いだ男が屋根伝いに移動して、ある場所に
入って行ったのを見たって言ったら?」
アンナの顔が一気に変わった。
アンナ:「本当でしょうね?」
リック:「あぁ、本当だよ。
こっちへ来なよ。」
リックは城壁の端まで移動すると指をさした。
リック:「そいつは、あそこの塔から現れたんだ。」
彼の指さす方法には、小指の先程の塔らしきものがあった。
しかし、常人の目にはそれを塔と識別することは困難だった。
アンナは目を凝らしてそれを見ようとした。
しかし、残念ながら塔と識別することは出来なかった。
アンナ:「あんたね。
なにをとぼけたこと言ってるの。
あんなの見えるわけないでしょ。」
その時パインが間に割って入った。
パイン:「いや、彼の言っている事は本当ですよ。
確かに塔があります。」
リック:「へー。あんた目がいいんだね。
どうだい、一緒に遠目をやらないかい?」
パイン:「遠目?」
リック:「あぁ、遠目ってのは、
仲間の隠語で監視者のことさ。
遠くから人や物を監視する商売だよ。
そのついでに、色々な情報を仕入れているんだ。」
アンナ:「それで、そいつは、何処に向かったの。」
リック:「それは、金額次第だよ。」
ラキ:「わかったわ。」
ラキは、ローブの中をゴソゴソと探すと、
1枚の貨幣を取り出し、リックに見せた。
リック:「えっ、それってまさかプラチナ貨かい?」
ラキ:「えぇ、そうよ。」
リック:「それじゃあ、ダメだ。」
ラキ:「それじゃあ、いったい何枚ほしいの?」
ラキは、ローブの中をまたゴソゴソと探る。
リック:「そうじゃない。
大金すぎるんだよ。」
ラキ:「えっ?」
ラキの動きが止まった。
リック:「そんな大金持ってたら、すぐに襲われちまう。
そうだな、相場なら銀貨3枚だろうな。」
ラキ:「それでだけで、いいの?」
リック:「あっ、そうだ。
そんな大金だす気があるなら、
頼まれてほしい事がある。」
ラキ:「なにかしら、言ってみて。」
リック:「そのお金で傭兵を雇ってほしいんだ。」
ラキ:「傭兵?
一体、何をしようとしてるの?」
リック:「あるものを取り返すんだ。」
ラキ:「どういう事?」
リックの話によると、リックの大切なものが、
ゴルザの手の者達によって奪い取られた物らしい。
クーザ:「ゴルザだって!!」
ラキ:「どうしたの?」
クーザ:「話はちょっと複雑でして。」
クーザは、メルキスの歴史について話始めた。
砦を拡張した時、メルキス将軍は全ての者を受け入れた。
しかし、当然のことであるが、その中には善人ばかりではなく
悪人も含まれていた。
初めの内は、特に問題は起こらなかった。
しかし、時間が経つにつれて、次第に悪人の行動はあからさまに
なって行った。
そしてついにメルキス将軍は、軍を動かしたのだ。
しかし、事態は想像以上に難解だった。
いくら調査しても、主犯に辿り着けなかったのだ。
それは、軍の中にも協力者が存在していることを意味した。
解決策が見つからず八方ふさがりに陥った。
しかし、対象が第4区画にいることまでは判明した。
そこで、他の区画から出ていくことを条件に、
第4区画を悪人に開放したのだ。
そして、年月が流れ、現在第4区画の影の支配者は、
ゴルザだということだった。
ラキ:「ふーん。
面白いわね。
傭兵を雇うよりも私達を雇わない?
報酬は、情報ね。」
クーザ:「!!」
リック:「えっ?
本気で言ってるのかい?
命の保証は無いんだよ。」
ラキ:「えぇ、本気よ。
そこいらの傭兵よりも、私達の方が強いわよ。
それに、目的の相手は、たぶんゴルザの所よ。
リック、そうじゃないの?」
リック:「うーん、たぶん当たりだ。
それにしても、何故わかったんだい?」
ラキ:「私達の話を聞いて、チャンスだと思ったんでしょ。
傭兵を雇って、ゴルザの近くで騒ぎを起こして、
その間に取り戻そうと考えた。
私達もそれに巻き込むことができれば、
さらに騒ぎは大きくなるしね。
まあ、そんなところでしょうね。」
リック:「んー。
まいったな。
その通りだよ。
でも、悪気があったわけじゃないんだよ。」
ラキ:「えぇ、分かっているわ。
リックがやらなかったとしても、
私達は、行ったでしょうからね。」
リック:「そうか。
その女性は君達にとって大切な人なんだね。」
アンナ:「もちろん!!」
リック:「わかったよ。
俺も協力するよ。
その代わり姉さんを助け出すのを手伝ってほしい。」
ラキ:「なるほどね。
大切なものってお姉さんの事だったのね。」
リック:「そう。
俺のせいなんだ。」
そう言ってリックは黙り込んでしまった。
ラキ:「何があったかは、聞かないわ。
それじゃあ、さっそく貴方が見た事を話して頂戴。」
リック:「わかった。」
そして、リックは、昨晩の出来事を話始めた。
リックは、毎晩ゴルザの動向を監視していた。
実際には、ゴルザではなく、ゴルザの女をだが。
そろそろ戻ろうとした時に塔の近くに人影が見えた。
その者は、人らしき物をを小脇に抱え、
人間離れした跳躍力で屋根の上を高速移動していた。
最初、リックは、魔物の類かと思っていた。
しかし、距離が近づくにつれ人間であることがハッキリと
わかった。
そして、マーケットの入口へと消えていった。
クーザ:「なんだ、マーケットって?」
リック:「普通知らないよね。
地下街の事だよ。
第4区画に住んでいる者のほとんどが
その存在をしらない。
そんな闇のマーケットが存在するんだよ。」
クーザ:「何故知っている?」
リック:「最初に言っただろ。
情報屋だって。
だけど、この情報は、売るに売れない情報なんだ。
売ったことがばれたら命が危ないんだよ。
だから、誰にも話していない。
今話したのが初めてさ。」
ラキ:「地下街ね。
面白くなってきたわね。
あまりゴルザを待たせるのも悪いし、
そろそろ、出発しましょうか。」
ラキは、ふとアンナの剣に目が行った。
ラキ:「アンナ。
試し切りには、丁度いいかもしれないわよ。」
アンナ:「えぇ、そうですね。」
アンナは、視線を腰に差した剣へと向けると、
剣の柄にそっと触れた。




