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グレイグ  作者: 夢之中
29/52

メルキス第4区画


報告者の話では、発見されたのは城塞都市メルキスであった。

当初キーラは、移動速度の件から不可能と判断していた。

公国内の全ての転移の魔法陣には、兵士を派遣していたからだ。

しかし、裏の転移の魔法陣の事を知ると考えを改めた。


裏の転移の魔法陣とは、各国で裏稼業を生業としている者達の

所有する転移の魔法陣である。

どんな国でも表に出ず、裏の仕事をする者達が存在する。

そのような者達は、国が禁止している事を金儲けの手段とし、

大金を取得しているのだ。

各国は、このような事を生業としている者達を

取り締まってはいるものの、特定が困難なうえに

買収される者までもが存在するため、思う様に進展していない。

長年に渡り間接的な経済攻撃を受け続けているのだ。


キーラ:「公国外どころか、

    まさか、メルキスまで移動しているとは、、、。

    考えてもいなかったわ。

    ところで、メルキスは、今誰が管理しているのかしら?」

ドリム:「ラング将軍は、人魚の涙砦にいるので、

    代わりではないが、ビッツ将軍が

    指揮をとっているはず。」

キーラ:「ビッツ将軍?

    確か王国軍の総司令官でしたか?」

ドリム:「その通りだ。」

キーラ:「ならば、至急連絡をとっていただけますか?

    ラキとパインとアンナがメルキスに向かうと。」

ドリム:「対処しよう。」

ドリムはそそくさと軍議室を後にした。

キーラ:「さて、私達も出発しましょう。」

そして、3人はメルキスへと移動した。


メルキスでは、ビッツ将軍に会う事は出来なかったが、

ビッツ将軍の計らいによりクーザという兵士が出迎えてくれた。

ビッツ将軍からの親書には、最もメルキスに詳しい部下を

案内役として送ったと書いてあった。。


ラキ:「さて、クーザさん。

   目撃者に合わせて頂戴。」

クーザ:「それなのですが、仕事の関係でこちらに来れないと

    言っているのです。」

ラキ:「いいわよ。

   私達が向かいましょう。」

4人は目撃者に会うために、第3区画と第4区画の間に存在する

城壁の上へと移動することになった。

クーザの後に続き進んで行く。

そして、第4区画の城門が目の前に現れた。

第4区画の城門は他の門と異なり、建物で覆われており、

建物の入口の前には何かを警戒するように、数人の兵士が

立っていた。

しかし、クーザはその建物を通り過ぎ、

第3区画の城門へと向かった。

パインは、その行為に不思議がり理由を聞いた。

パイン:「第3と第4区画の間の城壁なんですよね。

    第4区画から行けないのでしょうか?」

クーザ:「えっ?」

パイン:「いや、そっちの方が近いかと思いまして。」

クーザ:「あぁ、そうですよね。

    当然ご存じないですよね。

    実は第4区画からは、

    城壁の上に行くことはできないんですよ。

    それに色々と危険もありまして。」

パイン:「危険?」

クーザ:「いえ、それは、こちらの話です。」

パインは、何か釈然としない感覚を覚えながら

クーザの後を進んだ。

第3区画に入ると中は非常に入り組んでいた。

細い道がまるで迷路のように続いていた。

それは、我先にと隙間に家を埋め込んだようにも見えた。

パイン:「すごい入り組んでますね。

    まったく道が覚えられませんよ。

    他の区画もこんな感じなのですか?」

クーザ:「第1から第3区画は、こんな感じですね。

    なにせ、住宅街ですからね。

    第5区画以降は、もう少し整備されていますよ。」

パインは触れるのを一瞬ためらったが、思い切って質問した。

パイン:「第4区画はどうなんですか?」

クーザ:「あそこは、立ち入りを制限されていて、

    我々軍兵士でも自由に立ち入ることが

    できないんですよ。」

パイン:「メルキスに、そんな場所があったんですね。」

クーザ:「まあ、実際に制限されているのは、第4区画の一部

    なんですが、ここと同じように

    道が入り組んでいるので避けているんです。」

パイン:「なるほど。」

クーザ:「到着しました。

    ここから上へあがりましょう。」

城壁の壁に空いた穴の先に上へあがる階段があった。

そして、それを4人は登って行く。

上まで登りきると、城壁の上はメルキスの区画を

一望できる高さであった。

そして、目的の人物を発見した。

そこにいたのは、1人の少年だった。

少年はじっと第4区画を見ていた。

そして、我々の気配に気が付くとこちらを向き近寄ってきた。


少年:「もしかして、あんた達が客かい?」

ラキ:「客?」

少年:「女性を担いだ男の情報が欲しいんじゃないのか?」

ラキ:「あぁ、そう言う事ね。

   そう、客よ。

   それも上客よ。」

少年:「上客か、面白い事いうね。

   自分から上客なんて言う客は初めてだよ。

   うーん、面白い。

   そうだ、おれは情報屋のリックってんだ。」

ラキは、フードをめくりあげながら言った。

ラキ:「なるほどね。

   初めまして、リック。」

リック:「うほーっ!!

    お姉さん、めちゃくちゃ美人じゃない。

    いい店紹介するよ。

    働いてみない?」

アンナ:「おぃ、おまえ!!」

アンナは、少し興奮気味に怒鳴った。

ラキは、右手を上げてアンナを黙らせる。

ラキ:「それで、リック。

   どんな情報を売ってくれるの?」

リック:「そうだな。

    女を担いだ男が屋根伝いに移動して、ある場所に

    入って行ったのを見たって言ったら?」

アンナの顔が一気に変わった。

アンナ:「本当でしょうね?」

リック:「あぁ、本当だよ。

     こっちへ来なよ。」

リックは城壁の端まで移動すると指をさした。

リック:「そいつは、あそこの塔から現れたんだ。」

彼の指さす方法には、小指の先程の塔らしきものがあった。

しかし、常人の目にはそれを塔と識別することは困難だった。

アンナは目を凝らしてそれを見ようとした。

しかし、残念ながら塔と識別することは出来なかった。

アンナ:「あんたね。

    なにをとぼけたこと言ってるの。

    あんなの見えるわけないでしょ。」

その時パインが間に割って入った。

パイン:「いや、彼の言っている事は本当ですよ。

    確かに塔があります。」

リック:「へー。あんた目がいいんだね。

    どうだい、一緒に遠目をやらないかい?」

パイン:「遠目?」

リック:「あぁ、遠目ってのは、

    仲間の隠語で監視者のことさ。

    遠くから人や物を監視する商売だよ。

    そのついでに、色々な情報を仕入れているんだ。」

アンナ:「それで、そいつは、何処に向かったの。」

リック:「それは、金額次第だよ。」

ラキ:「わかったわ。」

ラキは、ローブの中をゴソゴソと探すと、

1枚の貨幣を取り出し、リックに見せた。

リック:「えっ、それってまさかプラチナ貨かい?」

ラキ:「えぇ、そうよ。」

リック:「それじゃあ、ダメだ。」

ラキ:「それじゃあ、いったい何枚ほしいの?」

ラキは、ローブの中をまたゴソゴソと探る。

リック:「そうじゃない。

    大金すぎるんだよ。」

ラキ:「えっ?」

ラキの動きが止まった。

リック:「そんな大金持ってたら、すぐに襲われちまう。

    そうだな、相場なら銀貨3枚だろうな。」

ラキ:「それでだけで、いいの?」

リック:「あっ、そうだ。

    そんな大金だす気があるなら、

    頼まれてほしい事がある。」

ラキ:「なにかしら、言ってみて。」

リック:「そのお金で傭兵を雇ってほしいんだ。」

ラキ:「傭兵?

   一体、何をしようとしてるの?」

リック:「あるものを取り返すんだ。」

ラキ:「どういう事?」


リックの話によると、リックの大切なものが、

ゴルザの手の者達によって奪い取られた物らしい。


クーザ:「ゴルザだって!!」

ラキ:「どうしたの?」

クーザ:「話はちょっと複雑でして。」


クーザは、メルキスの歴史について話始めた。

砦を拡張した時、メルキス将軍は全ての者を受け入れた。

しかし、当然のことであるが、その中には善人ばかりではなく

悪人も含まれていた。

初めの内は、特に問題は起こらなかった。

しかし、時間が経つにつれて、次第に悪人の行動はあからさまに

なって行った。

そしてついにメルキス将軍は、軍を動かしたのだ。

しかし、事態は想像以上に難解だった。

いくら調査しても、主犯に辿り着けなかったのだ。

それは、軍の中にも協力者が存在していることを意味した。

解決策が見つからず八方ふさがりに陥った。

しかし、対象が第4区画にいることまでは判明した。

そこで、他の区画から出ていくことを条件に、

第4区画を悪人に開放したのだ。

そして、年月が流れ、現在第4区画の影の支配者は、

ゴルザだということだった。


ラキ:「ふーん。

   面白いわね。

   傭兵を雇うよりも私達を雇わない?

   報酬は、情報ね。」

クーザ:「!!」

リック:「えっ?

    本気で言ってるのかい?

    命の保証は無いんだよ。」

ラキ:「えぇ、本気よ。

   そこいらの傭兵よりも、私達の方が強いわよ。

   それに、目的の相手は、たぶんゴルザの所よ。

   リック、そうじゃないの?」

リック:「うーん、たぶん当たりだ。

    それにしても、何故わかったんだい?」

ラキ:「私達の話を聞いて、チャンスだと思ったんでしょ。

   傭兵を雇って、ゴルザの近くで騒ぎを起こして、

   その間に取り戻そうと考えた。

   私達もそれに巻き込むことができれば、

   さらに騒ぎは大きくなるしね。

   まあ、そんなところでしょうね。」

リック:「んー。

    まいったな。

    その通りだよ。

    でも、悪気があったわけじゃないんだよ。」

ラキ:「えぇ、分かっているわ。

   リックがやらなかったとしても、

   私達は、行ったでしょうからね。」

リック:「そうか。

    その女性は君達にとって大切な人なんだね。」

アンナ:「もちろん!!」

リック:「わかったよ。

    俺も協力するよ。

    その代わり姉さんを助け出すのを手伝ってほしい。」

ラキ:「なるほどね。

   大切なものってお姉さんの事だったのね。」

リック:「そう。

    俺のせいなんだ。」

そう言ってリックは黙り込んでしまった。

ラキ:「何があったかは、聞かないわ。

   それじゃあ、さっそく貴方が見た事を話して頂戴。」

リック:「わかった。」

そして、リックは、昨晩の出来事を話始めた。


リックは、毎晩ゴルザの動向を監視していた。

実際には、ゴルザではなく、ゴルザの女をだが。

そろそろ戻ろうとした時に塔の近くに人影が見えた。

その者は、人らしき物をを小脇に抱え、

人間離れした跳躍力で屋根の上を高速移動していた。

最初、リックは、魔物の類かと思っていた。

しかし、距離が近づくにつれ人間であることがハッキリと

わかった。

そして、マーケットの入口へと消えていった。


クーザ:「なんだ、マーケットって?」

リック:「普通知らないよね。

    地下街の事だよ。

    第4区画に住んでいる者のほとんどが

    その存在をしらない。

    そんな闇のマーケットが存在するんだよ。」

クーザ:「何故知っている?」

リック:「最初に言っただろ。

    情報屋だって。

    だけど、この情報は、売るに売れない情報なんだ。

    売ったことがばれたら命が危ないんだよ。

    だから、誰にも話していない。

    今話したのが初めてさ。」

ラキ:「地下街ね。

   面白くなってきたわね。

   あまりゴルザを待たせるのも悪いし、

   そろそろ、出発しましょうか。」

ラキは、ふとアンナの剣に目が行った。

ラキ:「アンナ。

   試し切りには、丁度いいかもしれないわよ。」

アンナ:「えぇ、そうですね。」

アンナは、視線を腰に差した剣へと向けると、

剣の柄にそっと触れた。


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