表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレイグ  作者: 夢之中
26/52

再会


キーラ、パイン、エレナの3人がドリム公国へ転移した後、

しばらくして、アライン、ゾル、ミクスタ、トマスの4人も

ドリム公国へと無事帰還した。

6人+ドリム大公が作戦の成功を喜んでいる間も連合軍の

進軍は続けられていた。


連合軍は、敵の遠隔攻撃が治まったのを機に進軍を速めた。

そして、人魚の涙に作られた最初の城門の攻略を開始した。

想像していた事とは異なり、敵の反撃は無く、

連合軍は損害を出さずに城門を落とす事ができた。

連合軍は、さらに進軍を速めた。

そしてついに、砦を取り囲み、敵の反応をまった。

敵からの反撃は驚くべき程に少なかった。

砦の外に出撃することもなかった。

空中での槍の回避に危惧しているのではないかと思われた。


メルキス軍の総司令ラングの元にエレナ救出の報が届いたのは

この頃であった。

極秘の作戦であり、ラングはこの作戦のことを知らなかった。

そしてラキがこの件に関与しているだろうことを想像した。


エレナの救出、そして砦の司令官の死。

それを受けてラングは、総攻撃を開始した。

後方にいた魔法部隊が前方に移動し*1、魔法攻撃を開始すると

砦は火の海と化した。

ラングは、同時に砦の攻略を命じた。


ドリム大公の元に連合軍の勝利の報が届いたのは、

次の日の朝のことであった。

連合軍の死傷者数は2000人強、

敵の死者数は20人程度であったことが報告された。

その内、力を得ていた者は、10人程度であったと思われた。

力を得た者の戦闘力は、単純に考えても10人が2000人に

匹敵する力であると考えられた。

砦の中の戦闘は、乱戦であり、

敵は、陽動によりばらけていたのだ。

砦に突入した兵士達は、重装歩兵であった。

重装歩兵は、フルプレートアーマーを装備した部隊である。

並みの剣では、鎧を貫いたら最後、

剣は使い物にならなくなるだろう。

たとえ魔法の剣だとしても、200人の鎧を切る事は

不可能だと考えられた。

しかし力を得た者はそれを成し遂げた。

彼等は、プレートアーマーのつなぎ目や隙間に剣を

突き刺したのだ。

しかも、周りは敵だらけの中でだ。

これは、驚くべきことであった。

戦力差が大きくなれば損害は減るのが普通*2であるため、

それ以上の戦力であると考えざるを得ない。

この事実は、貴族達を恐れさせるのに値する結果でもあった。

そのため、貴族達には勝利のみを公表し、

戦死者数などは明かされることはなかった。

これは、貴族達の離反を防ぐことが目的とされた。

そして、態勢を整える為という名目の元、

人魚の涙の砦から先の進軍は一時休止された。


パインとキーラがドリム大公に呼び出されたのは、

その日の昼のことだった。


ドリム:「知っての通り、連合軍は砦の戦いで勝利した。

    現在、砦内の調査が行われている最中だ。

    ここに呼び出したのは他でもない。

    2つの白い玉が発見されたのだ。」

パイン:「えっ、私にはわかりませんでしたよ。」

キーラ:「距離の問題か、あるいは隠蔽する方法が

    何かあるのでしょうね。

    そして、それは最近知ったか、

    あるいは最近入手したのね。

    メルトニアに有ったと考えるのが普通よね。」

パイン:「なるほど。」

キーラ:「パイン。

    早速見に行ってみない?」

パイン:「はい。」

ドリム:「砦には転受の魔法陣が存在しない。

    監視塔から向かうのが良いだろう。」


キーラとパインは冒険者協会から監視塔へと転移した。

その場所は初めてパインがゾルと出会った場所でもあった。

キーラ:「この塔は何なの?

    出入口が無いじゃない。」

パイン:「あっ、そうでした。

    武器部屋の箱の腕輪を装備してください。」

2人は2階へと移動し、腕輪を入手してキーラに渡した。


2人揃って、塔の外へと出ると、草原を話しながら歩き始めた。

キーラ:「壁の仕掛けは、面白いわね。

    仕組みは隠し部屋の壁と同じだけど、出る為に使う。

    こういう使い方もあるのね。」

パイン:「キーラにも知らないことがあるのですね。」

キーラ:「それは、買い被りすぎよ。

    確かに他の人よりも長く生きて来たけれど、

    それでも得る事が出来た知識は極わずかなのよ。

    世の全てを知る事は不可能なの。

    だからこそ、知り得た知識の先を見ないといけないの。

    知識というのは利用できなければ意味が無いのよ。

    優秀なものは、知識を使って何かを成し遂げる。

    知識があっても何も成し遂げられなければ、

    それだけの人ということよ。」

パイン:「何かを成し遂げるか。

    自分にはまだまだ知識が足りません。」

キーラ:「パインはまだ若いんだから、知識を蓄える時なのよ。」

パイン:「確かにそうですね。」

キーラ:「成し遂げる者にとって無駄な知識は存在しないと

    知りなさい。

    知識の中には、その答えにたどり着いた

    考え方が存在するの。

    その考え方は他の事にも応用が利くのよ。

    だから考え方を手に入れる事が一番重要なの。

    考え方を多く知れば知るほど、新しい考え方を

    導き出しやすいからね。」

パイン:「なるほど。

    今回の壁の仕組みは、新しい考え方から生まれた、

    一つの形という訳ですね。」


2人の話は尽きなかった。

そして数時間かけて最初の門へと到着した。

巨大な門は、ボロボロだった。

それは連合軍の攻撃の凄まじさを物語っていた。

パインは辺りを見ると、表情を曇らせた。

パインは口にこそ出さなかったものの、辺りの土や草に

こびりついた血の跡に気が付いたのだ。

門を抜け、さらに小一時間歩いたところで、

砦の外壁が見えてきた。


その時、突然声をかけられた。

???:「おい、お前達。

    何者だ?」

2人が振り向くと、そこにいたのは連合軍の巡回兵達であった。

巡回兵:「一体なにをやってる。」

2人はフードを上げると、顔を見せた。

ラキ:「ラング将軍に会いにやってきました。」

巡回兵:「なんだと。

    怪しい奴め。

    隊長!!。

    怪しい奴等を発見しました!!。」

その声に反応して巡回兵の後ろから近付いてきたのは、

ラングを2回り程、小さくした厳つい男だった。

隊長:「なんだ。

   んっ?

   誰だ?、こいつらは。」

巡回兵:「不審な者を発見しました。」

隊長と思われる男はラキとパインを睨むと言った。

隊長:「お前達は何者だ?」

ラキは、ラングに会うために来たことを説明した。

しかし、白い玉のことは伏せておいた。


隊長:「これはこれは、ラキ将軍ですか。

   と言うとでも思ったのか?

   残念ながら、ラキという将軍は聞いたことは無い。」

巡回兵が隊長に耳打ちした。

巡回兵:「しかし、もしこの者達の言っている事が事実ならば、

    後で咎めを受けるかもしれません。」

隊長:「確かにそうだな。」

隊長は2人を再度見ると言った。

隊長:「ラキ将軍。

   ラング将軍の元まで、護衛させていただきます。」

口調は丁寧になったが、その目は明らかに疑いの目だった。

そう言って巡回兵達に指示をだす。

ラキとパインは巡回兵に取り囲まれる形になった。

パイン:(くそっ。

    これは、護衛と言いながらの連行じゃないか。)

ラキ:「まあ、私を知らないのでは、しょうがないわね。

   指示に従うわ。

   但し、手荒な真似はしないようにね。」

隊長:「分かっておりますとも。」


巡回部隊は、最後尾には、他に捕まったと思われる者が

拘束され連行されていた。

そして、2人は連行されるがままに、

ラング将軍の元へと向かった。


砦の門の外には、ひと張の大きめのテントが設営されていた。

門の内側では、兵士達が消火を行っているのが見えた。

砦の中は、まだ燃えている場所が存在しているようだった。

テントの周りには、警備の兵が立っている。

ラキ:「どうやら、目的地のようね。」

隊長が1人で中に入り、そして出てくると言った。

隊長:「ラキ将軍閣下。

   ラング将軍閣下が中でお待ちです。」

隊長の言葉遣いは非常に丁寧であった。

ラキの話が事実であることを知ったのであろう。


隊長が右手を上げると、ラキとパインの周りの兵達が散開した。

ラキは、ニッコリとほほ笑み、

隊長に 「護衛、ありがとう。」 と告げると、

テントの中へと足を踏み入れた。


テントは想像以上に大きかった。

入口から最も遠く離れた場所にラングが座っていた。

ラングは立ち上がると、睨み付けるような顔をしながら、

ラキの元へとやってきた。


ラング:「これはこれは、ラキ殿ではないですか?」

ラキ:「ラング将軍。

   この度の勝利、おめでとうございます。」

ラキはそう言って頭を下げる。

ラング:「いえいえ、攪乱が成功したことが勝因ですよ。

    その上に救出作戦まで成功されるとは。」

ラキ:「そんなことはありませんよ。

   力を得た者を倒せたのはラング将軍の才覚があっての事。

   ラング将軍でなければ、成し得なかったことでしょう。」

ラング:「ほう。

    そのように報告していただけますかな?」

ラキ:「もちろんですとも。」

その言葉にラングは笑みを漏らした。

ラング:「いやいや。

    儀礼(?)はここで終わりにしよう。

    さて、ラキ殿。

    今日は、何用で来られたのかな?」

ラキはラングに近づくと耳打ちした。

ラング:「なるほど。

    それならば、地下ですね。

    あそこは、火災の被害を受けていない。

    案内できる者をつけましょう。」

ラキ:「いえ、大丈夫です。

   ここの見取り図は頭に入っています。」

ラング:「あぁ、そうでしたな。

    ならば、腕章を。」

ラングは側近の兵に指示すると、腕章をラキに手渡した。


2人がテントを出た時、外には1人の拘束された男がいた。

パインは、その顔を見て驚いた。

パイン:「ナガット。

    ナガットじゃないか?」

ナガット:「えっ?」

うつ向いていた男は顔を上げるとパインを見た。

ナガット:「パイン。

     パインなのか?」

パイン:「よかった。

    一体どして?」

ラキ:「知り合いなの?」

パイン:「はい。」

兵士はラキの腕章を確認すると言った。

兵士:「将軍。

   勝手に会話されては、こまります。

   ラング将軍の尋問が終わってからにしてください。」

パイン:「・・・」

テントの中から声が聞こえた。

 「よし、はいれ。」

その声で兵士とナガットはテントへと入って行った。

ラキ:「パイン。

   私達も戻りましょう。」

そして、2人はテントの中へと戻り、邪魔にならない位置へと

移動した。

ラングは、2人に気が付いたが特に何も言わなかった。


ラング:「さて、幾つか質問をさせてもらおう。

    名前と職業、出身は?」

ナガット:「ナガット・パミエ。

     神聖魔導士見習いです。

     出身は、バーランドです。」

ラング:「なるほど、王国の民か。

    何故、あそこにいた?」

ナガット:「実は、良く分からないのです。」

ラング:「良く分からないとは、どういうことだ?」

ナガット:「気がついたら、砦の牢屋の中にいました。

     何が何だか分からないんです。」

ラング:「ずっと牢屋に閉じ込められていたのかね?」

ナガット:「はい。」

ラング:「食事は?」

ナガット:「食事は定期的に運ばれてきました。」

ラング:「では、意識を失う前は、何をしていた?」

ナガット:「そこにいるパインと一緒にいました。

     滝から落ちて意識を失いました。」

ラング:「パイン殿、それは事実かな?」

パイン:「はい。」

ラング:「なるほど。

    では、どうやって牢屋からでたのだ?」

ナガット:「今回の攻撃で壁が壊れたのです。

     最初は何が起こったのか、わかりませんでした。

     そして、開いた穴から脱出しました。」

ラング:「おい。

    牢屋が壊れたという報告はあるか?」

兵士:「はい、南側に牢屋がありました。

   そこは、魔法攻撃の直撃を受けています。」

ラング:「そうか。

    では、牢屋から脱出した後はどうした?」

ナガット:「壁際を移動しながら、北西に向かいました。

     壁の所に人が通れる亀裂があって、

     そこを通って外にでました。」

ラング:「おい、すぐに調べさせろ。」

その言葉に兵士の一人がテントを後にする。

ラング:「その後は?」

ナガット:「森に入り、じっとしていました。」

ラング:「今のところ、おかしなところは無いようだな。

    ラキ殿、貴殿はどう思う?」

ラキ:「そうね。

    特に怪しいところは別に無さそうね。」

ラングは、しばらくの間、黙っていた。

少し経つと1人の兵士がテントへと入ってきた。

兵士:「報告します。

   北西の壁に亀裂がある事を確認しました。」

ラング:「そうか。

    わかった。

    どうやら、矛盾はないようだな。

    さて、ラキ殿。

    この者の処分だが、パイン殿とも知り合いのようだ。

    貴殿の管理下に置くということで、どうだろうか?」

ラキ:「それは願ったりね。

   私の方で引き取りましょう。

   ただ、私達の用事が終わるまで、

   引き取り保留ということで。」

ラング:「わかった。」

ラキ:「この事とは別でちょっとお耳に入れたいことが。」

ラキは、ラングに近づくと耳打ちした。

ラング:「なんだと!!。」

ラング:「んっ、そう言う事か。

    わかった。」

そして、2人は、ナガットを残してテントを後にした。


ラキとパインは、地下を歩いていた。

腕章の効果は絶大だった。

道すがら出会う兵士達は、腕章を見るなり、直立不動で

敬礼をしてくる。

2人は何の弊害もなく、移動することができた。

そして、エレナが監禁されていた部屋の先にそれはあった。

台の上に2つの玉が置かれていた。


パインは、目の前に置かれた白い玉を見ながら呟いた。

パイン:「やはり、なにも感じない。」

よく見ると、白い玉は何かに覆われているようだった。

パインは、手拭き用の布切れを取り出すと、玉を拭き始めた。

玉は、べとべとしたもので覆われていた。

すると突然、グレイグの声が聞こえた。

グレイグ:(見つけた。

     目の前だ。)

同時にパインの目の力も発動した。

赤い目印が目の前に現れる。


パイン:「どうやら、このべとべとしたものが、

    力を妨げているようですね。」

ラキ:「やはりそうだったのね。

   それで、得られた力は?」

パインは、布から手を離すと、直接玉に触れた。

グレイグ:(バレットの力を手に入れたぞ。

     これは、血液を硬化して弾のように打ち出す力だ。)

パイン:「敵の遠隔攻撃の正体が分かりました。

    バレットと言うようです。

    弾の正体は血液を硬化したもののようです。」

ラキ:「それは、すごいわね。

   考えもしなかったわ。

   それで、もう一つは?」

パインは、もう一つの玉を拭くと、玉に触れた。

グレイグ:(パイン、よくやった。

     グラントゥの力を手に入れたぞ。

     この力は己の力を僕に与えることが出来る力だ。)

パイン:(一体誰に?)

グレイグ:(お前なら分かるはずだ。

     お前は、既に僕と出会っている。)

パイン:「やはりそうか。」

ラキ:「どうしたの?」

パイン:「ついに見つけました。

    仲間に力を与える方法を。」

ラキ:「やったわね。」

パイン:「ちょっとまってください。」

グレイグ:(しかし、これは終わりではない。

     始まりなのだ。

     僕を集めよ。

     そして、僕達を引き連れ、

     黒の根源の元へと向かうのだ。

     そこで勝利することが終わりであり、

     始まりなのだ。

     もう良いだろう。

     私の始まりについて話そう。)

        :

        :


ラキ:「パイン!!、パイン!!。」

パイン:「あっ、なんでしょう?」

パインが眼を開くと目の前にキーラの顔があった。

ラキ:「あなた、突然気を失ったのよ。」

パインは、自分が床に寝かされている事を初めて知った。

そして、ゆっくりと起き上がった。


ラキ:「何があったの?」

パイン:「いや、よく覚えていないんです。

    グレイグの始まりの事を聞かされたようなんですが、

    それが一体なんなのか?

    ただ、覚えている事もあります。」

ラキ:「それはなに?」

パイン:「グレイグには、白い自分と黒い自分が存在していて、

    白と黒の力を与えられる者は異なっていると。」

ラキ:「つまり、力を与えられる者は何かの要因によって

   決まっていて、

   白と黒では、適合者は異なるという事かしら?」

パイン:「えぇ、多分そうです。

    あと、力は分け与えられると。」

ラキ:「どういう意味かしら?」

パイン:「その時が来れば分かるはずだと。」

ラキ:「なるほどね。

   ほかに何か覚えてない?」

パインは申し訳なさそうに言った。

パイン:「残念ながら。」

ラキ:「まあ、いいわ。

   その内に思い出すでしょう。」


パインとラキはテントに戻るとナガットを連れて公国へと

転移の魔法で戻った。



*1:後方にいた魔法部隊が前方に移動し

 魔法攻撃は、射程が短いために敵の近くまで

 移動しなければならない。

 しかし防御の弱い魔導士を前面に出す事は

 諸刃の剣でもあった。

 そのため、攻撃力の高い魔法攻撃は最善の注意を払った上で、

 実行されるのが一般的である。


*2:戦力差が大きくなれば損害は減るのが普通

 この世界では、知る者は存在しないが、

 ランチャスターの二次法則からすれば、

 生存人数は戦闘開始時の両軍の人数の自乗の差によって

 決まることになる。

 つまり、能力を得た者の1人当たりの戦力は、

 200人分どころではないという事になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ