ドワーフ王とドラゴンロード
ドワーフ族は、高度な鍛冶や工芸技能をもつとされており、
エルフ族などと同様に長寿である。
外観は背丈が低いものの力強く屈強で、
男女共に髭を生やしている事が特徴であり、
特に男性はその多くで長い髭を持つととされる。
他種族、植物や動物を含めてあまり親密とは言えないが、
国境を接しているメルトニア国は王国時代には交流があった。
しかし、現在は交流が無いに等しい。
少数ではあるが、現在もメルトニアに在住している
ドワーフも存在している。
次の日、アラインとジェイクは、
ミンサ達が迷宮に侵入しているのを確認した後に、
西側の通路を進んだ。
通路な長い直線と、大きく曲がり上へと昇る通路だった。
そして陽の光の射す、洞窟の出口に到着した。
そこは、滝の裏側だった。
洞窟内から見ると目の前を滝が流れている。
そして、滝の横河に一見すると分からないような細い足場が
続いていた。
身体を支える為なのか、所々に手を差し込める程度の穴が
規則的に開いている。
穴の中には、手で掴むための鉄の棒があった。
アラインとジェイクは鉄の棒を頼りに慎重に先へと進んだ。
川辺に到着した時、辺りの様子を探った。
追手は、いないようだった。
アラインとジェイクは、太陽の動きと、その位置から
方角を割り出し、西の森へと向かった。
しばらく進むと木々の量が減り、次第にまばらになって行った。
そして、完全に木々が消え失せた場所から先には
禿山が続いていた。
アライン:「この先は、ドワーフ族の領地だ。
注意しながら進むとしよう。」
アラインがそう言った時、森の中に潜んでいたと思われる、
ドワーフの一団に包囲された。
ドワーフは、身体に不釣り合いな巨大な斧を持ち、
それを構え、こちらを威嚇した。
ジェイクが剣を抜こうとしたが、アラインはそれを止めた。
アライン:「まて。
ここで戦えば、我々に先は無い。
最後の望みをかけて彼等に従おう。」
それは運命をドワーフに託したことにほかならなかった。
ジェイクはその言葉に同意し、剣の柄から手を離した。
ドワーフは無口だった。
たった一言、
「ついてこい。」
と言うと、2人は武器を取り上げられ、両腕を拘束されると
ドワーフ達に囲まれる形で歩みを進めた。
しばらくすると、それはあった。
山の側面にぽっかりと口を開いた洞窟の入口だった。
アラインとジェイクはドワーフ達と共に
その口の中へと入って行った。
アラインは、昔聞いた事があった。
ドワーフ族は、穴倉で生活していると。
そして、穴倉での生活を想像した。
穴の中へと入り、アラインは考えを改めなければならなかった。
まず驚いたことは、洞窟内の壁だった。
通路はアーチ型に掘り抜かれ、綺麗に装飾されている事だった。
石レンガを並べただけではなく、綺麗に磨いた上に彫刻を施し、
彫られた部分に様々な色で着色されている。
その模様は、見たことが無い物であったが、
目を引くものであった。
所々に壁に埋め込まれたかがり火が彫刻を照らし、かがり火の
揺らめきで一層神秘的に見えた。
幻想的な通路を抜けると、その先はドーム状に掘り抜かれた
空間だった。
その場所から各方面へと穴が続いている。
正面の穴からさらに奥へと進んだ。
この様な構造の通路が何度も続き、そして一層豪華になった
通路を抜けた先が目的の場所だった。
アラインもジェイクも驚きを隠せなかった。
その空間の装飾は見事すぎたのだ。
メルトニア宮殿の玉座の間よりも豪華だと思う者もいるだろう。
それほどまでに豪華絢爛な作りだった。
目線の先には、ドワーフ王と思われる者が座っていた。
ドワーフ王:「人間がこの国に何の用だ?
そなた達の森での会話は知っている。
知らずに入ったという言い訳は通用しない。
正直に話してもらおう。」
アライン:「私は、メルトニア元首のアラインです。
今、メルトニアは何者かの攻撃を受けています。
宮殿は占拠され、私もジェイクと共に脱出するのが
精一杯でした。
我々は、同盟国の助力を受けて再起を図る
つもりでいます。
そこで無理な頼みとは思いますが、
我々をバートランド王国まで
護衛していただけないでしょうか?」
ドワーフ王:「そうか、メルトニアの元首か。
それは災難なことであったな。
ところで私に利は無いのかな?」
ドワーフ王の要求は、予想していたことだった。
アライン:「メルトニアが無事に奪還できたならば、
魔導具作成のための魔導士の派遣および
魔晶石の提供を約束しましょう。」
ドワーフ王:「魔導士と魔晶石か。
それは助かる。
何せ我々ドワーフは、魔法には疎いのでな。
護衛の件は善処しよう。」
そして、2人は客室であろう場所に案内された。
ジェイク:「部屋は豪華ですが、扉は閉ざされ外に出る事は
許されない。
これでは、まるで軟禁ではないですか。」
アライン:「まあ、そんなに怒るな。
正体不明の男2人が突然救援を求めたのだ。
我々の話を全て信じる訳にもいかないだろうしな。
もし、同じことがあったならば、
私も同じことをしただろう。」
ジェイク:「確かに仰る通りです。
しかし、何かできる事は無いんでしょうか?」
アライン:「そうだな。
残念だが、私には思いつかない。
ドワーフ王が結論を出すまで、待つしかないな。」
アラインとジェイクは、何をするでもなく
黙って部屋で待っていた。
その時突然、部屋の扉が開き、
ぞろぞろとドワーフ達が入ってきた。
彼等は何も告げずに2人を拘束し、連行した。
ジェイク:「おぃおぃ、まさか我々を罪人扱いするのかよ。」
ドワーフ:「だまれ!!」
そう言って、ジェイクを小突く。
アラインは、黙ったままだった。
玉座の部屋に入ると、玉座にはドワーフ王はいなかった。
そして、玉座の横に一人のドワーフが立っていた。
彼は、自分の事を法務官だと名乗った。
法務官:「さて、2人の処遇だが、
今我が国に来られている者に引き渡す事となった。」
ジェイク:「引き渡すだと!!」
アライン:「それは、どういう事だ?」
法務官:「これは、我が国王の決めた事であり、
私の判断は含まれない。
残念ながらそう言う事だ。」
アライン:「我々は嵌められたわけか。」
ジェイク:「くそっ。」
そう言った時、奥の扉が音を立てて開いた。
=====
話は、その日の夜明けに遡る。
キーラとゾルは、空を高速移動していた。
ゾルは、これほど速度で飛んだことは無かったし、
キーラの魔法の補助が無ければ一生体験することは
無かっただろう。
ゾルは、改めてキーラの力に感心した。
そして同時にキーラの力に恐怖さえも感じるのだった。
もし、キーラが敵だったのならば、、、。
そんな考えが頭をよぎった。
ゾル:(あり得ない。)
ゾルは一瞬でもそんなそんなことを考えた自分に嫌気がさした。
キーラ:「ゾル。
ドラゴンロードと話しに行きましょう。」
ゾル:「ドラゴンロードですって!!!
ドラゴンの支配者じゃないですか。
何を言ってるのですか。
危険すぎます。」
キーラ:「本人見るのは難しいけれど、
話をするだけならそれほどでもないわよ。
まあ、ついていらっしゃい。」
キーラは、さらに飛行速度を上げると、1つの山に向かって
飛び始めた。
そして、その山頂に降り立つ。
キーラ:「確かここだったはず。」
その時、2人の頭の中に声が聞こえた。
???:(人間が我に何の用だ?)
キーラ:「あぁ、懐かしい。
トゥルトリム、久しぶりね。」
トゥルトリム:(その声、その気配は、まさかキーラなのか?)
キーラ:「そう、キーラよ。」
トゥルトリム:(まさか、昔の戦友が会いに来るとはな。
長生きはするものだ。
セイラとゾーラは、、、。
いや、答えるまでもない。
そうか、完成したのか。)
キーラ:「えぇ、完成したわ。」
トゥルトリム:(ところで、会いに来ただけでは無かろう。)
キーラ:「さすが、トゥルトリムね。
話が早くて助かるわ。」
キーラは、メルトニア魔導国に起こった出来事を説明した。
キーラ:「アラインというメルトニアの元首が
ドラゴンの聖域に迷い込むかもしれないのよ。
それで、彼を攻撃しないように、
他のドラゴンに指示してほしいのよ。」
トゥルトリム:(うーむ。
上級ドラゴンには、言っておこう。
しかし、下級のドラゴンは聖域を犯す者を
見境なく攻撃する。
彼等を制御することは難しい。
しかし、後退させることはできる。
そうだな、3日の間、彼等を後退させる。
ただ、聖域に深く入り込んだ場合、
命の保証はできない。
それでどうだ?)
キーラ:「ありがとう。
それで、構わないわ。
万が一聖域に深く入り込んだら、
運が無かったと諦めてもらうわ。」
ゾルは、この発言に一瞬戸惑った。
しかし、他の方法は存在しないだろう。
現状考えられる最善の方法だと結論付けた。
トゥルトリム:(そろそろ、行くのだろう?)
キーラ:「そうね。
長いは出来ないわ。」
トゥルトリム:(そうか。
また機会があれば会う事もあろう。)
キーラ:「そうだ。
お礼に、神秘の粉を置いていくわ。」
トゥルトリム:(神秘の粉か、ありがたい。
食事が楽しみだ。)
キーラ:「じゃあ、行くわね。
またいつかね。」
トゥルトリム:(また会える日を待っている。)
そして、キーラ達は飛び立った。
ゾル:「まさか、ドラゴンロードとお知り合いだったとは。
戦友ということは、何かの戦いですか?」
キーラ:「昔ね、ドラゴンの間で戦い*1があったのよ。
戦いの真っ最中に、私達はある物を求めて
ドラゴンの聖域にたどり着いた。
あぁ、私達というのは、私とセイラとゾーラね。
そこでトゥルトリムに出会った。
トゥルトリムと話すうちに彼女に味方することに
決めたのよ。
戦いは熾烈を極めた。
多くのドラゴンがその戦いで命を落としたわ。
そして最終的に勝利を手にした。
トゥルトリムは、ドラゴンロードとなり、
私達はある物を手に入れた。」
ゾル:「ある物ってなんですか?」
キーラ:「それは、秘密よ。
私達の書いた本を読みなさい。
最終章にちゃんと書いてあるわよ。」
ゾル:「自分には、全くわかりませんでした。
というよりも、読む事さえ叶いませんでした。」
キーラ:「それは、魔導というものの本質を
理解していないからなのよ。
意味をよく理解せずに進むことは無謀よ。」
ゾル:「そうですか、もう一度最初から読み直してみます。」
キーラ:「そうね。
それが正解であり、近道でしょうね。」
ゾル:「ところで、神秘の粉とは何なのですか?」
キーラ:「あぁ、あれね。
トゥルトリムの好物なんだけど、
実はね、色々な香料を混ぜて作った
オリジナルスパイスなのよね。
人間の食べ物など口に合わんとか言うから、
神秘の粉って名前にしたんだけどね。」
ゾル:「なるほど。
それで、次は何処へ向かうのですか?」
キーラ:「バルガ=ドヴェルの元へ向かうつもりよ。」
=====
アラインとジェークは、扉のから現れたのがドワーフ王で
あることが分かった。
ドワーフ王の後ろには、2人の従者がいた。
彼等はローブを目深に被っており、顔は分からなかった。
従者は、ゆっくりとした足取りで近づくと玉座の横に立った。
ドワーフ王は、玉座に座ると右手を上げた。
ドワーフ王:「何故その2人は縛られている?」
法務官:「引き渡しの為に拘束いたしました。」
ドワーフ王:「どうやら、私の指示が悪かったようだな。
2人の拘束を外してやりなさい。」
アラインとジェイクはお互いに目を合わせた。
アライン:(一体どういうことだ?)
ドワーフの兵士が2人に近寄り、拘束を外した。
ドワーフ王:「これでよいかな?」
ドワーフ王は、従者に語り掛けた。
それに対して従者は頷いた。
そして2人の従者がローブを上げ、顔をさらした。
アラインは、その顔に見覚えがあった。
それは宮殿の通路に掛けられた肖像画の人物だった。
アライン:「まさか、大魔導士キーラ?」
キーラ:「あら、私を知っているのね。
ならば、話は早いわ。」
キーラがドワーフ王を見て、頷くとドワーフ王は言った。
ドワーフ王:「そなた達2人だが、
ドリム公国に引き渡す事とする。」
ジェイク:「ドリム公国!!
助かったのか。」
アライン:「あぁ、そのようだな。」
キーラ:「バルガ=ドヴェル王。
ご協力に感謝します。」
キーラはそう言ってドワーフ王に頭を下げる。
ドワーフ王:「なに、旧友の頼みを無下に断る訳にも
いかないのでな。」
*1:ドラゴンの間での戦い
ゲーノモス山脈の奥深くで行われたこの戦いは、
人間の間では知られていない。
強大な力を持った黒龍は、
他種族を統べる王になろうとした。
しかし、それを良く思わない白龍が
それを阻止するように動いた。
そのため黒龍と白龍の間で争いが始まった。
そして、この戦いは全ドラゴンを巻き込んだ戦いへと
発展することになる。




