表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレイグ  作者: 夢之中
22/52

地下迷宮


話はアラインが迷宮に入った時まで遡る。


アラインとジェイクは、真直ぐな通路を速足で進んでいた。

途中いくつかの魔法の扉を抜け、

そして迷宮の入口にたどり着いた。


ジェイク:「アライン様。

     この先が迷宮のようです。」


ジェイクは、アラインの親衛隊長であり、

残った親衛隊の中でも最も腕の立つ人物だ。


アライン:「迷宮の中に入れば、振り切れる可能性は高い。

     ジェイク、私から離れないようにな。」

そう言うと、ライトの呪文を2人の持つ剣につかうと、

しっかりとした足取りで迷宮へと侵入した。

ライトの呪文を受けた剣は、松明以上の灯りで辺りを照らした。


ジェイクは不思議に思っていた。

それは少し進んで分かった事だった。

その通路は迷宮と呼ぶにはふさわしくない。

この迷宮は迷路のようなものではなく、格子状に通路が

繋がっているだけなのだ。


ジェイク:「これが、迷宮なのですか?

     迷宮というともっと、そう、迷路のような。」

アライン:「普通ならそう思うだろうな。

     これもまた立派な迷路なんだ。

     確かに通路は格子状に繋がっているのだが、

     通路には至る所に魔法罠が仕掛けられている。

     そして正しい順路を進まなければ魔法罠が

     発動するという仕掛けだ。

     これも、立派な迷路だと思わないか?」

ジェイク:「なるほど、確かにそうですね。

     ところで、どんな罠が仕掛けられているのですか?」

アライン:「ここの罠は多彩だ。

     慈悲深い物もあれば、凶悪極まりの無い物もある。

     いずれにせよどれか一つでも発動させれば、

     我々は窮地に立たされることは間違いないだろう。」

ジェイク:「罠を止めることは出来ないのですか?」

アライン:「この地下迷宮は、古代の遺物なんだ。

     調査は長年にも及んだ。

     罠の解除も何度となく試された。

     しかしそれを成し遂げることはできなかった。」

ジェイク:「遺跡なのですか。

     何のための迷宮なのです?」

アライン:「発見当時、罠を避けるように調査が進められた。

     そして分かったことは、地底湖を守るように

     迷宮が存在していることだった。」

ジェイク:「地底湖?

     そこには、一体何があるんですか?」

アライン:「これは、ごく少数の者しか知らないことだが、

     まあいいだろう。

     古代人は魔晶石を作っていたんだ。」

ジェイク:「魔晶石を作る?」

アライン:「ゲーノモス山脈から流れ来る地下水は

     多くの魔晶石の素を含んでいるらしい。

     そして、その水の多くは地底湖に流れ込んでいる。

     その水が、魔晶石を成長させているんだ。

     まさに魔晶石を生産しているのだよ。

     古代人はそれを自ら生み出したのか、

     あるいは偶然知ったのかは分からないが、

     それを守るために、

     この迷宮を造ったと考えられている。」

ジェイク:「そんな秘密が。」

アライン:「この事は、内密に頼むよ。」

ジェイク:「仰せのままに。」

迷路は想像以上に複雑だった。

別の場所に転移されたり、同じ通路を何度も通過しないと

進めない場所もあった。

しかし、アラインは迷うことなく通路を進んで行った。

しばらく進んだ後、通路の中ほどまでくると、

アラインは立ち止まった。

壁にはよく見ないと分からない程の印があった。

アラインは、壁に手を当て、呪文を唱えた。

すると壁が左右に割れ、奥へと続く通路が現れた。

アラインは躊躇する事も無く中へと入った。

ジェイクもそれに続く。

通路の先にあったのは、小さな部屋だった。


ジェイク:「ここは?」

アライン:「この迷宮には脱出時の為に、いくつかの隠し部屋が

     配置されている。

     ここは、その一つというわけだ。

     本当はもっと手前にもいくつかあったのだが、

     そこは無視して先へと進んだ。」

ジェイク:「そうでしたか。」

アライン:「この部屋は安全だ。

     今日はもう疲れただろう。

     横になって休むといい。」

ジェイク:「いえ。

     私は護衛ですので。」

アライン:「いや、だめだ。

     休みなさい。

     これは、命令だ。」

ジェイク:「仰せのままに。」


アラインは、部屋に複数設置されている1つのベッドに

横になると、すぐに深い眠りについた。

一体どれぐらい眠っていたのだろう。

地下では、陽の光が入らない。

今の時間さえも分からないのだ。

アラインは、起き上がるとベッドに座り込んだ。

ジェイクは既に起きており忙しく働いていた。


ジェイク:「お目覚めですか。

     この場所は素晴らしい。

     奥の部屋には水も食料も十分にあります。

     調理場も設置されていて1月でも滞在可能ですよ。」

アライン:「それは、喜ばしい事だ。

     どうやら追加の効果は正常に機能したようだな。」

ジェイク:「追加の効果ですか?」

アライン:「あぁ。

     緊急脱出魔法には、転移の魔法陣の破壊と

     隠し部屋への水や食料等の備品の転移魔法が

     発動されるようになっているんだ。」

ジェイク:「なるほど。

     それで新鮮な食料が転移されたのですね。」

ジェイクは、一度奥の部屋に行くと、食事を持って現れた。

食事は、サンドイッチだった。

パンにハムが挟まっただけの簡素なものであったが、

アラインは食事が取れる事に感謝した。


ジェイク:「それと、こんなものを見つけたのですが、

     もしかして、何かの魔法具でしょうか?」

ジェイクが差し出した物は、鏡だった。

裏には、魔法陣が描かれている。

アラインはそれを受け取ると、鑑定の呪文を唱えた。


アライン:「これは、遠見の鏡だな。」

ジェイク:「遠見の鏡とは何でしょうか?」

アライン:「うん。

     遠見の鏡は、対になった魔法陣の近くを

     鏡に映す魔法の鏡だ。」

ジェイク:「つまり、他の場所が見えるのですか?」

アライン:「そう言う事になるな。

     これは、何処にあった?」

ジェイクは、アラインをその場所に案内した。

それは、人の顔の高さの石壁に開けられた穴であった。

アラインは、指先に光を灯すと、その穴を念入りに調べ始めた。

良く調べると、穴の奥に小さな箱を発見した。

箱を開けた時、アラインは全てを理解した。

箱の中には、1つの指輪が入っていた。

アライン:「なるほど。

     そう言う事か。」

ジェイク:「何か分かったのですか?」

アライン:「この鏡は大魔導士キーラが設置したものだ。」

ジェイク:「キーラ様が?」

アライン:「この箱には宮殿を建築する際に、当時の国王が

     大魔導士キーラに授けたグロキシニア*1の紋章が

     描かれている。

     キーラは、この箱に記憶の魔法を施していたようだ。」

記憶の魔法は、様々な情報を魔法具に閉じ込める魔法である。

条件を満たせば、その記憶を知る事ができる。

ジェイク:「そうでしたか。」

アライン:「あぁ、早速鏡を使ってみよう。」

アラインが指輪をはめると、鏡に別の場所が映し出された。

鏡には、ローブを羽織った3人の人間が映っていた。

3人共顔を晒しており、その1人にアラインは見覚えがあった。


アライン:「これは、迷宮の入口か?

     それに、この男は見覚えがある。

     そうだ、こいつは、王国のミンサだ。」

ジェイク:「何故、王国の人間が?

     まさか、王国が裏切ったのか?」

アライン:「いや、それは無いだろう。

     もしそうならば、ミンサ以外の魔導士も

     動員されるだろう。

     それに今のバーランドの国王は、

     そこまでの野心は持っていないだろうしな。

     可能性があるとすれば、ゲイルだろう。

     やつが建国を宣言してから色々と起きすぎる。

     それよりも今の問題はミンサだ。」

ジェイク:「どういう事でしょうか?」

アライン:「優秀な魔導士がいる事が問題なのだ。

     ミンサは、マスターの称号を持つ優秀な魔導士だ。

     魔法の罠を看破して、ここまでたどり着くのは

     時間の問題かもしれない。」

ジェイク:「そんな短時間で?

     先ほど調査に何年もかかったと。」

アライン:「それは、罠の種類や解除を試したからだ。

     回避するだけなら、数日もあれば可能だろう。

     現に我々は、数時間でここまで来れたではないか。」

ジェイク:「ならば、すぐにでも逃げなければ。」

アライン:「いや、もう少し引き寄せてからの方が良いだろう。」

ジェイク:「どうしてですか?」

アライン:「この迷宮の仕掛けによるものだ。

     正しい通路を進むと通った通路に罠が仕掛けられる。

     つまり、この迷路は後戻りが出来ない。

     まるで一筆書きのように先に進むしかない。

     魔法で探索をするならば、

     いずれその事に気付くだろう。

     そして、転移の魔法で呪いが発動することを

     知るはずだ。」

ジェイク:「なるほど、先に進むしか道が無いという訳ですね。」

アライン:「そう言う事になるな。

     我々は、ミンサが迷宮に入った後に行動を開始する。」

ジェイク:「分かりました。」

アライン:「さて、この先だが、

     この先は途中で通路が枝分かれしている。

     大半は行き止まりで、正解は3本しかない。

     ゲーノモス山脈の北側、西側、南側だ。

     さて、どの道を進むかだ。」

ジェイク:「南へ抜けて南下し、村や町で救援を求めるのが

     よろしいのではないでしょうか?」

アライン:「確かにその通りだが、村や町は敵の手中にあると

     考えても良いだろう。

     次に北だが、北にはドラゴンの聖域が広がっている。」

ジェイク:「ドラゴンの聖域ですか。」

アライン:「上位ドラゴンならば、会話も成り立つだろう。

     しかし、外側にいるのは会話の通じない

     ワイバーン等の亜種やレッサードラゴン等だ。」

ジェイク:「それは危険極まりない。

     2人だけでは、到底不可能と言ってもいいでしょう。

     迂回するのはどうでしょうか?」

アライン:「それもダメだな。

     迂回しようにも聖域が入り組んでおり困難だろう。」

ジェイク:「では、西ですか?」

アライン:「もっとも安全と思えるのが西だな。」

ジェイク:「安全と思えるとは?」

アライン:「西には、ドワーフ族の国があるのだ。」

ジェイク:「ドワーフですか。

     メルトニアにもドワーフの鍛冶屋がありますが、

     国交が無いのですか?」

アライン:「その通り。

     王国時代は、確かに国交は有った。

     しかし、その後は不可侵条約のみで、

     国交は途絶えている。

     この件に関しては、私も気にはなっていたのだが、

     残念ながら手が回らなかった。」

ジェイク:「当然です。」

アライン:「いや、これは完全に私の不手際だ。

     我ながら残念で仕方がない。」

ジェイク:「アライン様。

     今は悩むよりも次の手を考えましょう。」

アライン:「あぁ、そうだな。

     話を続けよう。

     ドワーフ族が友好的に接してくれるか、

     あるいは敵対的なのかは現状では分からない。」

ジェイク:「他の道が無い以上、

     賭けるしかないのではないでしょうか?」

アライン:「そうだな。

     私もそう思う。

     どうやら意見が一致したようだな。」

ジェイクはこの時思った。

アラインは最初から西の道を選択していたのだろう。

しかし、それを押し付けず、

選択の余地を自分にも与えてくれたことに、

改めてアラインの気持ちをうれしく思った。


アライン:「よし。

     入口の敵の状況を見ながら、明日にでも西に向けて

     出発しよう。」

ジェイク:「分かりました。」



*1:グロキシニア

 イワタバコ科の常緑または宿根多年草。

 花言葉は、「華やかな日々」「艶麗」。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ