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グレイグ  作者: 夢之中
21/52

キーラの弟子


キーラ:「ちょっと、カモフラージュの力を使ってみて。」

パインは、キーラの言う通りカモフラージュの力を使った。

キーラは、パインにローブを脱ぐように言うと、

カモフラージュの力を確認した。


キーラ:「やっぱりね。

    インビジブルの魔法と違って衣服は、

    消えないのね。

    これを使って潜入するなら、

    パインは全裸ということになるわね。」

パイン:「えっ、えーーーっ。」

キーラ:「冗談よ。

    これは、なんとかしないとね。」

キーラは、少し考えると、何かを思いついたように言った。

キーラ:「ビックス坊やの店へ行ってみましょう。

    まだあるといいけど。」

パイン:「ビックス?」

キーラ:「私の弟子だった子よ。」

パイン:「弟子がいたんですか?」

キーラ:「えぇ。

    優秀だったんだけど、魔導具を作りたいって言って

    私の元を去ったの。

    結構変わり者でね。

    面白い魔導具をいっぱい作ってたわね。

    ずいぶん昔の話ね。

    そうそう、私の着ている魅了のドレスも

    ビックスの作よ。

    効果が上がるからと言って、穴だらけなんだけどね。」

パインはキーラのドレスを思い出し、少し顔を赤くした。

キーラ:「ふーん。

    坊やの言ってたことも、まんざら嘘でもないようね。」

パインは心の中で答えた。

パイン:(いや、それは整いすぎた容姿のせいです。)

キーラ:「ビックスは、すごいわよ。

    もっとも素晴らしいのは、

    基本魔法を生み出した事なんだけど。

    その魔法がちょっと変わっているのよね。」

パイン:「どんなふうに変わってるんですか?」

キーラ:「まあ、その話はあった時にね。」


パインとキーラは、公国の繁華街へと向かっていた。

パイン:「あの?」

キーラ:「なに?」

パイン:「メルトニアについて知っておきたいんですが。」

キーラ:「そうね。

    メルトニアは、昔は王制だったことは知ってるわね。」

パイン:「はい。」

キーラ:「メルトニアが王制だったころ、反乱が起こったのよ。

    彼らは、小規模だったけれど、

    魔法を駆使して宮殿を占拠したの。

    王国軍と反乱軍の戦いは宮殿を中心に行われたわ。

    反乱は直ぐに鎮圧されたけど、

    宮殿は大きな被害を受けたの。

    そこで、宮殿の再建が望まれたわ。

    再建するに当たり、魔法防御の強化が叫ばれた。

    そして多くの高名な魔導士が集められたの。

    私もその中に入っていたわ。

    そして最終的に私の案が採用されたのよ。

    宮殿の建築は進んで行ったわ。

    2本だった脱出経路は4本に増やされたんだけど、

    この内の1本、ゲーノモス山脈に続く経路が

    地下迷宮に繋がってしまったの。」

パイン:「地下迷宮ですか。

    一体だれが作ったのですか?」

キーラ:「それは、分からないわ。

    ただ、様々な魔法罠や残された文字などから、

    古代文明であることは、間違いないわね。

    地下迷宮の探索は直ぐに行われたわ。

    そして、大発見がもたらされた。」

パイン:「大発見?」

キーラ:「発見されたのは、巨大な地底湖だったんだけど、

    その湖底に大量の魔晶石が生えてたのよ。

    今でこそメルトニアは、魔晶石の産出で有名だけど、

    その時代はそうでもなかったのよ。」

パイン:「魔晶石が生えるってどういう意味ですか?」

キーラ:「魔晶石が水に溶けやすいというのは知ってるわね。」

パイン:「はい。」

キーラ:「実は魔晶石の元となる物は、何処にでも存在するの。

    水は、もちろん。

    空気、土、木、動物もよ。

    まあ、動物は排泄行為があるから、

    殆んど溜まらないけどね。

    水に溶けた魔晶石はある一定以上の濃さになると、

    結晶化するのよ。

    地底湖はまるで、魔晶石の栽培場みたいだったわ。

    メルトニアは、魔晶石のおかげで急速に発展し、

    多くの魔導士が移り住み、そして王宮に入り込んだ。

    国の実権が国王から魔導士達に移るのに、

    それほどの時間は要しなかったわ。

    さて、あと少しね。

    話はこの辺で終わり。」


ほとんどの店は、時間的に閉店していたが、

裏路地には酒場やいかがわしい店が昼間の様に営業していた。

そして裏路地のさらに奥に一軒の魔導具店を見つけた。

看板には、ビックス魔導具店と書かれていた。

中に入ると真っ先に目に入ったのは、

部屋の奥におかれた巨大な砂時計だった。

部屋の中には数多くのテーブルが置かれ、

その上には、魔法具が整然と並べられていた。


店の中に入ると、1人の老人が2人を出迎えた。

老人は2人を見ると、まくしたてるように話始めた。


老人:「惚れ薬は無いぞ。

   規制品じゃからの。

   お薦めは、この媚薬じゃ。

     :

     :」


キーラは、老人の言葉を無視してローブのフードを上げた。


老人は、キーラの顔を見るなり驚きの目で見つめた。

老人:「なっ、なんじゃと。

   しっ、師匠。」

キーラは、ニッコリとほほ笑むと言った。

キーラ:「ビックス坊や、久しぶりね。」

ビックス:「・・・。

     相変わらずお美しい。」

老人は、キーラの事をぼーっと見つめている。

キーラ:「それで、何か聞きたいことは無いの?」

ビックス:「おぉ、そうじゃった。

     師匠が亡くなったと聞き及んだのじゃが?」


キーラは、ビックスに葬儀の件について嘘を交えて話した。

嘘は、死亡理由だ。

公には病死と公表されている。

それに対してキーラは、新たな人生を歩む為とした。

パインは、ビックスが信じるとは思えなかった。


ビックス:「どんな仕事を探しておられるのじゃ?

     おぉ、そうじゃ。

     接客の仕事など、どうですじゃ。

     そうそう、お薦めの店がありますのじゃ。

     師匠ならナンバーワン間違いなしですじゃ。

     うちの店ならいい服もそろえて、、、。

     そうじゃ、最初の客はこのビックスめに。」

ビックスは、そこまで言って、キーラを見つめた。

キーラ:「相変わらずね。

    今日来たのは、幾つかあるんだけど、

    まずは、貴方の作った基本魔法がどの程度進歩したか

    見せてもらえる?」

ビックス:「おぉ、見ていただけますか。

     それは、ありがたい。

     ところで、そっちの小僧は誰ですじゃ?」

キーラ:「彼は、パイン。

    弟子候補よ。」

ビックスは驚き、そして喜んだ。

ビックス:「なっ、なんと。

     ついに見つけなすったか。

     やっと肩の荷が下りた感じですじゃ。」

キーラ:「無駄話は、これでお終い。

    早速、見せて頂戴。

    あなたの作った魔法を。」

ビックス:「おぉ、そうじゃった。

     しばらくお待ちを。」

ビックスは、そそくさと奥の部屋へと移動していった。

ビックスが戻るとビックスが作った魔法のお披露目が行われた。

     :

     :

そして、それが終わった後に、

キーラは本来の目的について話始めた。


キーラ:「さて、他にもほしい物があるんだけど。」

ビックス:「なんじゃ?」

キーラ:「インビジブルの魔法を付与した鎧よ。」

ビックス:「まさか、本当に接客業を?

     ならば、最初の客にはわしを。」

キーラ:「ばかね。

    着るのはパインよ。」

ビックスは、パインを繁々と眺めると呟いた。

ビックス:「そう言う関係じゃったか。」

ビックスの顔は少し寂しそうだった。


ビックス:「それで、発動はどうするんじゃ?

     他者のキーワードにするか、

     着用者の意志にするのか?」

パイン:「えっ、他者?」

キーラ:「他者も面白そうだけど、

    今回は、着用者の意志にして頂戴。」

パイン:「採寸は必要ですか?」

ビックス:「ここを何処だと思ってるんじゃ。

     ビックス魔道具店じゃぞ。

     伸縮の魔法ぐらい付与しておるわい。」

キーラ:「ごめんなさいね。

    パインは、魔導具が買えるほど裕福じゃないのよ。」

ビックス:「そうじゃったか。

     大抵の着用する魔導具には伸縮の魔法が

     付与されているんじゃよ。

     採寸してから作っていたら時間がいくらあっても

     足りないじゃろ。」

キーラ:「それで、支払いだけど、

    千年草の実*1でよいかしら?」

ビックス:「かまわんですじゃ。

     そうじゃな。

     5粒もいただければよいのじゃが。」

キーラ:「そう。

    なら、これで。」

そう言うと、懐から小さな袋を取り出し、ビックスに渡した。

ビックスが確認すると、

袋の中には数十粒の千年草の実が入っていた。

ビックス:「こんなに?」

キーラ:「新基本魔法の成功の御祝儀も込めてよ。

    それに、まだ沢山あるから大丈夫よ*2。」


2人は、商品を受け取り店を出ると、公宮へと向かった。

そして、公宮の入口で立ち尽くすゾルを発見した。

ゾルはこちらに気が付くと、慌てた様子で走り寄ってきた。


ゾル:「どこに行っていたんですか?」

キーラ:「何かあったの?」

ゾル:「どうやら王国軍の進軍が決定したようです。」

キーラ:「えっ、どういうこと?」

ゾル:「詳しい事はわかりません。

   すぐに、ドリム大公の元へ。」

キーラ:「わかったわ。

    パイン、行くわよ。」


3人はドリムの元へ向かうと、ドリムの私室へと案内された。

部屋の中には、アリスとアンナが居た。

アンナは、エレナの事を伝えに来たのだろう。

ドリムはベッドの上で3人を迎えた。

ドリムは、激務と心労により心身ともに衰弱していた。

アリスによるヒーリングの魔法も心労を改善する効果は無く

顔色は以前にもましてよくなかった。

キーラは、起きようとするドリムを止め、

横になった姿勢のまま話を聞いた。


ドリム:「無礼を許してほしい。」

キーラ:「全く問題ありませんよ。

    それで、何が起きたんでしょうか?」

ドリム:「王国軍が進軍を開始することに決まった。

    攻略目標は、人魚の涙の砦だ。」

パイン:「一体どうして?」

ドリムは、国王との会話を思い出しながら話始めた。

それは、パインとキーラが宮殿を後にした直後の事だった。


=====


ドリムが部屋に戻ろうとした時、シルカー魔導士長が

慌てた様子で現れた。


シルカー:「大公様、王国からの緊急招集です。」

ドリム:「緊急招集だと。

    そうか、どうやら抑えきれないようだな。

    分かった。

    直ぐ向かおう。」

ドリムとシルカーは、転移の魔法陣で王国へと向かった。

軍議室には、多くの貴族とその配下将軍が集まっていた。

貴族達は席に座り、配下武将はその後ろに立っていた。

ドリムが部屋にはいると、国王の隣の席へと招かれた。


貴族達で席がほぼ埋め尽くされた頃、王国軍の総司令官である

ビッツが国王の指示を受けて話始めた。

それは、メルトニア魔導国が何者かの襲撃を受け、

宮殿を占拠されたことから始まった。

そして同盟国としての対応の話へと移った。


ビッツ:「王国は、同盟国としての行動を求められています。」

貴族:「そうか。

   同盟国としては、進軍させるしかないだろう。

   同盟としての役割を果たさなければ、

   同盟という考え自体が破たんしてしまう。」

貴族:「しかしな。

   転受の魔法陣は、すでに機能を停止していると聞いた。

   メルトニアへ向かうには、海路しかないんだぞ。

   進軍するにしても、人魚の涙の砦を攻略していかなければ

   ならない。」

貴族:「そうだ、思い出してほしい。

   先の進軍では、1000人の部隊が一方的に攻撃を受けて

   撤退を余儀なくされた。」

貴族:「あれは、不思議な遠隔攻撃を受けたのが敗因だ。

   対抗策も既に準備している。

   次の戦いでは問題にはならん。」

貴族:「しかしな、あの時の戦士はどうするのだ。」

貴族:「最前線に現れ、百人近い兵士を倒したと言われる、

   あの戦士か。

   確かに脅威ではあるが、人であるからには、

   疲れもするし、寝る事もあるだろう。

   大軍で押し寄せ、波状攻撃をかければ、

   いずれ静まるだろう。」

貴族:「大軍を進軍させるには、大量の戦費がかかる。

   もし、それがうまくいかなかった場合はどうなる?

   国力は著しく低下し、回復には何年もかかるだろう。」

貴族達の話は、尽きる事を知らなかった。

ドリムは、話の内容にあきれ果てていた。

ドリム:(結論は出ている。

    同盟国として援軍を出さない訳にはいかない。

    約束を守れない国など、誰が信用するだろうか。

    もし援軍を出さなければ、国家間の約束も守れない

    国として二度と他国との同盟を結ぶことは

    叶わないだろう。

    そればかりか危険と判断されて排除対象になる

    可能性もある。

    援軍は出さなければならないのだ。)

      :

ある程度話が進んだところで国王が割って入った。


国王:「時は満ちた。

   採決することとする。」


王国の採決は、先端を青(賛成)と赤(反対)に塗られた棒を

小さな穴の開いた採決箱と呼ばれる箱の中に投入する事により

行われる。

採決箱の周りはたれ布で覆われており、どちらを投入したかが

分からないようになっている。

残された棒は、もう一つの破棄箱に入れる事により、

対処している。


そして採決結果の発表がビッツ将軍によって行われた。


ビッツ:「青14、赤2。

    採決の結果、進軍することを決定します。」


=====


ドリム:「知っての通り、公国と王国はメルトニア魔導国と

    同盟を結んでいる。

    そして、メルトニア宮殿が占拠されたことは、

    既に各国民が知る所となってしまった。

    もう、引くに引けないところまで来てしまったのだ。

    我が国も軍を派遣することに決まった。」

キーラ:「それで、進軍開始はいつです?」

ドリム:「半月後だ。

    集合場所は、要塞都市メルキス。

    我が国から5千。

    王国から1万。

    メルキスから5千。

    総勢2万の軍で砦を攻略する。

    既に、マッカス将軍とシルカー魔導士長には、

    指示を出している。

    君達にも遊撃隊として参加してもらいたい。」

キーラ:「分かりました。

    しかし、その前にやらなければ

    ならないことがあります。」

ドリム:「なんだ?」

キーラ:「アラインとエレナの救出です。」

ドリム:「そうか、やってくれるか。」

キーラ:「作戦はこうです。」

キーラはドリムの耳元に近づくと小声で話始めた。

ドリム:「分かった。

    個別に指示を与えよう。」

キーラ:「ゾル。

    このなかで、フライの魔法が使えるのは、

    私と貴方だけ。

    貴方は、私と共にアラインの救出に向かいます。」

ゾル:「はい。」

キーラ:「パイン。

    貴方は、アンナに剣術を習いなさい。

    但し、力を使わないように。」

パイン:「はい。」

キーラ:「アンナ。

    それでいいかしら?」

アンナ:「はい。

    エレナ様の為になるなら。」

キーラは、アンナに近づくと小声で指示を与えた。

アンナ:「わかりました。」

キーラ:「アリス。

    引き続きつなぎ役をお願い。

    あと、神聖魔法の勉強も忘れないようにね。」

アリス:「はい。」

一通り指示を出し終わった後、ドリムの疲労のこともあり、

解散となった。



*1:千年草の実

 マンドラゴラの亜種であり、

 魔法薬の材料として利用されるため高値で取引されている。

 千年に一度、数十個程度の小さな実をつけると

 言われているが、実際には定かではない。

 ただ単に、人の一生のうちに実をつけることは無かったため、

 そう呼ばれているにすぎない。

 その期間が故に、実の為に栽培を考える者はいなかったし、

 それを成し遂げられた者も存在しない。

 自然界には千年草の群生地が存在しており、

 実の収穫は運に大きく左右される事となる。


*2:まだ沢山あるから大丈夫よ

 ビックスは、キーラが千年草の栽培実験を行っていたのを

 知っていた。

 それ故にビックスはこの時に栽培実験が成功したことを

 暗に理解した。


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