表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレイグ  作者: 夢之中
20/52

経緯


パインが助けた女性はアンナと名乗った。

アンナは戦士であり、エレナの付き人兼護衛であることを

明かした。

アンナとしては、エレナを救出することが最優先だった。

自分を助けてくれたのがドリム大公の指示で来たことを知ると、

協力することを承諾してくれた。


キーラ:「すまないけど聞きたいことがあるの。

    宮殿の防御魔法は発動したの?」

アンナ:「広範囲転移魔法が発動していますので、

    防御魔法は解除されています。」

キーラ:「なるほど。

    それで、エレナを拉致したのね。」

アンナ:「エレナ様はどうなるのでしょう?」

キーラ:「大丈夫よ。

    占拠している者達が防御魔法を発動させたいのなら、

    彼女は無事よ。」

アンナ:「本当ですか?」

キーラ:「宮殿の防御魔法は、私が作ったのよ。」

アンナ:「えっ。

    あの魔法は、遥か昔に大魔導士キーラ様が

    作られたと聞いています。

    まさか?」

キーラ:「そう、私がキーラよ。」


アンナは、目の前の女性が大魔導士キーラだと知ると、

キーラに助けを求めた。

キーラは何が起こったのかを話すようにアンナに求めた。

そして、アンナは話始めた。


=====


突然の夜襲で宮殿内は混乱していた。

アンナは、アライン、エレナ、護衛達と共に

謁見の間に移動した。


謁見の間には、宮殿から脱出するための通路が存在している。

この事を知っているのは極わずかであった。

謁見の間の扉が勢いよく開いた。

勢いよく飛び込んできたのは守備兵であった。


守備兵:「守備隊は、ほぼ壊滅状態です。

    もう、防ぎきれません。」

アライン:「そうか、仕方が無いな。

     残念だが宮殿は放棄する。

     皆、私から離れるように。」

エレナ:「いえ、私もお供します。」

アラインはエレナを見て、少し考えると言った。

アライン:「もし、私について来る覚悟のある者は、

     私の側によりなさい。」

その場にいた護衛兵6人全てがアラインに近寄った。

そして、緊急脱出魔法*1が発動された。

アラインの側にいた者を除いた宮殿内の人々は侵入者を除いて

ことごとく公国へと飛ばされた。


魔法が発動すると、アライン達は直ぐに脱出路へと向かった。

螺旋階段を降りると、四角い部屋があり、

部屋の四方には先へと繋がる通路があった。

脱出経路は4つ存在していた。

1つ目は、魔導学院へと続く道。

2つ目は、冒険者協会へと続く道。

3つ目は、ゲーノモス山脈方面へと続く道。

4つ目は、精霊の木方面へと続く道。


アラインは、ここで悩んだ。

守備兵をいとも容易く倒す連中だ。

ここに居る6人では直ぐに倒されるだろう。

全員が同じ方向へと逃げるのはリスクが高すぎる。

そして、4つの方向へ別々に逃げることを指示した。

魔導学院と冒険者協会へは、宮殿外へ襲撃を知らせる

目的もあった。

最初エレナは、それを拒否した。

しかし、それが最も安全な方法だと説得され、

しぶしぶそれに同意した。

アラインは、ゲーノモス山脈方面へと向かった。

エリスとアンナは、精霊の木方面へと向かった。


エリスとアンナは、想像以上に長い地下道を進んだ。

途中にある扉を何か所も通ってきた。

幸いなことに追手の気配は感じられなかった。

そして、出口と思われる階段を上った先は、古墳だった。

既に陽は明けており、陽の光が眩しかった。


エリス:「こんなところに繋がっていたのね。」

アンナ:「私も存じ上げませんでした。」

エリス:「そう、アンナも知らなかったのね。

    皆も無事逃げ出せたかしら?」

アンナ:「アライン様の向かったゲーノモス山脈への通路は、

    地下迷宮に繋がっています。

    迷宮内に入りさえすれば、追手に追いつかれることは

    限りなく低いと思われます。

    魔導学院と冒険者協会への通路は、距離も短く、

    既に到着していると思われます。

    エレナ様の通ってきた通路は、

    途中の扉で足止めされるはずです。

    あとは、魔導祭の人混みに紛れ込んでしまえば、

    追手を振り切る事ができるでしょう。」

エリス:「わかったわ。

    直ぐに精霊の木に向かいましょう。」

その時、アンナは見た。

エリスが驚いた顔をしたのだ。

アンナは、辺りを見回し、その原因となるものを探した。

しかし、原因となるものを見つける事はできなかった。

アンナが再びエリスを見ると驚きの顔は消え、

いつものエリスの顔がそこにあった。


エリスは何か思い出したように言った。

エリス:「あっ、そうだ。」

エリスは、自分の指から1つの指輪を外し、

そしてアンナに手渡した。

エリス:「これを身に着けておいて。

    必ずあなたの助けになるわ。

    それと、これからはもう『様』はつけないようにね。」

アンナ:「はい、エリス様。」

エリス:「・・・」


2人は精霊の木へと向かった。

そして、やっとのことで精霊の木の側までやってきた。

精霊の木の周りには多くの魔導士が集まっていた。

アンナの思惑通りだった。

人混みに紛れれば我々を見失うはず。


エリス:「アンナ。

    あれを見て。

    精霊の木よ。」


そう言うと、エリスは人混みをかき分け精霊の木へと向かった。

それを追う様にアンナも続いた。

それは、悲鳴と共に始まった。


「ギャーッ!!!」


アンナの後方から悲鳴のような叫び声が聞こえた。

アンナが悲鳴のする方向を見ると、

まるで蜘蛛の子を散らすように人々が逃げていく。

しかしその行為は秒を稼ぐ程度の時間稼ぎにしかならなかった。

まるで波紋が広がるように、次々に人々が倒れていく。


何者かに襲われていることは間違いなかった。

エリスが危ない。

そう考え、エリスの方を振り向いた時、その光景に驚いた。

エリスが包帯を巻いた男に両腕を掴まれていたのだ。

アンナ:「エリス!!」

アンナが叫んだ時、背中に何かがぶつかった。

アンナ:「!!!」

異様な感覚を背中と腹部に感じた。

強い圧迫感はあったが、不思議と痛みは感じなかった。

視線を下におろすと、自分の腹部から剣先が突き出していた。

アンナは後ろから忍び寄った敵の気配が感じられなかったことに

驚きを隠せなかった。

次の瞬間、内蔵を引きずり出される感覚と共に、

剣先が視線から消えた。

身体中の筋肉から力が抜け、

自分の身体が前のめりに倒れ込むのを感じた。

次第に意識が薄れて行く。

しかし辛うじてまだ意識はあった。

首を曲げてエリスの方を見ると、誰かの声が聞こえる。


 「その女は、砦に連れて行け。

 私は、宮殿に戻る。」


エリスを担いだ者が離れて行く。

薄れゆく意識の中で右手を伸ばしそれを掴もうとした。

その時、エリスにもらった指輪が淡く光っているのが分かった。

そして、アンナは意識を失った。


=====


キーラ:「そう、彼女(エリス)は捕まったのね。」

アンナ:「はい。

    直ぐに助けに行かなければ。」

キーラ:「まずは、その指輪を見せて頂戴。」


キーラはアンナから指輪を受け取ると繁々と眺めた。

そして、呪文を2回唱えた。

ゾルは、その呪文を知っていた。

1つ目は、アプレイザル。

魔法具の鑑定を行う魔法だ。

魔法具に付与されている魔法を知る事ができる。

ただし、付与された魔法を知っている必要がある。

2つ目は、コネクション。

魔法具に繋がりを持たせたり、

繋がった魔法具の位置を知る魔法だ。


キーラ:「なるほどね。

    どうやら彼女(エリス)は、貴方(アンナ)に全てを

    託したようね。

    もしかして、彼女(エリス)は予知者*2なのかしら?」

アンナ:「エリス様は予知者だとは名乗ってはいませんが、

    おそらく予知者だと思います。

    私も何度かそれで助けられています。」

キーラ:「そう。

    やっぱりね。」

アンナ:「ところで、エリス様が私に託したとは

    どういう意味でしょうか?」

キーラ:「あぁ。

    この指輪に2つの力が込められていたからよ。

    1つ目は、冬眠(ハイバネーション)の魔法ね。

    別名は延命の魔法よ。

    2つ目は、連繋(コネクション)の魔法ね。

    これは、複数の指輪を繋げる魔法。

    意志疎通は出来ないけれど、

    他の指輪の場所が分かる指輪よ。

    まあ、方向だけだけどね。

    もう一つは、アラインが持っているのでしょうね。」


この時、アンナは指輪を渡されたときの事を思い出した。

エリスは、何かに驚いていた。

エリスは何かを予知したのだろう。

そして指輪を託した。

キーラ:「彼女(エリス)は、貴方(アンナ)にアラインを

    助けてほしいと言っているのよ。」

アンナは、今の言葉が真実ではないかと思った。


パイン:「ところで、エリスは何処に連れて行かれたのでしょう。

    砦というのは、ゲイルの砦なのか?」

ゾル:「私もそう思う。

   話の流れから推測すると、海賊ゲイルの砦でしょう。」

キーラ:「多分そうね。

    しかし、アリスも分かっていると思うけど、

    敵は我々より遥かに強いわ。」

アンナは、その言葉に同意するしかなかった。

キーラ:「一旦公国に戻りましょう。」

アンナ:「しかし。」

キーラ:「犯人は、殺さずに連れて行ったのでしょう。」

アンナ:「はい。」

キーラ:「なら、大丈夫。

    価値があると判断したのよ。

    たぶん、アラインとの交渉材料に

    使おうと思っているのでしょうね。」

アンナ:「まさか、宮殿の魔法防御ですか?」

キーラ:「おそらくね。

    あの魔法を発動できるのは元首である

    アラインのみだしね。

    危害は加えられないわ。

    それに、アラインはまだ捕まっていないみたいだしね。」

パイン:「何故わかるんですか?」

キーラ:「指輪に付与されたコネクションの魔法を使ったのよ。

    指輪は生きている者にしか効果がないのよ。

    だからアラインは生きている。

    そして、指輪の指し示す場所は地下迷宮の辺り。」

パイン:「ならばすぐ救出に。」

キーラ:「いえ、迂闊に動けないわ。」

パイン:「どうしてですか?」

キーラ:「どうやらアラインは、地下迷宮にいるのよ。」

アンナ:「聞いた事があります。

    山脈側からは、入れないって。」

キーラ:「そう。

    あの地下迷宮は、宮殿の建造時に偶然に発見されたの。

    そして脱出用経路として使用することを決め、

    山脈側から侵入できないように対策を施したのよ。

    出口で待っていたら、奴らも気が付くはずよ。

    かえってアラインを危険に晒してしまう。

    迷宮内には多くの隠し部屋が設置されているのよ。

    そのどれかに隠れていれば、しばらくは安心よ。

    でも、猶予はないわよ。」

パイン:「どういうことです。」

キーラ:「万が一にも、アラインが捕まって、

    防御魔法を発動するのを承諾すれば、

    2人とも宮殿に連れて行かれてしまう。

    そうなれば、救出はさらに困難になるわ。」

パイン:「何故そんなに詳しいのです?」

キーラ:「私も宮殿の建造にも関わったからよ。」

パイン:「えっ、そうなんですか。

    なら、防御魔法の解除方法も知ってるんですか?」

キーラ:「えぇ、知ってるわよ。

    それには、玉座までたどり着かなければならないの。」

パイン:「やっぱりそうですか。」

キーラ:「まずは、公国に戻って作戦を立てましょう。」


アンナは納得がいかないものの、他に方法が思いつかなかった。

そして、渋々だがキーラの提案を承諾した。


4人は公国へと移動し、ドリムの元へと向かった。

そして、ドリムを交えて、計画を練り始めるのだった。


ドリム:「大軍で攻めれば、エリス様の身に危険にさらす。

    やはり、ここは潜入奪還作戦でいくしかないのでは?」

キーラ:「パインの力から想像すると、

    夜目の利く者がいてもおかしくないわ。

    発見された場合どう対処しますか?」

パイン:「発見されない方法を考えるでは?」

キーラ:「ダメね。

    失敗した場合の対処を決めておかなければ

    作戦とは呼べないわよ。

    そして失敗した場合、最小限のリスクになるように

    しなければならない。」

全員:「んーーーっ。」

キーラ:「この場で考えていても時間の無駄になるわ。

    各自作戦を考えるという事で、

    一旦休憩にしましょう。」

ドリム:「そうだな。

    明日の早朝から続きを行おう。」


全員が部屋へと戻る途中、キーラがパインを呼び止めた。

キーラ:「パイン、ちょっと付き合ってちょうだい。」

パイン:「えっ、あっ、はい。」



*1:緊急脱出魔法

 連動魔法陣内で、術者を除いた者を転移する魔法である。

 恩恵を受ける為には専用の魔導具を持たなければならない。

 術者が除かれるのはその力を増幅するためである。

 またこの魔法には様々な追加効果を付与することが多い。

 元々は、大型の船に付与された魔法であり、

 船長は船員を守るために、この魔法を行使した。



*2:予知者

 予言者と呼ばれる者は数多く存在するが、

 予言と呼ばれるものの多くが予言ではなく予測である。

 しかし、中には予測ではなく予知としか思えない事もある。

 それは第六感とも呼ばれる。

 第六感を感じる者は多く存在するが、

 実際に体現できる事は少ない。

 その第六感の体現率が極めて高い者の事を予知者と呼ぶ。

 そして、その予知を多くの者に知らしめる者を予言者とよぶ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ