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グレイグ  作者: 夢之中
19/52

精霊の木


精霊の木が、そう呼ばれるようになったのは、

その容姿が原因である。

樹木のコブが人型をしていたのだ。

多くの人々が木から精霊が生まれてくるような印象を受けた。

そしていつしか人々は、その木の事を『精霊の木』と

呼ぶようになった。

そして、魔導祭と結び付け、祝うようになったのだった。



パイン、キーラ、ゾルの3人は、身支度を済ませると

ドリムの元へと向かった。


ドリムの部屋へ行くと、アリスがヒーリングの呪文を

唱えていた。

ドリムは一睡もしていないのだろう。

かなりの疲労が溜まっているようだった。

アリスの治療が終わると、少しだが顔色が良くなっていた。


ドリム:「ありがとう。」

ドリムはアリスに礼を言うと、こちらに近づいてきた。


ドリム:「朝早くから呼び出してすまない。

    色々と事が起きて混乱しているのだ。

    2つほど連絡がある。

    良い話と悪い話だ。

    どちらから聞きたいかね?」

キーラ:「そうですね。

    良い話から聞かせてほしいわね。」

ドリム:「そうか。

    メルキスを奪還した。」

キーラ:「流石はラング将軍ね。

    それで、どうやって?」

ドリム:「実は、彼等は自ら撤退したようなんだ。」

キーラ:「撤退ですか。」

ドリム:「第八区画の詰め所に白い玉と

    メッセージがあったそうだ。」

キーラ:「どんな?」

ドリム:「これだ。」

それは手書きのメモだった。


=====

我々は拠点を手に入れた。

その祝いの品として玉を贈ろう。

=====


キーラ:「なるほどね。

    それで、悪い話というのは?」

ドリム:「留置していた3人の襲撃者が脱走した。」

キーラ:「魔法の糸を解除したわけではないですよね?」

ドリム:「あぁ。

    どうやら内通者がいたようだ。

    君達も会ったことがある。

    ミンサだ。」

キーラ:「なるほどね。

    私達はしてやられたようね。

    彼等の本来の目的は、メルトニア宮殿の奪取であって

    メルキスは単なる陽動だったってことね。

    ミンサ*1がいつから内通者になったのかは、

    判らないけれど、私が襲われたのも

    ミンサの手引きでしょうね。

    ところで、ミンサはどういう仕事をしていたの?」

ドリム:「彼は、冒険者協会の王都の理事をやっていた。」

キーラ:「だとすると、

    色んな情報を仕入れていたんでしょうね。」

ドリム:「冒険者協会の情報は筒抜けだったと思ったほうが

    いいかもしれない。」

キーラ:「なるほどね。

    さて、問題はこれからどうするかね。」

ドリム:「それのことなんだが、

    精霊の木に向かった者と連絡が取れないのだ。

    最悪の事態になっているかもしれない。」

キーラ:「そうですか。

    メルキスの白い玉は、今どこに?」

ドリム:「王国に回収された。」

キーラ:「では、王国経由で精霊の木へ向かいましょう。」

ドリム:「そうか、行ってくれるか。

    アラインと妹のこと、よろしく頼む。」


パイン、キーラ、ゾルの3人は、王国で白い玉を触った後に

精霊の木へと向かった。

新しい力は、エクスプロア(探索)であった。

この力はより広い範囲で玉の存在を

知る事ができるというものである。

キーラの話では、わざわざ敵に提供する力では無い。

余程自身があるのか、あるいは何かしらの罠かもしれない

ということであった。



3人が転移した場所は、精霊の木から1Km程離れた場所にある

ログハウス*2だった。

部屋の中には、転送の魔法陣とともに、2段ベッドが2つ、

4人掛けのテーブルと椅子、そして簡易的な生活設備があった。


キーラ:「さて、どうしようかしら。」

パイン:「なにか問題でも?」

キーラ:「今は、魔導祭の最中。

    精霊の木から半径1Kmは、魔法や魔導具が

    使えないのよ。」

パイン:「それじゃあ、もし襲われたらまずいですね。」

キーラ:「私とゾルは、これ以上精霊の木に近づくと、

    ただの足手まといにしかならないわ。

    そこで、パイン。

    貴方一人で見てきてほしいのよ。

    敵に発見されるまでは、出来る限り能力は使わないで。

    もし発見されたら、戦闘は出来る限り避けて、

    ここまで逃げてきなさい。

    あとは、我々が何とかするわ。」

パイン:「わかりました。

    やってみます。」


パインは、1人でログハウスを出た。

見渡す限りの草原だった。

草は腰辺りまで伸びており、身を隠すには適していた。

南を見ると草原の中に1本だけ、

大きな木が生えているのが分かった。


パイン:(あれが精霊の木か。

    しゃがんで行けば見つからずに行けそうだ。)


パインは中腰になって進んだ。

するとすぐに声が聞こえた。


グレイグ:(見つけた。)

その途端、目の前に十字の赤い線が現れた。

パイン:(まさか、この十字の方向に玉があるのか?)

グレイグ:(そうだ。

     その方向に進めばよい。

     これは、エクスプロアの力だ。)


しばらく進んで行ったとき、

草の中に転がる何かを発見して驚いた。

茶色のローブを羽織った人だった。

魔導士だろう。

全く動かないその人に近づく。

背中には肩から斜めに切られたあとがあった。

いわゆる袈裟斬りである。

既に血は乾ききっていた。

パインは恐る恐る、露出している手を触った。

冷たかった。

パインはしばらく黙祷すると、辺りを調べて回った。

そして同様の遺体を何体か発見した。

パインは懐から魔法の地図*3とマーカーピン*4を取り出すと、

遺体の側にそれを突き刺した。

しばらく黙祷すると先へと進んだ。

パインは遺体を発見するたびにマーカーピンを刺していった。

精霊の木の近くまで進むと、茂みの終わりに気が付いた。

パインは、草の間から精霊の木を覗き込んだ。

そして、その光景に驚いた。

精霊の木の周りには数多くの魔導士と思われる人々が

倒れていたのだ。

パインは冒険者であるが故、何度も死に遭遇してきた。

しかし、これほどの数は初めてであった。

パインは、しばし呆然とそれを眺めていた。

そして心が落ち着くと辺りを見回し動く者の気配を探った。

それが居ない事を確認すると立ち上がり、

生存者がいないか見て回った。

しかし、残念ながら生きている者はいなかった。

パイン:(惨い。

    止めなければ。

    同じ力を持つ自分しかこの状況を止める事はできない。

    早く力を手に入れるんだ。

    自分が止めなければ。)

パインはしばらく立ち止まっていた。

しかし、何かを決心すると祭壇に目を移した。

精霊の木の前には祭壇が設置され、

供物台と思しき場所に白い玉が置かれていた。

パインは祭壇近づくと、白い玉にそっと手を置いた。


グレイグ:(力を手に入れた。

     カモフラージュの力だ。

     短時間だが誰からも

     視認されることは無くなるだろう。)


パイン:(くそっ。

    何故、力を与える能力が手に入らないんだ。)


そう考えた時、パインは冷たい何かに足首を掴まれた。

同時に『同じ』という感覚を得た。

咄嗟に足元を見る。

そこには、血だらけのローブを着た者が倒れていた。

その者の手は、明らかにパインの足首を掴んでいた。


パイン:「おい、大丈夫か?」

「・・・」

その者は何も答えなかった。


パイン:「まずいな。」

そう言いながらパインは剣を取り出し、ローブを切り裂いた。

ローブの下は軽量化皮鎧*5だった。

鎧の隙間から見える肌の色は青白かった。

剣で突き刺されたのであろう患部に手を当て、

ドクターの力を発動する。


パイン:(冷たい。)

明らかに体温が下がっている。

パインは医学的知識を持ち合わせていなかった。

しかし、数多くの人の生き死にを見て来た。

体温が下がるのは危険な証拠でもあった。


パインは両手を患部に当てると祈った。

パイン:(死ぬな。

    生きてくれ。)

パインにはそう祈るしかなかった。


どれだけの時間がたっただろうか。

肌の色に赤みがさし、体温も上昇してきている。


パイン:(助かるかもしれない。)

パインは少し安心した。

そう思った時、ある事に気づき驚いた。

皮鎧の胸部の膨らみだった。


パイン:(女性!!)


そう、治療を受けている者は女性だった。

パインは一瞬手を引っ込めそうになったが、

思いとどまった。

そして、何も考えるなと念じながら治療を続けた。


陽が傾き始めた頃、彼女の身体は安定していた。

傷も癒え、呼吸も通常に戻っていた。


パイン:(もう、大丈夫だ。

    しばらくすれば意識も回復するだろう。)

何故かそう思えた。


パインは治療をやめて立ち上がると、彼女を抱きかかえ、

キーラとゾルの元へと戻った。

パインがログハウスの扉を開けると、

キーラとゾルが立っていた。


キーラはパインの顔をみるなり、

状況が最悪であることを察した。


キーラ:「おかえり。

    どうやら、良くない状況のようね。」

パイン:「彼女以外、

    生き残りを見つける事は出来ませんでした。」

キーラ:「そう。

    まずは、彼女をベッドに。

    私は、ドリム大公に応援を要請するわ。

    遺体を放置しておくわけにもいかないしね。」

パイン:「お願いします。」

パインは彼女をベッドに横たえると、

キーラの元へと移動し、椅子に座った。

キーラとゾルもテーブルに着いた。


キーラ:「ところで彼女は大丈夫なの?」

パイン:「はい。

    一通りの治療は行いました。

    あとは意識が戻るのを待つだけです。」

キーラ:「わかったわ。

    ところで、アラインとエレナは見つけた?」

パイン:「いえ。

    判りませんでした。」

その時、突然大声がした。

 「エレナ様!!」

声の主は、パインが助けた女性だった。



*1:ミンサ

 ミンサ⇒サンミ⇒酸味⇒すっぱい⇒スパイ

 気が付いた人は、すごいです。

 

*2:ログハウス

 ログ(丸太)または角材を構造材として水平方向に

 井桁のように重ねて積み上げ、交差部にはノッチを使って

 組み上げた家屋・建築物。(wikipedia)


*3:魔法の地図

 魔法具の一つである。

 発動位置を中心とした上空から見た地図を生成する。

 地図上には現在の地図の位置が表示される。

 

*4:マーカーピン

 魔法の地図とセットで販売されている。

 マーカーピンを地面に差しすと、

 地図上に設置位置が記録される。

 

*5:軽量化皮鎧

 厚い皮をワックスで煮込んで硬化処理したもので、

 より軽量化するために、致命傷となる部位のみを残し、

 その他の部分をくり抜くことにより実現している。



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