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グレイグ  作者: 夢之中
18/52

メルトニア魔導国


メルトニア魔導国

メルトニア魔導国は、バーランド王国の東にそびえ立つ

ゲーノモス山脈より先に存在する国家であり、

魔晶石の産出地であるとともに魔導具の生産地でもある。

魔晶石は、魔力を蓄積する力をもっている為、

魔導具(武器、防具、アクセサリー)等に使用される。

魔晶石の産地であるため、多くの魔導士が住んでおり、

その多くがメルトニアに所属している。

魔導士の多さから小さい国でありながら

最強国家とまで呼ばれている。

メルトニアは元々は王国であったが、魔導士達の増加に伴って

君主制から共和制へと変化して行った。

国家元首は国に貢献した16人の魔導士の中から

国民投票で選ばれる。

現在元首になっているアラインは、

若いながらマスター称号を持つ天才と呼ばれる人物である。


公国へと戻った3人は驚いた。

転受の魔法陣の部屋から続く通路は、

多くの兵士で溢れかえっていた。

ある者は横になり、ある者はしゃがみ込んでいたが、

全ての兵士は傷ついていた。


パイン:「一体何が、奇襲されたのか?」

ゾル:「いや、彼等は公国の兵士ではない。」

パイン:「えっ?」

ゾル:「彼等の装備はメルトニア魔導国のものだ。」

パイン:「メルトニア?」

キーラ:「メルトニアというのは、

    バートランド王国の東にあるゲーノモス山脈の

    反対側にある魔導国家よ。

    山脈があるおかげで船で回り込まないと行けないのよ。

    でも、メルトニアの兵士が何故ここに?」

ゾル:「メルトニア宮殿には、宮殿内の兵士を脱出させるための

   緊急脱出魔法があるんです。

   きっとそれを発動したのだろう。」

パイン:「でも、王国ではなく、何故公国に?」

ゾル:「現メルトニア魔導国元首の奥方様は、

   ドリム大公の妹君(エレナ)なんです。」

キーラ:「なるほど。

    それは知らなかったわ。

    聞きたいことは山ほどあるわ。

    ドリム大公の元へ急ぎましょう。」


パインとキーラは、ゾルの案内でドリム大公の元へと向かった。

部屋に入るとドリム大公は頭を抱え座り込んでいた。

3人が部屋に入るとドリム大公はゆっくりと立ち上がり言った。

ドリム:「やっと戻ったか。

    大変なことになってしまった。」

キーラ:「一体何が起こったのですか?」

ドリム:「バーランド宮殿が占拠された。」

キーラ:「なんですって!!

    まずいわね。

    魔導士達は何をしていたんですか?」

ドリム:「知らないのは無理はない。

    今年から10年に一度の魔導祭*1の日が変わった。

    共通歴から精霊歴*2に戻した為に日程がずれたんだ。

    殆どの魔導士達は、精霊の木の元にいるだろう。」

キーラ:「そんな。

    宮殿を拠点にされたら手の施しようがないわ。」

パイン:「えっ。」

キーラ:「宮殿は魔法に対する絶対防御があるのよ。

    もし、それが発動されていたとしたら、

    宮殿内では魔法を発動することができないの。」

パイン:「それじゃあ。

    魔法は使えないということですか?」

キーラ:「そうね。

    物理攻撃で挑むしかないわね。

    助けに行くとしても、完全に戦力不足だわ。」

ドリム:「どうしたらよいのだ?」

キーラ:「まず、精霊の木にいる魔導士達と連絡をとって、

    公国か王国に集めてください。

    そして、作戦を考えましょう。」

ドリム:「そっ、そうだな。

    ところで、アラインと(エレナ)は何とかならないか?」

キーラ:「宮殿以外が無事なら、居場所さえ分れば

    何とかなるかもしれません。」

ドリム:「そうか、ならば冒険者協会経由で情報を得てみよう。」

キーラ:「そうですね。

    ところで、駐屯軍はメルキスに入れましたか?」

ドリム:「あぁ、無事に到着した。

    しかし今はまだ膠着状態だ。」

キーラ:「私の葬儀は?」

ドリム:「滞っている。

    ゆるしてくれ。

    この状況では如何ともしがたい。」

キーラ:「止むを得ないですね。

    さて、私達は、これから負傷者の治療と

    情報収集に専念します。」

ドリム:「分かった。

    頼んだぞ。」


3人は負傷者の傷を治療して回った。


負傷兵:「司祭様、ありがとうございました。

    痛みが取れました。」

パイン:「いえいえ。

    お大事に。」

傷を癒された者達はパインの事を司祭だと思ったようだ。

パインは司祭と呼ばれるたびに照れた顔をしていた。


パインは少し先で献身的に治療を行う女性の事が気になった。

そしてその女性に近づいた。

パインはその女性がアリスだと分かると驚いた。

パイン:「アリス!」

その声にアリスが振り向く。

アリス:「パイン。」

パイン:「あっ、あの。」

アリス:「話は後。

    まずは、手伝って。」

パイン:「あっ、はい。」

キーラは、ニヤニヤ笑いながら2人を見つめる。

ゾルはキーラを見て、あきれ果てていた。


キーラは兵士達と話す事によって、情報を得る事ができた。

=====

昨日の深夜、ほとんどの者達が深い眠りについている頃。

それは始まった。

警備の為の巡回兵が次々と倒されて行った。

それに最初に気が付いたのは警備隊長だった。

巡回兵の定時連絡がなかったのだ。

警備隊長は異常と判断して招集をかけた。

通常時であれば、魔導士達も参加する。

しかし、その日は精霊祭だった。

この日から10日間、魔導士達は宮殿にいない。

唯一の魔導士は、元首のアラインだけだった。

数百人にもおよぶ兵士達が招集に応じて宮殿へと集まった。

兵士達は賊の探索を始めた。

すぐに賊は発見されたが、兵士達はまるで歯が立たなかった。

元首のアラインがこの事を知った時には、兵士の大半が

戦闘不能状態に陥っていた。

アラインは決断した。

兵士を外に出すと広範囲転移魔法*3を発動した。

=====


一通りの治療が終わった後、4人は部屋でくつろいでいた。

キーラ:「パイン、紹介してもらえるかな。」

パイン:「あっ、そうでした。

    彼女はアリス。

    バジール村出身で神聖魔導士見習いです。」

アリス:「アリスです。

    王国魔導学院の学生です。

    神聖魔導士を目指しています。」

パイン:「彼女がキ、いや、マスターラキ。

    国王直属部隊の魔導士長だ。」

アリス:「えっ、そんなえらい方とは知らずに失礼しました。」

ラキ:「私も気にしないから、気にしなくてもいいわよ。」

パイン:「そして彼がゾル。

    公国の、えっと。」

パインはゾルの役職を知らなかったことに気が付いた。

ゾル:「大公直属の魔導士です。

   以後お見知りおきを。」

そう言って、公国流の礼法に則ったお辞儀をした。

突然の事にアリスは驚いたが、

バジール村の司祭様に教わった礼法で返した。

ゾル:「完璧ですね。

   その礼法を誰から?」

アリス:「ペリエル司祭様からです。」

ゾル:「そうですか、ペリエル司祭様でしたか。

   今は巡礼*4中でしたね。」

アリス:「えっ。

    べリエル司祭様は他の村に移られたのでは?」

ゾル:「君は魔導学院の学生だったね。」

アリス:「はい。」

ゾル:「進路決定の時に知る事になるんだが、

   他の村に移動というのは、巡礼のことなんだ。」

アリス:「そうだったんですか。」

ラキ:「アリス。

   この状況を見て、何か聞きたいことは無いの?」

アリス:「あぁ、その事ですか。

    何があったのかとか、そう言う事ですよね。

    気にはなります。

    でも、傷を癒すのが私の仕事なので、

    それ以外の事は、考えないようにしているんです。

    心が乱れると治療に差し障りますので。」

ラキ:(この子の精神は強いわ。

   立派な司祭になりそうね。)

ラキ:「パイン。

   アリスに全て話してもいいかしら?」

パインは、一瞬ためらいながらも答えた。

パイン:「はい。」

ラキは、アリスに真実を話した。

アリスは話の随所で驚きの表情を示したものの、

最後まで黙って聞いていた。


ラキ:「どう?

   信じられるかしら?」

アリス:「えぇ。

    信じます。」

アリスは、パインの人間離れした回復力、

魔導士でありながらオーガを素手で追い返した事を

思い出していた。


ラキ:「もう一つ話さなければならないことがあるの。」

アリス:「もう、驚きませんよ。」

ラキ:「私はラキではないの。

   魔導士キーラなのよ。」

アリス:「えっ。

    えーーーっ。

    でも、大魔導士キーラ様は亡くなったと。

    いま、葬儀の準備をやってるじゃないですか?

    まっ、まさか、幽霊?」

キーラ:「私は生きているわ。

    葬儀は敵を欺く策略よ。」

アリス:「あっ、そうだったんですか。」

キーラ:「これを知っているのは、国王、大公、

    そしてここにいる者だけなの。

    親族、友人にも、決して漏らさないようにね。」

アリス:「えっ、どうしよう。

    そんな大事なこと。」

キーラ:「アリスなら、大丈夫よ。

    考えないようにすればいいだけよ。」

アリス:「あっ、そうですね。」

キーラは、何回も頷きながら笑顔を見せている。

アリス:「私はどうすればいいですか?」

キーラ:「そうね。

    今は特にないわ。

    とりあえず、ドリム大公を紹介するので、

    連絡係になって頂戴。

    連絡用に指輪を渡しておくわ。」

キーラはローブの中から黄色い宝石のついた指輪を

4つ取り出して3人に渡した。

キーラ:「これは、離れていても会話ができる指輪よ。

    ただし、1日1回だし、長時間話す事はできないわ。

    なので、緊急連絡用ね。」

アリス:「分かりました。

    連絡があったら、大公様に知らせれば良いんですね?」

キーラ:「その通りよ。」


アリスをドリムに引き合わせた後、4人は眠りについた。


次の日の早朝、パインは扉をドンドンと叩く音で目をさました。

窓を見ると、まだ外は暗かった。

眠い目を擦りながら扉を開けると、

そこに立っていたのはゾルだった。


ゾル:「すぐに大公の元に来てくれ。」




*1:魔導祭

 初めて人間が精霊と契約した日であり、

 その日から人間は魔法を使えるようになった。

 それを祝うための日。

 そのため、最終日まで魔法の使用が禁止される。

 つまり、全体の10日の内9日間は魔法が使用できない。


*2:精霊歴

 人間は1年を一つの単位として共通歴を作った。

 精霊は人間とは違った時間を生きている。

 そのため精霊を呼び出して日を合わせる行為が行われている。

 およそ人間の10日が精霊の1日といわれている。

 

*3:広範囲転移魔法

 転移魔法の上位魔法であり、転移の効果範囲を極限まで広げた

 魔法であるり、効果範囲が術者を中心としてドーナツ状に

 展開される。

 つまり術者は転移されない。

 その範囲はメルトニア宮殿を内包するほどである。


*4:巡礼

 神聖魔導士の司祭は60歳を超えると巡礼の旅に

 出なければならなかった。

 それは神聖魔導士の義務でもあり務めでもあった。

 巡礼地は大陸の各所にあり、

 それを徒歩で回らなければならない。

 全て回るには数年の歳月を必要とすると言われている。

 巡礼から戻った司祭は、2つの選択を迫られる。

 軍の医療部隊に所属するか、あるいは予備役となるかである。



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